童謡~歌い継がれる歌に宿る永遠の記憶たち
声によるうたには、大抵、ことばがついている。詩ではなく詞と表記される。耳で聴きとられるうたが前提のことばは、文字を眼でたどって読む詩とはすこし違った位相にあるとおもわれている。
『KOHAKU 歌われる詩たち』では詩だ。詩がうたわれる。敢えて歌曲なんて呼ばずに「童謡ユニット」として提示する。詩人がいて、歌い手がいて、ピアニストがいる。曲をつくるところは空白で、そこに、作曲家は招かれる。
童謡って何? 子どもって何? 子どもが好み、親が好めるものは? そもそも、うた、って?
子どもっぽいことばが、ただわかりやすいことばがあればいいんじゃない。余白と奥ゆきのあることばが、ヘンに饒舌にはならずに、あって、そのことばを損なわずに、いまわたしたちのまわりにふつうにある長調・短調の、21世紀のひびきで、うたにする。それは作曲家への問い掛けを含み、また共感を必要とする。
ギターの佐藤紀雄と武満徹ソングブックをリリースしているうたの吉川真澄。ヴァイオリンの甲斐史子とROSCOを組むピアノの大須賀かおり。そして詩人の柏木麻里。ともすれば意外におもわれる3人が組んだのが童謡ユニット「KOHAKU(コハク)」だ。
11曲のうち9曲は柏木麻里の詩。作曲は、鶴見幸代、大場陽子、Momo、伊左治直、川上統、日野原秀彦、藤井喬梓。プロジェクトは現在進行形で、いわゆる往年の「童謡」とともにコンサートでうたわれてきたものがCDとして集められている。およそ34分と短いが、聴き終わった充実度はひじょうに高い。ふつうのジャケットではなく、紙をつかって、本のようになっている。ひらくと詩はたてに記されていて、開きやすく、読みやすい。CD=詩集としてのアルバムとして、どうぞ。