『At. Long. Last. A$AP』と併せて浸りたい深み
エイサップ・ロッキー新作の味わいとはまた異なるが、ここでゲサフェルスタインと組んだ“In Distress”は奇妙にドラッギーな展開を見せる怪曲に。ちなみに、本文に名の出るテイム・インパラもケンドリック・ラマーとの共演曲で参加。
デンジャー・マウスがほぼ全編を手掛けた最近の代表作がこれ。草臥れて乾いた音世界は酩酊したロッキーの見る夢の風景に近いのかもしれない。なお、メンバーのダン・オーバックは“Everyday”でギターを弾いてもいる。
ジェシー・ウェア“Wildest Moments(Remix)”やリッキー・リー“No Rest For The Wicked”といった重厚なトラックで女性と絡む機会の多いロッキー。それらと比べれば清澄感すらあるが、本作収録の“Pretend”も聴きものだろう。
ハスリングを叫ぶ“Wavybone”に参加したメンフィスの怪人はコ・エグゼクティヴ・プロデューサーの一人にも名を連ねている。スリー6マフィアのアレも歌い込んだ昨年の“Multiply”は日本盤にのみ収録。
ラナ・デル・レイからブライアン・ウィルソンまでが一堂に会したこのリーダー作を挿み、引き続きロッキーを援護しているエミール。揃って縁のあるFKAツイッグスとロッキーの未発表コラボにも絡んでいるのかも。
オルガンの快く唸る“Everyday”でネタ使いされているのは、ジェフ・ベック・グループとフェイセズの狭間にロッド・スチュワートが歌った表題曲。昨年のリイシューが功を奏したのか。
そもそもロッキーの作風自体がテキサス流儀のスロウでドープなノリに傾倒したものだけに、“Wavybone”におけるこのレジェンドと疑似共演は念願が叶ったものと言えそう。当然ピンプCの未発表ヴァースに注目だ。