演奏から70年、カール・ベームによる録音がいま蘇る意義
晩年、ドイツ最大の音楽家として称賛され(同時に時代遅れの存在として祭り上げられてもいた)シュトラウスの作品群を積極的に指揮して、自他ともにシュトラウス作品を知り尽くした存在として認められたのが、カール・ベーム(1894~1981年)だった。第二次世界大戦の爆撃でウィーン国立歌劇場は破壊されるが、1955年になってようやく再建され、あらたなこけら落としのためにふたたび“影のない女”が選ばれた。本作におけるあらたな初演、といってもよいかもしれない。このウィーンでの上演にも最高の歌手が呼ばれ、評判を呼び、ほぼ同じキャストで後日録音セッションが組まれた。現時点でもなお、この演奏を凌駕するほどの録音を見つけるのは難しいほどのすぐれた記録である。
ベームのこの作品にかける思いを知れば知るほど、今回のリマスタリングには心が躍る。しかもSACD層で聴けるのだから、これほど嬉しいことはない。後年のベームによる本曲の録音を聴くと、さまざまな理由から大幅なカットを余儀なくされていることがわかるので、スコアの音をほぼあまさずに(第3幕の后のモノローグなど、まったくカットがないわけではないのが残念だが)収録した1955年録音がいまこのタイミングで蘇ることは、ベーム自身の意志をも継ぐものだろう。
演奏から70年を経て、いまなおこの音源の価値はいささかも色褪せていない。全体的な完成度においてこの録音と肩を並べうるような演奏が登場するまでには、一世代後、1990年代のゲオルク・ショルティ盤(Decca)かヴォルフガング・サヴァリッシュ盤(旧EMI)を待たねばならない。
RELEASE INFORMATION

リリース日:2026年4月29日
品番:PROC-2486
価格:7,805円(税込)
SACDハイブリッド3枚組
TRACKLIST
DISC 1
第1幕
DISC 2
第2幕
DISC 3
第3幕
■演奏
皇帝:ハンス・ホップ(テノール)、皇后:レオニー・リザネク(ソプラノ)、乳母:エリーザベト・ヘンゲン(メッゾ・ソプラノ)、伝令使:クルト・ベーメ(バリトン)、敷居の護衛者:エミー・ローゼ(ソプラノ)、若い男の幻影(幽霊):カール・テルカル(テノール)、鷹の声:ユーディット・ヘルヴィッヒ(ソプラノ)、天上からの声:ヒルデ・レッセル=マイダン(コントラルト)、バラク(染物師):パウル・シェフラー(バス・バリトン)、染物師の妻:クリステル・ゴルツ(ソプラノ)、バラクの兄弟たち:ハラルド・プレグルヘフ(バス)、オスカー・チェルウェンカ(バス)、マレー・ディッキー(テノール)、夜番たちの声:アルフレート・ペル(バス)、エーベルハルト・ヴェヒター(バス)、リュボミール・パンチェフ(バス)、生まれざる子供たちの声:リーゼロッテ・マイクル(ソプラノ)、ルチルデ・ベッシュ(ソプラノ)、ベルタ・ザイドル(ソプラノ)、エディット・プリースナー(コントラルト)、ゲルトラウト・バステツキー(コントラルト)、三人の従者たち:エミー・ローゼ(ソプラノ)、アニー・フェルバーメイヤー(ソプラノ)、ヒルデ・レッセル=マイダン(コントラルト)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
カール・ベーム(指揮)
■録音
1955年11月&12月 ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール
■Original Recordings
Recording Producer:Victor Olof, Peter Andry
Balance Engineer:James Brown, Cyril Windebank
■原盤
Decca
■Remaster
DSD Remastered by Classic Sound, 2/2026
英Classic Soundにて、本国のオリジナルアナログマスターテープからダイレクトにDSD変換とマスタリングを行い、SA-CD層用のDSDマスターを制作。CD層用にはこのDSDマスターから44.1kHz/16bitにPCM変換を行い、CDマスターを制作。
■First LP Release
LXT5180/84(MONO)
※限定盤。SACDハイブリッド盤。ステレオ録音。世界初SACD化
※2026年最新マスタリング音源使用(英Classic Soundにて、本国のオリジナルアナログマスターテープからダイレクトにDSD変換とマスタリングを行い、SA-CD層用のDSDマスターを制作。CD層用にはこのDSDマスターから44.1kHz/16bitにPCM変換を行い、CDマスターを制作。アナログマスターテープはその経年劣化と保存状態に応じて、可能な範囲で入念な修復作業を行った後に変換作業を実施)
※オリジナルジャケットデザイン(初出時のMONO盤)を使用
※マルチケース仕様
※盤印刷面:緑色仕様
※一部オリジナルアナログマスターテープに起因するノイズ等があります。ご了承ください
※解説:広瀬大介氏(新規序文解説)、長谷川勝英氏(新規作品&演奏家解説)、歌詞対訳付(渡辺護氏訳。国内盤初出時の翻訳をそのまま流用しております。ご了承ください)、解説書合計96ページ