JB映画の丁寧な演出

――お久しぶりです。こんなに間が空いたのは連載始まって初でした(笑)。

「〈連載終わったんですか?〉〈打ち切りですか?〉とすごい言われましたよ(笑)」

――ウソ!? ハハハ……ですよね。

「これまでわりと短いスパンでやってましたしね」

――ちゃんと月イチでやってましたもんね。ウェブに移るとユルくなる(笑)。気を引き締めていきましょう。そういえば、ハマくんがオススメしていた映画「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」を劇場で観てきましたよ。

「観ましたか、おもしろかったですよね?」

【参考動画】映画「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」トレイラー映像

 

――ですね! 図らずも最後のほう、まるでJBボビー・バードのラヴストーリーみたいな展開にちょっと感動したりして。

「(JBの)似せ方でいうと相当レヴェル高いと思います。ヴィジュアル面では『Ray/レイ』などに比べたらあまり似てないけど、あの訛りというかトーンがそっくり」

※2004年に公開されたレイ・チャールズの伝記映画。レイを演じたジェイミー・フォックスがアカデミー主演男優賞を受賞した

【参考動画】映画「Ray/レイ」トレイラー映像

 

――そうですね。

「後半のおばさんヘアになってから(JB後期)はもうJB本人にしか見えない。若い頃のシーンは、〈あれ? こんな感じで進むの?〉と思いましたが、話が進むにつれてどんどん似てきて。最後のほうなんて何の違和感もなかった」

――若い時代はちょっと実物よりルックスがカッコ良すぎでしたね(笑)。

「警察とカーチェイスして捕まる有名なエピソードが印象的に使われていて、本当によく出来ていました。ブーツィー・コリンズの登場のさせ方も絶妙でしたね。あと、楽器もすごいんです。『ジャージー・ボーイズ』よりこだわっているかもしれない。『ジャージー・ボーイズ』で使われている楽器は、時代考証もきちんとしていて、当時出た楽器の新品を使っているんです。それはそれで説得力があるんですが、JBの映画ではみんなそれなりにきちんとヴィンテージを持ってる。有名なライヴの再現シーンが多くて、アンプも楽器も〈Live In Paris〉(71年)の時のセットじゃん!みたいな」

【参考動画】ジェイムズ・ブラウンの71年のパリ・オリンピアでのライヴ映像

 

――へぇ~。そういう細かいところまで。最近は音楽系の伝記映画やドキュメンタリーがすごく多いですけど、なかでも観る価値のある作品ですね。

「多いですよね。パッケージ化されるのも早いので、セルで観てもいいと思います」

――これはBlu-rayでも持っておきたい作品だなと。

「そういう感じしますね!」

テイト・テイラー,チャドウィック・ボーズマン ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~ NBCユニバーサル(2015)

ジャケはともかく……

「そういえば、デュラン・デュランが新作(『Paper Gods』)をリリースして。ジャケットは最低なんですけど最高なんです(笑)」

DURAN DURAN Paper Gods Warner Bros./ワーナー(2015)

――主張が見えないジャケですが、中身は……。

ナイル・ロジャースマーク・ロンソンなどが参加してるんです。マーク・ロンソンは前作(2010年作『All You Need Is Now』)でもプロデューサーを務めていたということを何かのインタヴューで読んで、それを聴いてみたらすごくカッコ良くて。その後に今回の新作にも参加していることを知りました。ジョン・フルシアンテも数曲ギターを弾いてるんですよね」

【参考音源】デュラン・デュランの2015年作『Paper Gods』収録曲
ジョン・フルシアンテが参加した“What Are The Chances”

 

――今回ジョンは3曲に参加してますね。

「レッチリを抜けてから(個人的には)訳のわからないことをしているので、こういうギターを弾いているのを久しぶりに聴きました」

――レッチリ時代を彷彿とさせる?

「ロック・ギターというか、カッティング・ギター」

――ああ、でもマーク・ロンソンがプロデュースに関わっているのは今回1曲だけなんですね。リード曲の“Pressure Off”。

【参考動画】デュラン・デュランの2015年作『Paper Gods』収録曲“Pressure Off”

 

「ナイル・ロジャースも参加している楽曲ですね」

――ジャネル・モネイも。イイですね。

「マーク・ロンソンはデュラン・デュランを前のアルバムで蘇らせたというのがありますから」

【参考動画】デュラン・デュランの2010年作『All You Need Is Now』収録曲“All You Need Is Now”

 

――ドンピシャですよね。他に誰がいる?という。時流を鑑みると今回も丸ごとマーク・ロンソンのプロデュースで良かったかも……(笑)。それにしてもこのジャケは何なんですかね。

「何とも言いようがないですよね。しかも『Paper Gods』というタイトル、〈紙の神〉……英語的に何か深い意味があるのでしょうか」

――何かあるんですかね。

「ともあれ、いま気になっている一枚です。このところアルバムを作っていたので、あまり音楽を聴けてなかったんです。最近はブレッド&バターを聴いていました、ずっと」

――どうしました? ブレバタさん。

「この間のレコード・ストア・デイで“ピンク・シャドウ”(74年)の7インチが再発されたんですよ。オリジナルはものすごく高くて聴いたことがなかったので、そのリイシューを聴いたらカッコ良かったんで、周辺の年代のアルバムを3枚ぐらい買いまして。演奏陣がいいんですよ。日本の海沿い音楽の発端な気がしました。フォークとポップスとファンク、その中間というか、いいポジションにいる」

【参考音源】ブレッド&バターの74年のシングル“ピンク・シャドウ”

 

――ほうほう。すごくイイですね。

「珍しくそういう作品を聴いたりしていたので、ブラック・ミュージック方面はあまり……」

 

ディスコ/ファンクの盛り上がりを受けて……どうなるレッチリ

「ところでシックのアルバムはどうなったんですかね?」

――そういえば……なかったことになっている気が(笑)。せっかく来る新アルバムからという触れ込みで“I’ll Be There”も出しましたし。さらに12月には来日公演も決まったようですし……。

「そろそろおもしろい作品が出そうだなと思ってますけど。楽しみです」

【参考動画】シックの2014年のシングル“I'll Be There”

 

――去年末から今年にかけて、〈十何年ぶり!〉みたいな作品をリリースする大物が多くいる不思議な年なので、その極め付けとして23年ぶりをかましてもらいたいけども。

「忘れた頃にカーティス・ハーディングあたりがヤバイやつ出さないかなとかね(笑)」

――アハハ。ジャケがカッコ良すぎる男……去年取り上げましたよね。あの時〈ヴィンテージ(・ソウル)〉ってなんだよ、みたいな話をしてた気が(笑)。

カーティス・ハーディングの2014年作『Soul Power』ジャケット画像

 

【参考動画】カーティス・ハーディングの2014年作『Soul Power』収録曲“Keep On Shining”

 

「そうそう。懐かしい(笑)」

――あれからだいぶ話すことが変わりましたね。

「変わりましたね。こうディスコ/ファンクが盛り上がっているなかで、レッチリがどう出るのかも楽しみなんです」

――フリーは養蜂を始めたみたいですけど、アルバムは作ってるんですかね?

「いつものようにチャド(・スミス/ドラムス)が(アルバムを作ってると)言っちゃった、みたいな記事が出てましたけど、そんな遠い話ではない気がします」

――前のアルバム(『I’m With You』)が2011年なので、まあ来年あたりとか、いい感じの時期じゃないですかね。

「でもフリーのInstagramには全然ベースが出てこない。バスケ観に行ってたり、犬に話しかけてる動画など(笑)。まあロックのカテゴリーで、レッチリがどうしてくるのか期待したいです」

――そうですね、この流れに乗っていくのか、まったく意に介さず作ってくるか――なんだか今回は話がとりとめない感じになってきましたね(笑)。

「久々なのでいいんじゃないですか(笑)」

――そうですか……。そういえば全然関係ないですけど、ジャパンを取り上げた連載第1回の記事が週末とかでちょくちょくデイリー・ランキングにランクインして、何だか読まれ続けてるんですよ。ミック・カーンの蟹歩き問題でしょうか。

「それおもしろいですね。もう1回ぐらいやりますか(笑)? きちんとアルバムを語りましょうか。初期の作品がいいんですよ。最近聴いたら」

――ファースト(78年作『Adolescent Sex』)、セカンド(同年作『Obscure Alternatives』)あたりのファンク度高めなアルバムはハマくん好みだなという感じですよね。

「きちんとデヴィッド・シルヴィアンが歌っているし。だんだん〈ウー〉しか言わなくなりますからね。初期は年代的に過渡期(パンク~ポスト・パンク)なので、それまでの流れを踏襲しようとしていたんじゃないですかね」

【参考動画】ジャパンの78年作『Adolescent Sex』収録曲“Don't  Rain On My Parade”

 

――あのままでも良かったのに!くらいに思ってしまうくらい好きです。

「この間イギリスに行ってきて、レコード屋にジャパンの作品がたくさんあったので、持ってないものも買っちゃいました。〈日本から来てジャパン買ってるのヤバイね〉みたいなことを言われたりして。確かにそうだなと(笑)」

――アハハハ(笑)。でもジャパンの本国(UK)での評価というか認知度ってどんな感じなんですかね。

「どうなんでしょうね。僕が滞在したのはたかだか3日ですけど、レジェンドとされている人の評価はそんなに一般的じゃないんだなという印象でした。現地でのライヴでザ・フーのカヴァーを披露したんですけど、客層の影響もあったのかもしれませんが、シーン……みたいな。やはりオアシスじゃないとダメなのかなと」

――へえ~、そんななんですか。

「ザ・フーでそういう印象を受けたので、ジャパンだったらただの古い音楽という感じなのかなと思いましたね」

――日本ではすごく人気があるけど、本国ではさっぱり(いわゆる音楽好きは別として)、みたいなアーティストはこれまでにもいましたしね。

「そういうことはありますよね。(イギリスのレコード屋では)漢字をアートワークに採り入れたジャケットが飾られていて、やはりどこの国でもそういうところは変わんないなと思いました。もはやファッション的な意味合いで。しかもロンドンのレコード屋はみんなすごくオシャレなんですよ。そこには若い人もいればおじさんもいた。何軒か回りましたが、シックな雰囲気のところが多くて」

――へぇ~。

「日本と唯一違うのは中身が全部入ってないんですよ。棚にはジャケットだけしかない。レジの奥に店と同じぐらいの広さの図書館のような倉庫があって、番号で中身を探しに行く感じ。大量に買うとすごく時間がかかるんですよ。たぶん万引き防止の意味もあるんでしょうけど」

――なるほど~……さて、今回はどういう感じで締めましょうか(笑)。

「この連載ではどういう感じを求められてるんでしょう、われわれは(笑)」

――ハマくんが気になっている音楽を紹介するに尽きますよ!

「読者の方に取り上げてほしい作品を募集するのもいいかもしれませんね。そういうの好きですよ」

――お願いしましょうか。今回のようなとりとめのない話になりそうな時に活かさせてもらいたいですよね。では、Twitterで募集します!

 

~Twitterでハマくんに話してもらいたいこと募集!~
ソウル/ファンクにまつわること(じゃなくても音楽のことならOK!)で、ハマ・オカモト先生に訊いてみたいこと、話してもらいたいお題をTwitterで募集します!
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PROFILE:ハマ・オカモト


OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。バンド活動の傍ら、ラジオのパーソナリティーや数多くのアーティストの楽曲に参加するなど、忙しい毎日を送る好青年。9月30日にはOKAMOTO'Sとして待望のニュー・アルバム『OPERA』(ARIOLA JAPAN)をリリース。OKAMOTO'SのYouTubeチャンネルでは同作収録曲のダイジェスト音源が順次公開されているので、アルバム特設サイトと共に要チェック! もちろんMikikiでもメンバーへのインタヴューを敢行予定なので、追って記事を公開します! そして11月1日(日)の東京・新宿LOFT公演を皮切りに、新作を引っ提げての全国ツアー〈LIVE WITH YOU〉をスタート。そのほか最新情報は、OKAMOTO'Sのオフィシャルサイトへ!

OKAMOTO'S OPERA ARIOLA JAPAN(2015)

【参考動画】9月30日にリリースされるOKAMOTO'Sのニュー・アルバム『OPERA』ティーザー映像