時代を越えてニュー・タイトルが続々と登場してくるソウルの世界。どんなに現実が地獄であろうと、音の中は天国!ってことで、今回は2022年の収穫を総決算しておきましょう。さまざまなリイシューや発掘盤など膨大なリリースの宝の山から、いまこそ聴いておきたい珠玉のアルバムとは!?
恒例のソウル復刻&発掘の個人ベスト、2022年版です。ホイットニー・ヒューストンの伝記映画も話題になったこの年は、シル・ジョンソン(とハワード・グライムス)やパトリック・アダムスの追悼ページをやることになってしまいました。また、かつて本連載でも取り上げたジェイムズ・エムトゥーメイやベティ・デイヴィス、ラモント・ドジャー、トム・ベルといった巨星の訃報が届きましたね。他にもスタックス創業者のジム・スチュワート、パーラメントのカルヴィン・サイモン、デルフォニックスのウィリアム・ハート、ティミー・トーマス、ルー・カートン、バーナード・ライト、レジー・アンドリュース、インプレッションズのサム・グッデン、ヴァーノン・バーチ、R・ディーン・テイラーやジョー・メッシーナ、メイブル・ジョン、ロバート・ゴーディ、ジャニス・ハンターらもこの世を去っています……。
そんな思いはさておき、いつ生まれた曲であろうと、その作品に初めて出会うリスナーにとってはそこがリアルタイムなわけで、そう考えればやはり2022年も注目すべき復刻や発掘は多々ありました! *bounce編集部
2022年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/林 剛

難病で歌手活動断念という寂しいニュースも報じられたロバータ・フラックだが、85歳の誕生日を記念してデジタル配信された81年のサントラが日本限定でCD化となったのは吉報だった。当時のNYサウンドを満喫できる快作で、ピーボ・ブライソンが歌うダニー・ハサウェイの追悼歌も素晴らしい。コーラスで参加のルーサー・ヴァンドロスとベースで参加のマーカス・ミラー、それぞれのソロ・デビュー作に自演版が収録される曲のオリジナルも話題。

VARIOUS ARTISTS 『Summer Of Soul (...Or, When The Revolution Could Not Be Televised)』 Legacy/ソニー(2022)
クエストラヴの監督作でグラミー&アカデミーW受賞となったハーレム・カルチュラル・フェス(69年)のドキュメンタリー映画。こちらはその劇中でパフォーマンス映像が流された曲を音盤化したもので、チェンバース・ブラザーズ、フィフス・ディメンション、デヴィッド・ラフィン、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、スライ&ザ・ファミリー・ストーンらの熱演とマウント・モリス公園に集う黒人たちの熱気が真空パックされたまま現在に蘇ったことに感激した。

THE BRIEF ENCOUNTER 『Get Right Down: The Complete 70s Singles And More』 Pヴァイン(2022)
77年と81年のアルバムが激レア盤として伝説化されているノースカロライナのヴォーカル&インスト・グループによる秘宝が一枚のCDに。70年代にセヴンティ・セヴンやキャピトルなどから放ったシングルを中心にした日本企画の編集盤で、サザン・ソウルに甘茶ソウルにブギー・ファンクと、全方位からソウルの魅力を伝えてくれる。サウンド・プラス原盤となるモダン・ソウルの人気曲“Human”、2010年代の新曲の収録もありがたかった。

例年に比べてモータウンの復刻/発掘が少なかった2022年だが、このインスト集は企画と選曲の妙で楽しませてくれた。ファンク・ブラザーズとその一派をはじめ、ストリングス隊、ビッグ・バンド、ジャズやロックのバンド、スティーヴィー・ワンダーの変名プロジェクトまで、デトロイト本社時代に発表された多彩なインスト曲をまとめて聴けるのが嬉しい。サックス奏者のフランク・モレリによるジャジー・チューンなど5曲の初公開音源も良かった。

2003年にスタートした英ケントのモダン・ソウル集も、この最新版で第6弾。収録曲の半数以上が未発表であることにシンプルに驚いた一枚で、ロニー・マクネアが72年に吹き込んだファンキー・チューン、77年に録られたジーン・シャイの軽快なミディアム、マッガブレインが76年に録音したサム・ディーズ作のミディアム・アップなど、なぜお蔵入りしたのか理解に苦しむほどの良曲が揃っている。これだからソウルの宝探しは止められない。

シカゴを代表するアレンジャー/プロデューサーの未発表〈宅録〉音源集が出たのも驚きだった。70年前後から76年の急逝直前までに、エレピやアナログ・シンセ、リズムマシンなどを操って自宅で録音された実験的な楽曲の数々。彼特有の壮大で仰々しいオーケストラは入っていないが、ミニマルなサウンドからグルーヴが感じられ、創作中の脳内を眺めているようで楽しい。EW&Fやロータリー・コネクションで知られる曲のデモ風音源も収録。

WILLIAM BELL 『Never Like This Before (The Complete ‘Blue’ Stax Singles 1961-1968)』 Kent Soul(2022)
アトランティック配給期(61~68年)のスタックスから出したブルー・ラベルのシングル14枚(28曲)を品番順に並べた編集盤。出世曲“You Don’t Miss Your Water”からオーティス・レディング追悼歌まで、ソングライターとしても優れたジェントルでマイルドな歌い口のシンガーによるメンフィス・ソウルは至宝と呼びたくなるものばかりだ。MG’sの面々と書いたファンキー~ブルージーな曲、兵役についた彼ならではの反戦ソングもある。

シルク・ソニックがバレンタインデーにサプライズ発表した曲は、なんとコン・ファンク・シャン“Love’s Train”のカヴァー。そんな好機をとらえて、三角関係をテーマとしたメロウなラヴ・バラードの同曲を含む本作が〈Throwback Soul〉シリーズで日本初CD化となった。82年リリースゆえに“Ms. Got-The-Body”のようなエレクトロニックなダンス・ナンバーも含み、10年来のブギー流行りの中でも改めて輝きを放つ一枚だと感じた次第。

現行ニューオーリンズの音楽が賑わうなか、ドクター・ジョンの舎弟がNOLAと東京を跨いで制作した78年作が新装再CD化されたのも何かの巡り合わせか。NOLAではドクターやミーターズ、東京ではティン・パン・アレーや夕焼け楽団、ナイアガラ一派の名手が録音に参加し、細野晴臣が久保田麻琴を従えてプロデュース。現地の空気と日本勢の憧憬が入り混じった、この〈第2の『Gumbo』〉的なNOLA R&Bの快作はもっと騒がれてもいい。

マイケル・ジャクソン『Thriller』だけでなく、同じクインシー・ジョーンズが手掛けたドナ・サマーのゲフィン原盤作も40周年記念盤がリリースされた。7インチ・ヴァージョンやリミックスが初CD化となる音源も含めて追加され、ブック型で復刻。ロッド・テンパートンやジェイムス・イングラム、TOTO一派などの参加メンツは『Thriller』と被っており、同作と合わせてクインシー軍団のアーバン作法に改めて酔いながら40周年を祝いたい。
2022年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれじゃ! 選・文/出嶌孝次

シュープリームスの看板を守り続けた〈非センターのレジェンド〉の、2021年の逝去を受けて編まれるも延期を経てようやく登場したモータウン時代のアンソロジー。グループ時代の別ミックス曲が聴けるのはもちろん、ハル・デイヴィスが制作した同社で唯一のソロ作『Mary Wilson』(79年)がここで初CD化となったのも単純に嬉しかったです。ヒラリー・クリントンやポール・マッカートニーもコメントを寄せたパッケージの作りも豪華で、こういう丁寧なブツがもっと欲しいところ。

マイケル・ジャクソンとホイットニー・ヒューストンの双方に関わりの深い人物といえば……ということで、この人をリマインドする機会も多かった2022年(?)。モータウン時代のソロ作はサブスク含めて大半が聴けないままでしたが、こちらのソロ2作目がついに初CD化。前後に出たジャクソン5『Skywriter』や『Get It Together』と比べてもジェントル系と野生味の間で焦点が絞れてない印象の一枚、なれど青く乾いた歌声の魅力はスタンダードでもサイケ・ソウルでも素晴らしい。

PJモートンやアイズレー・ブラザーズの新作にも顔を出し、健在ぶりを届けてくれた2022年のエル・デバージ。こちらは初リイシューとなったソロ・デビュー作で、AORテイストの“Someone”も含めて、クロスオーヴァーが求められた時代ならではの、洗練されたソフト&マイルドな名唱が気楽に楽しめる佳作に。主に80年代の作品を山ほどリイシューした〈Throwback Soul〉シリーズでしたが、こういう普通の作品が普通に手に入ることこそが素晴らしいです。

パトリック・アダムスの急逝とは関係なく、彼も運営に携わっていたパーセプション/トゥデイのリイシューがたまたま進行していた2022年。そのなかで初CD化となったこちらは、2家族の兄弟姉妹を軸にしたシカゴの8人組キッズ・グループによる唯一のアルバムで、ブラック・アイヴォリーのカヴァーなどの美味なトラックが並んでいる。パトリックが共同制作を担った爽やかなアップのシングル“Looking For A Brand New Game”(73年)のボーナス収録も嬉しかった。

〈Throwback Soul〉シリーズではティシャーンやチャック・スタンレーといった初期デフ・ジャム作品が聴きどころでしたが、なかでも“The Rain”で知られるスウィートなシンガーのデビュー作は大きな収穫でありました。ストリート感の演出方法もその後のヒップホップ感とは異なるエレクトロ寄りで、それが逆に気分を出しています。ミラクルズのカヴァーも美味。初期のデフ・ジャム産品ではアリソン・ウィリアムスやブルー・マジックの名盤たちも続いてほしかったところですが……。

STEVE ARRINGTON 『Dancin’ In The Key Of Life: Expanded Edition』 Atlantic/Iconoclassic(1985)
近年はデイム・ファンクらとの絡みでも名を馳せるレジェンドが、前線バリバリだったスレイヴ~ホール・オブ・フェイムを経て放った初ソロ名義作の拡張リイシュー。解放感に溢れたアッパーかつパワフルなダンス・トラックが中心で、CCMの範疇にあると言われれば納得の青天井なポジティヴィティに溢れています。なお、本リイシューを出したアイコノクラシックなる復刻レーベルからはスレイヴの『Show Time』(82年)も初CD化されていました。

STARPOINT 『Object Of My Desire: The Elektra Recordings (1983-1990)』 SoulMusic(2022)
この類の手軽な全まとめボックスも増えてきましたが、メリーランドが生んだファンク・バンドによるエレクトラ時代の全アルバムをまとめた本6枚組は未復刻モノも含むナイスなブツでした。ポスト・ディスコ期の電化ヒット作『Restless』(85年)はもちろん、バーナード・エドワーズ制作の『Hot To The Touch』(88年)も好内容。テディ・ライリーを起用した名盤『Have You Got What It Takes』(90年)は、春先に控えるニュー・ジャック系のリイシューと併せてチェックされたし。

これも〈Throwback Soul〉シリーズの世界初CD化で、なぜか過去のリイシューでも虫食い状態だった人気バンドの隠れ名作。小気味良く筋肉質なファンク“Cheek To Cheek”“On The One For Fun”やミラクルズ“Bad Girl”の甘茶カヴァーなど、ヴォーカル隊としても強力なダズならではの粋でソウルフルな一枚です。なお、彼らの作品を数多く手掛けた名裏方のレジー・アンドリュースは6月に逝去。レジーといえばニッキー・ミナージュがネタ使いしたあの曲も……とか思った2022年。

VARIOUS ARTISTS 『Wrap It Up (The Isaac Hayes And David Porter Songbook)』 Ace(2022)
エイスのソングライター・シリーズの一環で、アイザック・ヘイズ&デヴィッド・ポーターのコンビが書いた有名無名の楽曲を(カヴァーも含めて)コンパイルした一枚。サム&デイヴ“Soul Man”やオーティス&カーラ、エモーションズなど雑多です。黄金コンビといい雰囲気でジャケに写るのは、2022年に逝去したメイブル・ジョン。初期モータウンからスタックスに流れてきた彼女の“Your Good Thing (Is About To End)”も収録されています。スタックス創業者ジム・スチュワートにも哀悼を。

『The Gold Experience』が初リイシューされ、モーリス・デイとポール・ピーターソンの新作まで聴くことのできた2022年。そのポールがアンドレ・シモーン、ミック・マーフィ、ガードナー・コールと組んで90年代初頭に録音を進めていたという幻のプロジェクト作品も嬉しい蔵出しサプライズでした。ミネアポリス作法もありつつニュー・ジャック風味も70年代っぽさもあり、もしリアルタイムで出ていてもどう評価されていたかはわからないですが、いま聴くならまったく無問題です。
リイシューが降ってどんな気がする?

時間はなくてもリイシューはあります……ということで、新年一発目のオススメは、ホイットニーの御母堂としてまた注目されているのかもしれないシシー・ヒューストンの70年作『Cissy Houston』(Janus/OCTAVE)。スウィート・インスピレーションズ脱退後のソロ・デビュー作で、バカラック&デヴィッド曲が多いのは姪のディオンヌ・ワーウィックを思わせるものの、ポピュラー寄りのお膳立てにソウルを注入していく様は流石の一言。ヘイズ&ポーター作の“When Something Is Wrong With My Baby”やビートルズ“The Long And Winding Road”のカヴァーもあり、アルバム未収録のシングル作品や未発表音源を満載した山盛りのボートラも嬉しいです。

DON COVAY & THE JEFFERSON LEMON BLUES BAND 『Different Strokes For Different Folks』 Janus/OCTAVE(1972)
続いてもジャヌス産品のリイシューで、ドン・コヴェイ&ザ・ジェファーソン・レモン・ブルース・バンドによる72年作『Different Strokes For Different Folks』(Janus/OCTAVE)が世界初CD化! ドン・コヴェイといえば60年代のアトランティックを代表する大物の一人ですが、ここでは70年代的なアーシー感も増しつつ、エレガントなサザン・ソウルの魅力を変わらず届けてくれます。


で、今月最大の目玉となる好リイシューは、パティ・ハミルトンを中心に結成されたシカゴのティーン・ガールズ・トリオ、ラヴライツの2タイトル。まずは、地元の重鎮クラレンス・ジョンソンのプロデュースで70年に発表された唯一のオリジナル・アルバム『With Love From The Lovelites』(Uni/Pヴァイン)が素晴らしすぎます。いい感じのジャケが物語るように、パティ自作の冒頭曲“Oh My Love”から快活なヴォーカル&ハーモニーと麗しいシカゴ・サウンドが極上のマッチングを聴かせてくれます。もう一枚はクラレンスが彼女たちのために設立したレーベル=ラヴライトでの音源をまとめた編集盤『Love So Strong: The Lovelite Recordings』(Pヴァイン)。70~75年のシングル群を中心に、当時は未発表に終わった楽曲まで収めた16曲入り。“Betcha By Golly, Wow”や“Got To Be There”のカヴァーも聴きモノで、これは2枚まとめて即入手を! *出嶌孝次