3人の実力者による奇跡のコラボレーション

 テリー・ライリーの子息にして、アルージ・アフタブ、ジョン・ゾーン、ポール・サイモンらと活動をともにするギャン・ライリーと、ギャンの地元のツレで、ポーリン・オリヴェロスら西海岸の実験音楽界の重鎮の薫陶を受けたノア・ジョージソン、ノアのもっとも緊密なコラボレーターにして2000年代以降、フォークミュージックをオルタナティヴなフィールドに再定義した立役者のひとりデヴェンドラ・バンハートからなる、1960年代風の言い回しをもちいるならスーパーバンドといっていいすぎではないトリオ。数度の来日公演もこなすほどの活動歴だが、グループ名を冠した本作が初のアルバムである。

HUG 『HUG』 Luaka Bop/BEAT(2026)

 そのサウンドを一言で表すならフォークとなろうが、デヴェンドラの名が想起させるサイケデリックでコミューナルなそれではなく、三者ともギターを抱えるも、スライドやフィンガーピッキングといった奏法に由来する鳴りを前面に押し出すわけでもない。アメリカーナ的なかそけさは随所に漲るが、聴く者の(ときに架空の)ノスタルジーをかきたてる情感をさほど重視しているとも思えない。ハーモニクスのバックにカエルの声が流れる1曲目を前に、フェイヒィ的な展開を予想したものの、ポップなバンドサウンドに落着させたのはむしろレーベルカラーというべきか。クラシック出身のギャンの端正なプレイを要に、デヴェンドラとノアはさまざま縁取りを音につけていく。サンスクリット語で〈みなに幸あれ〉と声を合わせる4曲目のほかはすべてインストだが、やわらかな歌声に耳を傾けつづけた気持ちになるのは、あるときは誰かがメロディを奏で、次の瞬間には別の誰かがそれを担う、関係の妙味であろう。合奏が歌っているのである。響きにはアンビエント的な感触もあるが、音の加工や録音の状態よりも、たっぷりと間合いをとった空間性がそのように感じさせる点に悠揚たるものがある。ギター音楽としても近年にない多様性と、耳を峙たせずにおかない不思議な響きにあふれている。