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〈男の子と対等に見られたい〉ガールズ・バンド、SaToAの初インタヴューで露呈したピュアなDIY精神

【NEW URBANe POP】Vol.13

〈男の子と対等に見られたい〉ガールズ・バンド、SaToAの初インタヴューで露呈したピュアなDIY精神

群雄割拠の東京インディー・シーンで輝く若いバンドやミュージシャンたちに話を訊いてわかったのは、例外なく彼らは本当に音楽が好きで、音楽への溢れる愛を原動力にその世代ならではの視点と感性で最先端のジャンルから過去の音楽までを貪欲に聴き漁り、自分たちの音楽の創造へと繋げているということだった。そうした面から考えると、昨年末のライヴ・デビューから約半年後にはSecond Royalより7インチ・シングル『Trees/手紙』をリリースし、つい先日行われた〈Shimokitazawa Indie Fanclub 2015〉でのライヴをはじめ現場レベルでもジャンルを超えてじわじわとファンを獲得しつつあるガールズ・バンド、SaToAは特異な存在だと言えるだろう。

その詳しい理由は以下のインタヴューで確認してほしいが、ある種のガールズ・ポップやギター・ポップの魅力のひとつである、まっさらなイノセンスやピュアな初期衝動、バンドで活動することの純粋な喜び、そういった〈ある限られたひととき〉にしか発光しない輝きが、いまのSaToAには眩いくらい詰まっている。けれどそれよりも重要なことは、一見のほほんと見える彼女たちの表情の下に、厳しい自己批評眼や頼もしいDIY精神がメラメラと燃え盛っていたという発見だった。7月の末日、姉妹であるSachiko(姉:ギター/ヴォーカル)とTomoko(妹:ベース/ヴォーカル)、そしてAmi(ドラムス/ヴォーカル)というシャイな3人が、〈初のインタヴュー〉というシチュエーションにナーヴァスになりながらも答えてくれた。

 



バンド結成のいきさつから浮かび上がるSaToAの特異性

――6月に吉田ヨウヘイgroup『paradise lost, it begins』の渋谷WWWでのレコ発で初めてライヴを観て、すごく衝撃を受けました。

Tomoko「あれはほんとダメでしたね」

――個人的には色んな面でショッキングなライヴだったんですが……。

Tomoko「悪い意味でショッキングだったかも(笑)」

――いえいえ(笑)。昨日のライヴ(下北沢THREE)も良かったですよ。

Ami「昨日のほうが楽しくできました」

――WWWってステージから客席が見渡せそうだし、緊張しそうですよね。

Tomoko「ほんと緊張しましたね」

――WWWの日は〈ギターのフレーズ間違ってないかな?〉とか、観る側にも少し緊張が伝わる感じはあったかもしれないです(笑)。話は変わりますが、普段お姉さんのSachikoさんからTomokoさんに〈こういうの聴きなよ〉とかあるんですか?

Sachiko「ないです、ないです」

――全然ないんですか?

Tomoko「影響はありますけど」

――バッグもらうぐらい(笑)?

Tomoko「バッグもらったり服をもらったりはしますね(笑)」

――じゃあ、普段はそんなに音楽の話はしないと。

Tomoko「するときもあるけど……そんなにはしないですね」

――そもそも結成のいきさつは?

Ami「ここ(AmiとTomoko)が大学の友達で」

Tomoko「演劇系の学校で映像演劇を勉強していたので、演劇の曲を作ったりして」

――劇伴を作っていたということ?

Tomoko「そうですね。演劇の曲をふたりで作ったり」

Ami「それでTomokoから〈私のお姉ちゃんもギター弾いてるんだよ〉って聞いて、バンド活動はそこからですね」

――でも演劇の音楽からバンドを結成するって、わりと飛躍を感じますね。

Tomoko「なんでだろう(笑)。わかんないね」

Ami「とりあえずバンドやろっか、みたいなノリで」

――〈憧れのアーティストや好きなバンドを目標にしよう〉みたいなノリとは違うんですね。

Ami「そうですね」

Tomoko「なんとなく始めた」

Sachiko「でも好きなバンドはいたよね?」

Amiceroとか。あとシャムキャッツが好きで、対バンできたらいいなとは思ってました」

――WWWのライヴが終わった後に、シャムキャッツの夏目くん(夏目知幸)に〈SaToAヤバいね〉って話したら〈手紙渡されたんだよ〉って話を聞きましたよ。

Ami「CDを渡したんです」

Tomoko「そこから夏目さんが気にかけてくれて」

――SaToAの最初のライヴが、2014年の年末に南池袋のミュージックオルグの閉店前日に行われたイヴェント〈オルグスター感謝祭〉だったんですよね。シャムキャッツも出演したイヴェントで。

Tomoko「それに誘っていただいたんです。初ライヴだったけどすごいメンツで」
※エンジニアの馬場友美によるブッキングでAlfred Beach SandalHi,how are you?GELLERS柴田聡子三輪二郎Enjoy Music Clubらが出演。

――そういうことだったんですね。じゃあ結成はいつ頃なんですか?

Ami「一昨年の秋頃だったかな。SaToAの前にもバンドはやってたんですが、大学の企画のような感じで本格的には活動してなくて」

――軽音サークル的なものには入ってなかったんですか?

Tomoko「サークル自体がなくて、芸祭に出るバンドという感じ」

Ami「本格的に活動を始めたのは去年からですね」

――でもオルグでの初ライヴの前には曲があったということですよね。

Ami「曲は前からあったけど、ただスタジオに入るだけで人前では演奏してなかった。あの3曲ですね」

――SoundCloudにアップした3曲?

Ami「そうです、あの3曲だけ」

――あれって宅録ですか?

Tomoko「宅録です。ドラムだけスタジオで録って」

――バンドって、だいたい好きなバンドのコピーから始めて、そこからオリジナル曲を作り始めるというセオリーがまずはあるじゃないですか。でもceroやシャムキャッツからSaToAの音に繋がらないというか、そこが謎で。目標にするバンドも特にないままオリジナル曲に着手していったんでしょうか。

Ami「はい。コピーとかしたことない……」

――なるほど。曲は誰が書いてるんですか?

Tomoko「みんなで作ったり、さっちゃんだけのときもあるし」

――作った人がメイン・ヴォーカルで歌うんですか?

Tomoko「曲を合わせてるときに自然とみんなで歌い始めてそういう流れになったり、なんとなく(ほかの人が)歌わなかったらさっちゃんだけとか。適当にコーラス入れたらずっとそのまま入れっぱなしだったり、自由ですね」

――コーラスのアレンジって、どうやって決めるんですか?

Ami「なんとなくやってる」

Tomoko「ノリで」

――でも誰かが率先してというより、みんなで歌おうっていう感じがSaToAに合ってて良いですよね。これも自然とそういう形になったんですか?

Tomoko「ユニゾンを3人で歌う曲をやってみたいと思ってて、それで“Sprout”を作ったんです」

――ほうほう。では楽器のパートの分担はどんな風に決まったんですか。

Tomoko「私はたまたまベースを持っていたので」

――ということはSachikoさんがギターを持っていたから、Amiさんがドラムになったんですね。

Ami「やる人がいなかったので(笑)」

――よくあるパターンです(笑)。Tomokoさんはどうしてベースを持っていたんですか?

Tomoko「中学時代に一度やろうかなと思って」

――それは何かきっかけがあって?

Tomoko「なんで買ったんだろう……」

Sachiko「私がギター持ってたからですかね」

――でもTomokoさん、ベースライン作るの上手いですよね。

Tomoko「ベースラインは、けっこうさっちゃんが〈こうしたら?〉とかアドバイスをくれます」

――SaToAってギターとドラムはわりとシンプルだけど、ベースは比較的動きますよね。そのアドバイスをしてたSachikoさんは音楽的な背景が実は色々ありそう。

Tomoko「あると思います」

Sachiko「ほんと地味だから何もないです」

――(笑)。

Tomoko「でもずっとひとりで昔から曲聴いたり弾いたりしてたから」

Sachiko「ただ全然詳しくなくて……」

――詳しくなくて大丈夫ですよ(笑)。 Sachikoさんはどうしてギターを始めたんですか?

Sachiko「始めたのは中2ぐらいですかね」

――そのときはバンドはやってなかった?

Sachiko「やってないですね。家にアコギがあったのでとりあえず始めたという流れです」

 

楽曲の誕生秘話

――一番最初に出来た曲はどれですか?

一同:“Sprout”。

――あれが一番最初に出来た曲? それはヤバい(笑)。

Ami「私たちもヤバいの出来たと思って(笑)。普通のセッションで出来たよね」

Tomoko「1日目にスタジオに入って出来ました」

――スタジオ初日に出来たってことですか? スゴいな(笑)。

Tomoko「そのときは歌詞はなくて、適当な英語で歌ってました」

Ami「でもすんなり出来たのはあれぐらいだよね」

――“Sprout”がうまく出来たから、もっとやろうって感じで続くんですか?

Tomoko「そうですね。“Sprout”を作ったときは楽しくて、その次にAmiちゃんが歌詞を書いた“いまあさ”を作って。そこで楽しかったから〈もっと頑張ろう〉って気持ちになりましたね」

――歌詞のテーマって曲によってバラバラですか? どういったことをテーマにしてるのか知りたくて。

Tomoko「“Trees”は私が歌詞を書いたんですけど、暑くて夏があまり好きじゃないから〈夏が早く去らないかな〉って気持ちで」

――それでああいうPVだったんですね。なんとなく分かりました。ほかの曲はどうですか?

Tomoko「ノリで書いてるからなぁ……“手紙”は?」

Ami「おばあちゃんの……」

Tomoko「“手紙”っていう7インチの曲があるんですけど、それは地元にいるおばあちゃんに手紙のように〈届けー!〉って気持ちで」

――へぇ~。“手紙”ってちょっとアレンジがパンキッシュだったので少し意外と言えば意外かも。あのサウンドはどこから着想を得たんですか? パンクのアルバムを聴いてたり?

一同「パンクは聴かないですね」

Sachiko「バンドでやるならこうするしかないかな、と」

Tomoko「演奏技術がなさすぎて思い描いてるように出来ないことが多いので、勢いでやることが多くてこういう音になってる面はあると思います」

――例えばフュージョン・バンドみたいなバカテクのミュージシャンがSaToAの曲を演奏しても感情移入できなけど、自分たちのぎごちない部分も含めて結果的にうまく演奏に反映させているからこそ、SaToAならではの魅力を感じるのかな、という気がしました。今後ライヴの本数もこなして進化したSaToAがどうなるのか、それはそれで楽しみですけどね。ちなみに7インチ・シングルの『Trees/手紙』がSecond Royalから出ましたが、リリースに至る経緯はどんな流れだったんですか?

Tomoko「7インチの企画をSecond Royalの小山内(信介)さんとやってる田中(亮太)さんがSoundCloudの音源を聴いてくれたみたいで、〈リリースしませんか?〉ってDMをくれたんです」

――メンバーのみなさんはSecond Royalを知ってましたか?

Ami「知ってました」

Sachiko「私は知らなかった」

――声がかかってどう思いました?

Ami「めっちゃ怖くて、恐怖でした(笑)。どうしようって」

――それは自分たちがSecond Royalから7インチを出してもいいのかっていう恐怖?

Tomoko「展開が早すぎて、そこに対する恐怖だったのかもしれないです」

 

SaToAが好きなアレコレ

――いま東京のインディー・シーンで活躍しているようなSaToAと同世代の若いバンドの方って、けっこうみんな音楽マニアというか、どっぷり音楽に浸かっている人が多いような気がするんですけど、みなさんの話を訊いてるともっと単純に〈バンドを始めてみたら楽しかった、音楽を作ることって楽しい〉みたいな気持ちが強い気がしたのですが。

Tomoko「歌うことは好きだよね、3人とも」

――カラオケとか行くんですか?

Tomoko「カラオケは行かないですけど……」

Sachiko「家で歌うとか(笑)」

――そういえばさっき、お店の入り口でベル・アンド・セバスチャンステュアート・マードックが作った映画「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」の映像を眺めてましたが、ギター・ポップは好きなんですか?

Sachiko「私は好きですね」

――3人とも音楽の趣味はこっけうバラバラ?

一同「違います」

――じゃあ、おひとりずつ好きな音楽を教えてください。

Sachiko「私はそういったギター・ポップとか、90年代の渋谷系だったりが好きですね。大学時代は特に」

Tomoko「私も90年代は好きで、CHARAテイ・トウワ岡村靖幸が好き。PVをよく見てて、ヴィジュアル面もすごく好きです」

Ami「私はゆらゆら帝国が好きですね」

――ドラムスにゆら帝好きな感じが……と言うと違うかもしれないけど、影響はある気がする。

Ami「ありますかね? ドラムはバンド始めてから叩き始めたばっかりなので……みんなにイラつかれてると思います(笑)」

――吉田ヨウヘイgroupのライヴを観たときに思ったのは、確かに演奏は上手いかって訊かれたらまだみんな楽器を始めたばっかりな印象はあるんだけど、フレッシュな感覚だったり、バンドで演奏することの純粋な楽しさみたいなものが露骨に伝わってきて、そこが個人的にはすごく良かったんです。でもそういう意見って、本人たち的にはあまり嬉しくない評価なんでしょうか?

Tomoko「単純に上手くなりたいですね」

――いまのSaToAのリズムがカチッと整ったらどうなるのか?って想像するのは楽しいかもしれないけど、個人的には現段階だとリズムの微妙なズレにも愛着が湧くというか。

Tomoko「いやー、イヤです(笑)」

――やっぱり本人たち的にはそうですか(笑)。ギター・ポップの出始めの時代のバンドのシングルなんか、初々しい作品が多いじゃないですか。そういう音楽を聴きたいモードのときに、たまたまSaToAを知って〈これはヤバい〉と思ったんです。

Tomoko「そうなんですね」

――音楽以外に好きなことはありますか?

Tomoko「服は好き」

――そういえばTomokoさんは見るたびに裾が短い服を着ているような気が……。

Tomoko「これは切り間違えただけです(笑)」

――自分で切ってるんですか?

Tomoko「はい、そうです」

――へぇ~。クリエイトすること自体が好きなんですかね?

Tomoko「作るのは好きですね。“Trees”と“手紙”のPVも自分たちで作りました」

Sachikoshe saidHomecomingsとの〈ROLLER GIRLS〉ツアーのフライヤーも」

 

――あのフライヤーには衝撃受けました(笑)。いまSaToAがいい感じで活動してますけど、表現や創作という面ではバンドという形にはこだわらないんですか?

Tomoko「なんだろう……自分たちが楽しいことをしたい」

Ami「でもバンドはやりたいですね」

――なるほど。ちなみにいま話に出た〈ROLLER GIRLS〉ツアーですが、Second Royalから7インチを同時リリースするshe saidとは接点があったんですか?

【参考音源】she saidがSecond Royalからリリースした7インチ・シングル『dim shape / hatred feel』
収録曲“dim shape”

 

Sachiko「まったくないですね」

Tomoko「でも曲は知ってました」

Ami「曲は好きです」

――ツアーは楽しみ?

一同「緊張です」

Tomoko「ライヴの打ち上げがちょっと……」

Sachiko「憂鬱ですね……」

――打ち上げが憂鬱って(笑)。

Ami「早くホテルに帰って3人でゆっくりしたい(笑)」

――(笑)。バンドの人以外に友達はいますか?

Ami「います、います」

Tomoko「いるよね」

Sachiko「います」

Ami「2人ぐらい(笑)」

――親友は2人もいれば十分です(笑)。

 

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