写真提供/COTTON CLUB 撮影/米田泰久

古き良きアメリカーナのメロディをテレキャスター1本で

 弱冠15歳でゲイリー・バートンのグループに抜擢され、“神童”として脚光を浴びたジュリアン・ラージ。新作『アークライト』には、前作『World's Fair』に収録されていた《Ryland》の再録が含まれている。曲名からして、ライ・クーダー(本名Ryland Peter Cooder)を想起せざるを得ないインストだ。

JULIAN LAGE Arclight Mack Avenue(2016)

 「そう、曲名はライ・クーダーにちなんでいます。ただし、最初からオマージュとしてこの曲を作ったわけではなく、出来上がってからライ・クーダーぽい雰囲気の曲だなと感じたので、曲名を〈Ryland〉にした。ライ・クーダーは歴史や伝統を大切にしているし、情景を喚起する音楽を作っているので大好きです」

 このようにジュリアンはライ・クーダー同様、“音楽の架け橋”的ギタリスト兼作曲家。ちなみにライの『JAZZ』(78年)は、ビックス・バイダーベックの曲やジョゼフ・スペンスが演奏していたトラディショナルを主体としたカヴァー集だが、テレキャスター一本で貫き通した『アークライト』には、同じようにバップ以前の、1920~30年代の曲が4曲含まれている。これらの曲は、前作を一緒にプロデュースしたマット・ムニスティリに選んでもらった。

 「“ジャズ・スタンダード”ではなく、もっと昔のジャズで、しかもギターとの親和性の高い曲を取り上げたかった。エディ・ラングやチャーリー・クリスチャン、テディ・バン、ジョージ・バーンズが活躍していた時代の曲を。テレキャスター一本で一枚のアルバムを作るという構想はかなり前から抱いていたけど、ジャズでは難しいかなとも感じていた。でも選曲のおかげもあって、やっと実現することができた」

 ジュリアンが名前を挙げた面々は、ジム・ホール~ビル・フリゼールの系譜の源流にあたるジャズ・ギタリストである。また、彼にとっての“ミスター・テレキャスター”は、ジミー・ブライアント。テレキャスターの名手としては、エド・ビッカートやローン・ロフスキー、テッド・グリーン、ロイ・ブキャナンにも影響を受けたという。ところが、こんなジュリアンは5歳の時にまずブルースを通じてギターを学んだ。

 「最初はマディ・ウォーターズやT-ヴォーン・ウォーカーの曲を演奏していたけれど、8歳の頃に“次はジャズをやるといい”と助言された。ただし、今でもブルースから色んなことを学んでいる。当時の僕は、ただ自分のために黙々とギターを練習していた。現在だったら、当時の僕の評判はインターネットを通じてあっという間に広まり、騒がれていただろう。その点、昔は余計なプレッシャーを受けずに練習に没頭できた。だから僕としては、とても良かったと思っているよ」