「話している間、ギターを弾いてもいい?」
インタヴューが始まる際、まず彼はそう聞いてきた。そして、ヤマハの使い込んだシグネチャー・モデルをケースから取り出し、うれしそうに爪弾きはじめる。ああ、永遠のギター小僧!
「ギターで音楽を演奏するのが、本当に好き。とともに、オープンにいろんな人とやろうとしている。それにより、いろんな情報や刺激が得られるし、自分の演奏の幅も広がる」
そんなスターンの新作は、ロック側にいるギター・ヒーローであるエリック・ジョンソンとの双頭アルバムだ。インスト曲主体の内容で、両者はまさに水を得た魚のように悠々と重なりあっている。
「同じギタリストとはいえ、僕とは全然違うタイプ。いろんなスタイルを取り入れているということでは共通点があるけど、僕の見立てでは、彼はジャズも知っているブルース・ロッカーだね。その点、僕はロックもブルースも通ってきているけど、まずジャズが大好きなジャズ・ギター奏者だ。そういう違いを持つからこそ、アルバムは広がりが出たと思う」
この二人は、スターンの2009年『ビッグ・ネイバーフッド』で顔を合わせている。
「いろんな場で会って、お互いの演奏が好きだというのは分っていたので、『ビッグ・ネイバーフッド』で一緒に2曲やり、それが今作に繋がっている。実は、本作を録る前に何度か一緒にライヴをやって、これは一緒にレコーディングするしかないよねとなった」
その昨年夏のブルー・ノートNY等での公演が基になったものかと思えば、新たに曲を出し合い、ジョンソンのオースティンにあるスタジオで和気あいあいとレコーディングしたという。なかには、奥さんのレニ・スターンがアフリカっぽい断片を加える曲もある。
「僕の曲の場合、2曲が新曲で、あとは過去に発表したもの。《ロール・ウィズ・イット》はミルフォード・ミリガン(オースティンのR&B歌手)が歌っているけど、インストだったものに歌詞をつけた。これまで歌詞を書いたことがなく、それは今回初めての経験だった」
いろいろ初めての事が出来たと、彼は嬉しそう。
「僕はいつもキーボード奏者を入れるけど、エリックが少し弾いた曲もあるが、今回は入れていない。それにより、二人の美点が分りやすく出たと思う。それから僕たちはジミ・ヘンドリックスの大ファンで彼の《レッド・ハウス》もやったけど、そこでは二人で歌も歌っている。初めて歌ったんだけど、楽しかったな」
アルバム表題は、『エクレクティック』と付けられた。
「だって、それこそが、今作の主眼だったんだもの!」