1986年ドイツ生まれのマキシミリアン・ホルヌング。才能豊かな若手が揃う20代チェリストの中で、彼は今や最も将来を嘱望される一人と言ってよいだろう。アウグスブルク・フィルの第2コンサートマスターを父に持つ彼は、8歳でチェロを始めると、若干19歳で難関ドイツ音楽コンクールを制覇。その2年後には名門バイエルン放送交響の首席奏者に就任し、2013年の夏まで4シーズンに渡って重責を務め上げた。現在は多忙なスケジュールのため、楽団を退団してソロ活動に専念中。今年の『東京・春・音楽祭』で友人の河村尚子(p)と披露した美しく白熱したデュオは記憶に新しい。また、来年7月に紀尾井シンフォニエッタ東京の定期演奏会で再来日するのも楽しみだ。
バイエルン放送響での4年間を振り返る中で、「本当は20代前半ではなく、もう少し後、年齢と経験を重ねた30代後半頃から5年間ほど在籍したかった。でも、その幸運は予想外に早く巡ってきたし、近年はこれまた予想外に忙しくなってしまって…」と語る笑顔は、天才ならではの早熟で達観したものだった。
10年にソニークラシカルと専属契約を結んだホルヌングは、レコーディングでも旺盛な活躍を続けている。
「ニルス・メンケマイヤー(va)&ニコラス・リンマー(p)との室内楽も含めると、ソニーでは4枚のアルバムを作らせてもらいました。ドヴォルザーク&サン=サーンスの協奏曲集や、マーラーの《さすらう若人の歌》の自作編曲を含む小品集など、どれも録音したかった作品なので、全身全霊で取り組みました」
その最新盤が、今年生誕150周年のR.シュトラウス作品集。収録曲には、交響詩《ドン・キホーテ》とチェロ・ソナタが並ぶ。
「《ドン・~》は、僕がバイエルン放送響に在籍中だった12年12月にミュンヘンでライヴ収録した演奏。指揮者のベルナルト・ハイティンクと、当時の同僚ヘルマン・メニングハウス(va)という共演者に恵まれたこともあり、見果てぬ夢を追い求める主人公の悲しさと、物語の随所に織り込まれた風刺的な笑いにバランスよく光をあてられたと思います。カップリングのチェロ・ソナタは、今年の5月にミュンヘンでセッション収録したもの。僕が満を持して挑んだ初のソナタ録音です」
「ほんの数秒聴いただけで、ずば抜けた才能を持っているということが即座にわかった」とは、自身の財団を通じて彼を支援するヴァイオリンの女王、アンネ=ゾフィー・ムターによるホルヌング評だ。
まるで泉のように絶え間なく湧出する才能…。その記念すべき出発点のひとつが、今まさに、ここにある!