レコード売り場と同じフロアーにビアバーがあるっていうのは反則でしょう(笑)

 タワーレコード渋谷店の6階はレコード売り場ですが、同じフロアにレアで美味なビールが飲めるスタンディングのビアバー〈TOWER RECORDS BEER〉ができました。そこで「国宝」の映画音楽を手掛け、ピアノ主体のソロアルバムもリリースされているミュージシャンの原 摩利彦さんに、ビアバーに立ち寄っていただき、お気に入りのレコードを選んでもらいました。2026年10月16日(金)から原さんが劇伴音楽を手掛けた西川美和監督の「わたしの知らない子どもたち」も公開されるので、その話も伺いました。 *intoxicate編集部


 

――さて、タワーレコード渋谷のレコード売り場で何枚かアナログを選んで頂きました。かなり熱心にセレクトされてましたが、まず、岡田拓郎さんの『Konoma』。

岡田拓郎 『Konoma』 Temporal Drift(2025)

「これはもう……。僕は岡田さんの才能には惚れていて、2022年の『Betsu No Jikan』ののレコードも欲しいんですけど、どこもソールドアウトで。『Konoma』は既に1枚アナログを持っているんですけど、また買っちゃいました。布教用に配ろうかなと(笑)。それくらい好きですね。岡田さんの作品は音色が綺麗でエレガントなんだけど、そこからダイナミックに変化していくところにワクワクします」

――ベックの『オディレイ』も選ばれましたね。これは名盤というか定番。

BECK 『Odelay』 Geffen(1996)

「中学生の頃“デヴィルズ・ヘアカット”っていう曲を聴いて、ずっとその曲が入っているアルバムを探していたんですけど、なかなか見つからなくて。えい!と買ってみたらお目当ての曲が入っていない。当時CDは3,000円でお小遣いだと一ヶ月に1枚しか買えない。なのでまた来月に挑戦、という感じでした。結局『オディレイ』は買えずじまいで、やっと今日買えました」

――レコードを聴く習慣は以前からありましたか?

「習慣的に聴くようになったのは、この2~3年のことですね。サブスクリプションももちろん好きですけど、流れていってしまうんですよ。結局誰の作品を聴いてるのかわからなくなってしまう。意識的に誰々の音楽を聴く、という時は、やはりレコードがいいですね。やっぱり裏面にひっくり返すって行為が途中に入るし。逆にサブスクリプションは、 60分とか120分の長尺のアンビエントなんかを聴く時にいいですね」

――裏返さないでいいですからね。

「子どもが3歳のときにレコードのかけ方を教えました。やっぱり楽しいみたいです。ふたりで即興した録音を集めて世界に1枚のオリジナルレコードも作りました。レコードは音楽のひとつの〈かたち〉ですね」

――レコードを買う醍醐味ってなんでしょう?

「それは、内容を知らずに、そして調べずに賭けに出てジャケ買いするっていうのがやっぱり面白いですね」

――原さんは「国宝」など、映画の音楽も手掛けられていますよね? 今回、西川美和監督の「わたしの知らない子どもたち」の音楽を担当されました。オーダーは何かあったんですか?

「戦時中から戦後が舞台で、子どもが中心の映画なんですけど、彼らや彼女らに寄り添うだけの音楽じゃなくて、戦後の厳しい状況や子どもに対する大人の冷たさを表現してほしい、と。だから、厳しい音楽をしっかり書いてほしいと言って頂きました。ただ、音はレトロにする必要はなくて、現代的でモダンな音像にしてほしいと。西川監督の映画は深刻ではあるけど、ちょっとクスッと笑えるようなユーモアがある。そこも好きですね」

――ヘヴィな映画ですけど、音楽を演奏するシーンが救いになっていますよね。ちなみに、自分のソロを作る時と、映画音楽を作る時は、もちろんモードが違うと思うんですけど、決定的な違いって何でしょう?

「ソロは責任を全部自分で引き受けるというところがありますね。大変でもあるけど、それは一種の快感でもある。映画音楽の方はスタッフさんとか俳優さんとかも含めて、皆で作り上げたものを最後に台無しにしないように気を付ける。どちらも責任はあるけど、別の責任なんですね。映画は音楽がダメだったらもうそれで終わりになります。あとは監督との共同制作で、自分一人だったら到達できない音楽、これまで書いてこられなかった音楽が書けるところですかね」

――今日はタワーレコードのビアバーに寄って頂きましたが、お酒を飲みながら音楽を聴くことってありますか?

「あります。ウイスキーが好きで、ストレートで飲むことが多いですね。ビールはたまに料理をする時に作りながら飲んだり、食べながら一杯飲むという感じです。今日飲ませて頂いた〈Turntable〉は、夏の香りがして、最高に美味しいです。こういう、フルーティーなのが好きなんですよね。でも、レコード売り場と同じフロアにビアバーがあるっていうのは反則でしょう(笑)。飲みながら選べる。いい気持ちになって今日みたいに既に持ってるものまで買っちゃいますよ」

hair & make-up:冨田愛美

 


原 摩利彦の選んだ4枚

Beck『Odelay』
Alva Noto『Xerrox Vol. 2』
Solaa『Steps In Time』
岡田拓郎『Konoma』

 


原 摩利彦(はら・まりひこ)
京都大学教育学部卒業。静けさの中の強さを軸に、ピアノを中心とした室内楽やフィールドレコーディング、電子音を用いた音響作品を制作する。2020年にBeatink(Beat Records)よりアルバム『PASSION』をリリース。アーティストグループ〈ダムタイプ〉にも参加。野田秀樹、名和晃平、田中泯、森山未來などの舞台音楽を担当。映画「国宝」(李相日監督)、「流浪の月」などの音楽を担当。東京2020オリンピック開会式追悼パート、羽生結弦アイスショー〈Prequel : Before the WHITE〉を担当するなど活動は多岐にわたる。第49回日本アカデミー賞最優秀音楽賞および主題歌賞など受賞多数。

 


MOVIE INFORMATION
映画「わたしの知らない子どもたち」

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

原案・脚本・監督:西川美和
音楽:原 摩利彦
出演:小八重葵美/二階堂ふみ
坂東龍汰/櫻井海音/北村有起哉/吉田 羊/竹野内 豊
岡田准一/田中裕子/役所広司
配給:K2 Pictures
(日本|2026年|150分)
©2026 K2 Pictures・AOI Pro.
◎2026年10月16日(金)より、全国公開
https://k2pic.com/film/wsk/
公式X:@wsk_movie
公式Instagram:@wsk_movie

 

INFORMATION
音楽を〈選ぶ・聴く・味わう〉スタンディングバー
TOWER RECORDS BEER

 タワーレコード渋谷店6階アナログフロアーに誕生! 2026年2月28日より、川崎・横浜・埼玉・神戸の国内4箇所のブルワリーとタッグを組み共同開発した限定コラボレーションビール〈BRIT HOP〉、〈CITY HOP〉、〈KILLER TUNE〉、そして〈Listen to the Music〉からスタート。8月1日から、新たなコラボビール〈TURNTABLE_w/Teenage Brewing〉が、さらには8月15日から、〈URBAN OASIS_w/Cycad Brewing〉と〈DREAM HOP w/Caghiya Brewery〉がラインアップに加わります。

 10万枚を超えるアナログレコードに囲まれた空間で、音楽とともにビールを気軽に楽しめる設計となっています。カウンターでは国内各地から厳選した全12タップのクラフトビールを常時提供します。缶や瓶でのテイクアウト販売も展開していますので、お気軽にお立ち寄りください。オリジナルのグラスも大人気。ご購入いただくこともできます。

休業日:不定休
席数:オールスタンティング最大20名前後
営業時間:12:00~21:30(L.O. 21:15)
公式Instagram:@tower_records_beer
住所:東京都渋谷区神南1-22-14 タワーレコード(タワーレコード渋谷店6階アナログレコードフロア)