13年を締め括る曲

――前作から3年5か月ぶりですが、このアルバムに向けて、バンドとしてどんなことを考えていました?

ガラ(ヴォーカル)「結成10周年記念で“群青”(2012年)というシングルを出したときから、アルバムに向けて動き出してはいたんですけど、当時はライヴをメインのテーマにおいて、あとは全然考えずに走りはじめましたね」

ネロ(ドラムス)「俺、いま思ったんですけど……このアルバムには、3枚のシングル曲が入ってるんですよ。そして、今回のリード曲になった“NOnsenSe MARkeT”も最後のシングルと仮定して見ると、僕らの3年5か月の間に何があったのか、ライヴ向けというところを意識してからどう肉付けしていったのかがわかりやすいかもしれないですね。まず大きいのが、ガラのヘルニアによる半年間の活動休止期間と、現在も続いているテツさん(ベース)のケガのリハビリ期間。“群青”はファンと僕たちの曲になりましたけど、その活動休止期間に“梟”が出て、“ZERO -ゼロ-”で復活して。この歌詞の内容の違いがすごくおもしろい。その締め括りとなる“NOnsenSe MARkeT”は、この曲だけでもエラい変化だなと思いますし。たくさんのフェスに出させてもらったり、ジャンルの枠を超えていろんなバンドと共演できたり。そういった経験も楽曲にはすごく反映されていると思うんですよ」

MERRY NOnsenSe MARkeT FIREWALL DIV.(2014)

――今作の実質的なオープニング曲“NOnsenSe MARkeT”は、作曲のクレジットが〈MERRY〉になっていますよね。

ネロ「まず他の曲との大きな違いは、初めて歌詞が先にあったうえで作曲に取り掛かったということですね。これ以外の曲もわりと冒険はしてるんですけど、13年間を締め括る等身大のMERRYの曲が最後に欲しいなと思って、とにかくギリギリまで諦めきれなかったんですね。そんな矢先にガラが詞を書いてきまして。9月27日でしたね。そこでツアー先のホテルの狭い部屋にみんなで集まって」

――ガラくんはそういった楽曲が欲しいという思いのもとにその歌詞を書いていたんですか?

ガラ「何かを世の中に突き刺したい思いもありましたし、このアルバムのいちばん尖った、核になる部分というのを俺もずっと探してて。メンバーにいろいろ曲を作ってもらってたんですけど、どうやったら伝えるのが早いかなと思って、歌詞とまではいかないですけど、言葉を綴ったものをメンバーに見せて、〈これで曲を作ってくれ〉って言ったんですね。そのときにすでに〈ここは極東ナンセンスマーケット〉っていうフレーズはあって」

結生(ギター)「“NOnsenSe MARkeT”は歌詞が先にほぼ完成されていたので、それを見て、みんながどういう曲が作れるかっていうことだったんですけど、この曲はいちばん最後に出来た曲なんですよね。もうアルバムの世界観も見えてきていた状況で、新たな代表曲を作るっていう、何か自分たちで自分たちを実験している感覚があって」


MERRYっていうアルバム

――歌詞を眺めてみたとき、MERRYがいままで扱ってきた題材すべてであり、MERRYの存在そのものを言い表しているものかもしれないなと思いましたね。

ガラ「そう捉えてもらうと、ちゃんと伝わってるんだなぁと思えますね。結局、〈MERRYって何者なんだ〉っていうことを、今回のアルバムで、自分自身も出したかったし、知りたかったんですよ。〈エログロナンセンス〉というのを掲げてやってきましたけど、じゃあ、〈MERRYというデパートがあるとしたら、どんな従業員がいるんだろうな〉とか、〈どんな売り場があって、何が売ってるんだろうなぁ〉とか、想像しながらどんどん書いていったんですね。いま、ホントに何が正解で、何が嘘かなんてわからないじゃないですか。それはバンドをやっていてもそうですし、世の中自体、ナンセンスなことは多い。でも、それと真面目に向き合ってきたのがMERRYであって、人から見たら、笑われることもありましたけど、俺らはそこを信じてやってきたんですよね。今回、自分のなかでのタブーを全部外して、まず自分が〈ねぇな〉と思うことからやってみようと思ってたんですよ。それが逆に、自分のなかの変化として大きかったのかなと思いますね」

――実際、いままでに聴いたことがないMERRYがたくさん詰まってますからね。かといって、MERRYらしさが封印されるはずもない。ネロくんは〈冒険〉という言葉を使っていましたが、〈進化〉がよくわかりますよ。

ガラ「13年目にして、みんなで作った、〈MERRYっていうアルバム〉が出来たなって。以前は自分が歌いたいことをMERRYというバンドを通して歌うみたいなところがあったんですけど、いまは逆で、MERRYが歌いたいことを俺が歌っている、そんな意識の変化もありましたね」

健一(ギター)「個人的には冒険しようというのはなくて、基本的には、ただ好きなものを作っているんですね。それをバンドでやることによって、冒険になることもあると思いますし、結果的にそういうアルバムになったのかなと」

結生「メジャーでは、1年に1枚とかっていう縛りがよくありますけど、その期間で濃縮して作るのも、それはそれですごくいいと思うんですよ。そのときの自分たちがいちばん濃く出ると思うんで。でも、今回のこのゴチャ混ぜ感は、アーティストの出すファースト・アルバムにすごく近いなと思ってるんですよね。MERRYでいうと『現代ストイック』(2003年)ですけど。結果、すごくワクワクする、MERRYらしいものになった。この3年半にいろいろなことが起こりすぎましたけど、この時間があったからこそ出来たものって、いっぱいあるなぁと思いますね」

――それゆえの楽曲のヴァリエーションが新鮮さを生み出していつつも、やはりMERRYの独自の色がありますね。

ガラ「自分らでも納得する、いいアルバムが出来たと思いますね。いままでは〈好き勝手書いたんで、あとは皆さん、ご自由に解釈してください〉みたいな感じでしたけど、とにかくこれは人に届けなきゃいけないなって思うんですよ。来年は羊年ですし、僕らも〈Grateful Year 2015〉と銘打っているんで、このアルバムを一人でも多くいろんな人に聴いてもらえるように、自分たちの足でいろんなところに行きたいなぁと思ってます」