THE PIANO ERA 2015
ピアノの祭典、再び! 注目の個性派ピアニスト達が集結!

阿部海太郎

 

 思えば2013年に行われた「THE PIANO ERA 2013」は、画期的なコンサートだった。ジャズやクラシック、ポップスといったジャンルでは括り切れない国内外の個性派ピアニストばかりを取り揃え、新鮮味が薄いと思われがちなこの楽器が、まだまだ発展の余地があることを立証する好企画であったからだ。

 そんなピアノの祭典が、2年ぶりに開催される。2日間のうち初日が国内から、2日目が海外からの招聘と両日を区分けされており、いずれも前回に負けず劣らず、個性的なメンバーが集まっているのだ。

 国内勢のなかでも、阿部海太郎はこのラインナップでは最もユニークな存在かもしれない。名門大学で学んだ頭脳派であると同時に、映像や演劇を中心に様々なクリエイターとのコラボレーションを得意としている。自身の作品も、フィールド・レコーディングや独特の楽器の組み合わせなどによって、非常に映像的なピアノ・ミュージックを聴かせてくれる。唯一前回にも出演している高木正勝に関しても同様。エレクトロニカや里山での自然音をピアノと交わらせるだけでなく、映像作品や絵本との組み合わせによって、新しい音楽の聴き方を提唱する画期的なアーティストだ。haruka nakamura率いるグループは、そういった意味では正当派といってもいいのかもしれない。ストリングスを加えた室内楽風のアンサンブルはクラシカルな印象だが、その裏に秘められた現代的な感覚は、ポスト・ロック以降のピアノという印象が強い。

 

 

アンドレス・ベエウサエルト

 

 一方の海外勢にも注目したい。なかでもお薦めしたいのは、アルゼンチンのアンドレス・ベエウサエルトだ。現代フォルクローレの代表選手であるアカ・セカ・トリオのメンバーであり、ロックやジャズまでサポートする実力派は、プレイそのものだけでなくアンビエントな空間作りも得意とする。今回はフルート奏者のフアン・パブロ・ディ・レオーネを迎え、ホールをどのような美学で埋め尽くすのかが楽しみである。そのアンドレスとデュオ作品も発表したことのあるブラジルの歌手タチアナ・パーハは、アルメニアの気鋭ヴァルダン・オヴセピアンと登場。歌とピアノというシンプルなスタイルで、どこまで切り込めるかが見ものだ。そして、ドイツのヘニング・シュミートの再来日も嬉しい。ワルツをテーマにした新作『ワルツァー』を引っさげたソロ演奏のステージは、とにかく理屈抜きにピアノの音色の美しさに酔えるはずだ。

 ピアノ好きはもちろんだが、本来であればそうでない方にこそ観ていただきたい2日間。きっとこの6組によって、ピアノという楽器に対する固定観念を、がらりと覆されることだろう。

 

LIVE INFORMATION
ザ・ピアノエラ 2015
会場:東京・めぐろパーシモンホール 大ホール
○11/28(土)17:15 開場/18:00 開演
阿部海太郎 高木正勝 haruka nakamura PIANO ENSEMBLE
○11/29(日)15:45 開場/16:30 開演
アンドレス・ベエウサエルト Andres Beeuwsaert (from Argentina)
ヘニング・シュミート Henning Schmiedt (from Germany)
タチアナ・パーハ / ヴァルダン・オヴセピアン
Tatiana Parra / Vardan Ovsepian (from Brazil / Armenia)
www.thepianoera.com