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I Believe In You
期待したい未来は暗くない! ビッグなコラボや冒険を満載し、いろんな意味でスケールアップして届けられたニュー・アルバムは……その名も『POSITIVE』! 君と僕はいま、この世界をどうやって踊り明かす!?
目覚ましい活躍を繰り広げてグングンその名を広い層へ届けているtofubeatsだからして、ことあるごとに〈10年代を代表する次世代アーティスト〉や〈インターネット時代のインディペンデント・ヒーロー〉的な文言ばかりがいまだに言い交わされ、いつまでもオッサンが〈すごい若者〉を眺めるような目線で彼を評価しようとする向きには流石にちょっと違和感がある。プラットフォームが衆知されていない時代にやることをやってきた彼や彼らの凄さは当然として、そろそろ〈ニュー・キッド・イン・ザ・ニュータウン〉的な背景を切り離してみて、もう少し真っ当に作品そのものが評価されるようになってもいいんじゃないでしょうか……っていうのは本人の問題じゃなく、もちろん受け手側というか語る側の問題なんだけど。
そうでなくても、思えば長い前フリの末に初のアルバム『lost decade』がリリースされたのは2013年。メジャー・フィールドでひと暴れしてみせた『First Album』はその翌年のことであって、それから現在に至るまでの間に彼が手掛けてきた仕事の多様さはもはやアーティスト名を列挙する必要もないほどでしょう。今年に入ってからは自身の歌唱を音として前面に掲げたEPサイズの佳曲集『STAKEHOLDER』を発表。そこでのサウンド・アプローチから考えると、このたび登場したメジャー・セカンド・アルバム『POSITIVE』における全体のバランスは、『First Album』の延長線上というよりは、『lost decade』に通じる雰囲気を漂わせているようにも思えます。どことなく開放感が感じられ、Dream Amiをフィーチャーして先行配信された“POSITIVE”が象徴するように、文字通りのポジティヴさ、もしくはポジティヴであろうとする活力によって作品全体が満たされているのです。
そのAmiを含めて、ゲストの布陣やバランスは今回もユニーク。太いベースの唸るディスコ“T.D.M.”などでダンシンスルーザナイトするokadadaは今回もイイ味を効かせてくれていますが、その他は初顔合わせとなる面々ばかりです。予想以上に手の合うKREVAとマイクをパスする“Too Many Girls”、小室哲哉のレイヴ・モードを未来世界から刻みまくったようなエグい展開が最高すぎる“Throw your laptop on the fire”、世に出る経緯が似ていなくもないスカイラー・スペンスとツボを突き合う晴れやかなダンス・チューン“Without U”、モデルとして活躍する玉城ティナのアットホームな歌声にパレード感が活きる“すてきなメゾン”……と、FM気分のクロスオーヴァーする(ほぼ)インスト“I know you”などを挿んでスルスル聴かせる流れの良さは前作以上でしょう。
で、リミックスで縁のあった岸田繁(くるり)とのエレポップ“くりかえしのMUSIC”、ピアノ伴奏を従えて中納良恵(EGO-WRAPPIN')の熱唱する“別の人間”という歌のキャラの濃厚な強さを受けて、ラストはオールド・スクール・テクノっぽさが快いインスト“I Believe In You”(Maltineの10周年記念本が初出)。総じて楽しさの広がる作品ですが、それは表題を斜に構えることなく〈POSITIVE〉に向き合ってこそ手に入れられる気持ち良さではないでしょうか。親しみやすさと共に迫る『POSITIVE』、これはぜひ無条件で酔いしれてほしいです。