ニューヨーク同時多発テロの映像にハリウッドのパニック映画みたいだと感じた人は多い。テロリスムは実際の行為以上に、スペクタクルとして世界中にその情報が伝播されることを目的としている時点で、スペクタクルとしての映画とは不可分の関係にある。では、当の映画はテロリスムをどう表象してきたか? 更には映画はテロリスムとどう向き合ってきたか? という論考が本書である。テロリスムと真剣に向き合った作家として、ブニュエル、若松孝二、ファスビンダー、ベロッキオといった著者好みの4人の映画作家をそれぞれ章立てて論じるあたりは、テロリスムをタームとした作家論としても大変刺激的。