コラム

G.RINA、時代映したサウンドの刺激を求める向きに応えつつ心地良い美しさと示唆に溢れた傑作『Lotta Love』

G.RINA、時代映したサウンドの刺激を求める向きに応えつつ心地良い美しさと示唆に溢れた傑作『Lotta Love』

艶やかな品格を備えた、エッジーな音の万華鏡……彼女が帰ってきた!!

 ここまでサイクルの循環が早くなってくると、もはや逆に早くても遅くても関係なくなってきて、結果的にトレンドって何なん?という気分が強まってきている昨今。そうは思う反面で、あちこちで流行とされる有象無象を耳にするたびに、すでに彼女がそれを提示していたことを知る者なら複雑な気持ちにさせられることも少なくはないだろう。いろいろ聴いてきた人には野暮な説明だろうが……ポスト・ダブステップの流れに先駆けてベース・ミュージックの尖鋭を追求し、ブギーという言葉が濫用される前からディスコやブラコンのグルーヴをナチュラルに咀嚼し、AORシティー・ポップへのオマージュをリリカルに謳歌し、もちろんルーツにあるUKのサウンドシステムとUSのアーバン・ミュージックから得た滋養、マージナルな民族音楽……そうした多様性を己の個性とし、DJやビートメイカー、ソングライター、シンガーなどの姿で漂流し続けているのが、このG.RINAである。

G.RINA Lotta Love TOWER RECORDS(2015)

 2003年に処女作『サーカスの娘 -A Girl From A Circus-』を出した時点から際立っていた個性は、途中にグディングス・リナ(本名)としての活動も挿みつつ早耳なリスナーたちの支持を獲得。特に2010年に自身のレーベル・Melody & Riddimからリリースした『MASHED PIECES #2』はLUVRAW & BTBtofubeatsEccyTNDSKYFISHらを招いて、その後数年の〈トレンド〉を先取りするような内容になっていたものだ。ただ、同作以降はDJ活動やミックスCDの制作に比重を傾けることに。2013年、tofubeatsの“No.1”やDJマッド“Never 2 Late”に客演して注目されたあたりからその持ち味が新しいリスナー層にも知られるようになり、昨年の夏には久々のオリジナル音源としてEP『空蝉 Utsusemi』を配信。その後もOMSBZEN-LA-ROCKとのコラボを経て、このたび届いたのが5年ぶりのアルバム『Lotta Love』というわけである。

 幕開けの“ミッドナイトサン”から、G.RINA自身のラップが導くシャープでスタイリッシュな都会のムードは最高潮。そこから流れ込む“音に抱かれて”など数曲では、KASHIFGolby SoundIg-arashiを擁する〈Midnight Sun Players〉の面々が演奏に加わり、やけのはらのメランコリックなラップもいい塩梅な“黄昏のメモリーレーン”では思い出野郎Aチームからホーンズも馳せ参じている。そんな瀟洒でアーバンな音像も従えたG.RINAの歌は、過去作と比べても柔らかな繊細さを増し、官能や情緒を表情豊かに届けてくれていて素晴らしい。語彙のひとつひとつが風光明媚な“Kamakura”、現代人の孤独をリリカルに包容する“Virtual Intimacy”など彩り豊かな詞の主題も重要性を増し、シンプルに歌としても過去最高に心地良く練り込まれていると思う。

 それとは別の目玉となるのは、先述のやけのはらも含むコラボ曲だろう。RHYMESTERからtha BOSS加山雄三まで話題作を連発するPUNPEEがラップ参加/共同プロデュースも手掛けた“Back In Love(Music)”、再会したLUVRAWトークボックスと絡んでセンシュアルな行間を読ませる“Sweet Juicy Luv”、とその成果はいずれも絶品。そして、“No.1”のアンサーソングという触れ込みのリード曲“愛のまぼろし”にはもちろんtofubeatsを迎え、ドラマティックな絡みを聴かせてくれる。

 時代を反映したサウンドの刺激を求める向きにも十分に応える内容でありながら、それ以上の心地良い美しさと示唆に溢れた傑作『Lotta Love』――優しい目線に溢れた終曲“Life”に仄温かい気持ちになったら、これが時の波に洗われる作品ではないと気付くだろう。