INTERVIEW

THE OTOGIBANASHI'S、〈機上の人〉という舞台装置を得て独創的なエンターテイメント性やポップネスを創出した新作を語る

THE OTOGIBANASHI'S 『BUSINESS CLASS』 Pt.1

THE OTOGIBANASHI'S、〈機上の人〉という舞台装置を得て独創的なエンターテイメント性やポップネスを創出した新作を語る

秘密のおもちゃ箱で夢の国への扉を開けた次は、ビジネスクラスで非日常へとひとっ飛び! マイペースに我が道を行く3MCが、仲間たちと気ままに書き上げた新しい〈おとぎ話〉

 昨年9月、THE OTOGIBANASHI'Sはクルー一行とNY旅行に出かけた。“Department”のMV撮影というミッションも込みで「基本的には遊びに行っただけ」(bim)のNYと、往路と復路の機上で彼らが体感したことが、ファースト・アルバム『TOY BOX』から約2年ぶりにリリースされた新作『BUSINESS CLASS』のタイトルであり、キーワードを導いたという。

 「一口にNYと言っても、意外とイケてる奴ばっかりじゃないんだなと思って。その反面、ヒップホップ・スターへの憧れはベタに強くなりましたね。ホテルの窓からNYの景色を見て〈ジェイZはハンパないところに住んでるんだろうな〉と思って、“Empire State Of Mind”のリリックを帰国後にじっくり読んでみたりして」(bim)。

 そして、彼らは新作でこう歌っている。

 〈このアルバムを出しても乗るのは多分エコノミー/続けるといつかはファーストクラス(No)/今日もエコノミー先頭リラックス〉(“エコノミークラス”)

 「同じエコノミーでも先頭に座るのが好きなやつもいれば最後方がいいってやつもいるし、さらに窓側がいいとか通路側とか、好みが分かれるじゃないですか。だから、どんな状況に置かれても自分の好みは選べるし、そこで遊べると思ったんですよね。俺らは誰かに〈100億円あげるからまたNYに行っていいよ〉って言われてもエコノミーで行くと思う。ホテルも普通でいいかな。あ、でも、5億円くらいかけてブリンブリン(のアクセサリー)を作りたいですね(笑)」(bim)。

THE OTOGIBANASHI'S BUSINESS CLASS SUMMIT(2015)

 どこまでも弛緩し、揺らめきながら、そこはかとない緊張感を浮遊させるトラック。仲間内で交わされるとりとめのないダベりがひとつの恍惚としたグルーヴとなり、まるで当の本人たちは無自覚にも時代の気分や現行のユース・カルチャーのリアリズムを表出させるようなラップが、聴感を刺激する――2012年、日本語ラップのシーンに突然変異のように現れた、bim、in-dPalBedStockの3人組=OTG'Sは、『BUSINESS CLASS』で、日常に潜んでいる恍惚への扉を開け、リスナーを生々しい非日常へと連れ出すその手つきを磨いている。前作では無軌道にひっくり返ったおもちゃ箱を見せてくれたが、本作では〈機上の人〉という舞台装置を得て、独創的なエンターテイメント性やポップネスを創出。また、ゲストには同じSUMMITに所属するPUNPEEや、K.U.D.OMAJOR FORCE)の実子であるK.A.N.T.Aら多彩なメンツが集った充実作だ。

 「『TOY BOX』はまずトラックがあって、そこにヴァースとフックを付けて〈はい、できました、次の曲〉っていう感じだったんですけど、今作はとりあえずビートを作って、ヴァースが思いつかなかったら次の曲に手をつけたり、同時進行で一曲一曲をじっくり作っていったんです。作業部屋に集まって毎日のようにみんなで一緒にいたからこそ、そういう作り方ができた」(bim)。

 OTG'Sが所属するCreative Drug Storeのメンバーであり、今作で多くのトラックを担当したVaVaは「それぞれがカッコイイと思っている感覚を共有して、それが自然とアウトプットされたという感じです」と語る。その感覚こそが、彼らにとってのヒップホップ像そのものである。

 「ファーストは〈ヒップホップっぽくない音楽〉として聴かれることもあるみたいだけど、あれも俺らは思いっきりヒップホップをやってるつもりなんですよ」(bim)。

 「例えば思ってることをオブラートに包まないで表現するラップの魅力もあると思うんですけど、やっぱりOTG'Sの場合は自分たちが楽しいと思ってる感覚をベースにして、その中にちょっとした毒を埋め込んだりするほうが性に合ってるんですよね。そういう意味でもみんなで一緒にいる時間が増えたのは大きいです。一緒にいればいつの間にかまた新しい曲が生まれると思います」(in-d)。

 そして、OTG'Sクルー一行は次なるフェイズに向けて悠々と離陸する。

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