現代に受け継がれるチャールズ・ステップニーの作法
今年に入ってChatGPTのキャンペーンCM動画で“Les Fleur”がドラマティックに使われていたりもしたが、やはり空気を変えるステップニーの音世界は誰が聴いてもスペシャルな響き方をするのだろうか。かつてはレアグルーヴ〜フリー・ソウル的な空気の中でロータリー・コネクションやミニー・リパートンの初作が再評価されたのを下地に、ニューヨリカン・ソウルや4ヒーローのカヴァーが脚光を浴びた時期もあったが、そうなる以前からヒップホップ方面のサンプリングを通じて彼の仕事は広く親しまれてきた。近年ではオーケストラを従えたバロック・ソウルを追求するエイドリアン・ヤングがいるし、その意味ではヒップホップやジャズに壮大なストリングス・アンサンブルを導入するLAのミゲル・アトウッド・ファーガソンも後継者的な面の持ち主だろう。他にもロータリー・コネクション222を率いるジュニウス・ポールやフローティング・ポインツ、オリンピアンズ、アヴァランチーズまで幅広い方面にその影響は及んでいる。 *出嶌
左から、エイドリアン・ヤングの2011年作『Something About April』(Wax Poetics/Linear Labs)、ミゲル・アトウッド・ファーガソンの2023年作『Les Jardins Mystiques Vol.1』(Brainfeeder)、アヴァランチーズの2016年作『Wildflower』(Modular)
ESSENTIALS
チャールズ・ステップニー、珠玉の名仕事
ステップニー流バロック・ソウルとサイケデリックに傾くカデット・コンセプトの構想を打ち出したユニットの初作。ローリング・ストーンズやボブ・ディランなどのカヴァーも含めて、壮麗なオーケストラや重層的なヴォーカルとともにストレンジな音遊びを聴かせる。シタールを鳴らし、ミニー・リパートンがスキャットする“Memory Band”はATCQネタとしてもお馴染み。 *林
ドゥワップで知られたグループがソウル路線での人気を確立した、ステップニー制作のシカゴ・ソウル名盤。壮麗なオーケストレーションで繊細かつ重厚なコーラスワークを際立たせたアレンジが見事で、時に前衛的な音使いも飛び出す。ヴィー・ジェイ時代に出していた名曲“Stay In My Corner”を6分台の長尺で再録音させたあたりにもステップニーの実験精神が溢れている。 *林
チェスの隆盛に貢献したブルースの巨人が、ロック・リスナーの支持を獲得したいレーベル側の狙いから、ファズやワウの効いたサイケデリック仕様のサウンドに挑んだ問題作。ロータリー・コネクションの演奏は直後のファンカデリックにも通じる骨太な重さがカッコ良い。ブラック・キーズのネタ使いで知られる“She’s Alright”をはじめ、サンプリング人気で再評価された楽曲も多い一枚だ。 *出嶌

フュージョン路線で人気を集めるブルーノート時代の前にカデットで吹き込んでいた2作目。チェスにおけるもうひとりの名匠リチャード・エヴァンスと制作/アレンジを分け合っているが、アシュフォード&シンプソン作のモータウン曲“California Soul”はステップニーの壮麗なオーケストラ・アレンジが光るカヴァーだ。ミニー・リパートンと思われるソプラノ声も登場する。 *林
こちらもチェスで活躍したブルース巨人のひとり、ハウリン・ウルフが『Electric Mud』路線に挑戦させられたアルバムで、これまた本人に嫌われていたのは刺激的なジャケの文言が示す通り。いずれも彼自身が50〜60年代に発表してきた過去曲をステップニーがリアレンジしたもので、冒頭の“Spoonful”や“Down In The Bottom”など、いま聴けば最高にグルーヴィーだが……。 *出嶌

チェスのハウス・ギタリストとしてロータリー・コネクションにも参加したシカゴの名匠。その時期に残したこのリーダー作も全編ステップニーのアレンジ/プロデュースで、ダニー・ハサウェイ(ピアノ)らを従えてS&Gやジミ・ヘンドリックスら同時代のロック曲カヴァーを中心に聴かせる。“I Am The Black Gold Of The Sun”の原型となる“Black Gold”などステップニーのオリジナルも収録。 *出嶌
ロータリー・コネクションではソプラノの美声を楽器として扱われていた彼女がステップニーの全面制作で録音した初ソロ作。グループ時代の曲を本格的な歌唱で再録した“Memory Band”を含め、ステップニーとの関係はバート・バカラックとディオンヌ・ワーウィックを思わせる。ドリーミーかつ壮麗な“Les Fleur”など、この年に結婚したリチャード・ルドルフも作詞で参加。 *林




