コラム

ビーチ・ボーイズ・マニアも呻らせる、ブライアン・ウィルソン伝記的映画「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」がソフト化

ビーチ・ボーイズ・マニアも呻らせる、ブライアン・ウィルソン伝記的映画「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」がソフト化

BB5(ビーチ・ボーイズ)マニアも呻らせる二人一役の伝記映画!

 「大衆はぼくたちを、サーフィンをするドリス・デイだと思っている」。これは1988年刊の翻訳版『ビーチ・ボーイズ~リアル・ストーリー~』下巻の帯に刷られたBB5の後発加入者、ブルース・ジョンストンの言葉。今回紹介のDVD『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(原題:Love & Mercy - The Life, Love And Genius Of Brian Willson)の宣伝句にも再利用できそうな至言である。このブライアン・ウィルソン公認の伝記的映画作品で中心的に描かれるのも成功裡の座礁部分(光と影)の、後者の季節だ。エリザベス・バンクス(素晴らしい!)が扮する劇中の女神が初めてブライアンの素性を明かされる場面で「…あなたの曲を聴いて育ったの!!」と驚きながら呟くが、凡そ一回り年下の世代であるじぶん(ら)も同じ言葉を唇にのせて思わず涙腺を弛ませる。じぶんも多くの同世代のBB5好きと同様、この天才が引き籠った歳月の裏事情を知ったのは前掲書がほぼ最初であり、そこから折々で公表されてきた数多の実録映像集をβ/VHS/LD/DVD/BD…とメディアが変わる度に購入しては“AN AMERICAN BAND”の絆と、その頭脳的存在である彼の物語を胸に滲ませてきたのだ。 

ビル・ポーラッド,ジョン・キューザック,ポール・ダノ ラブ&マーシー 終わらないメロディー KADOKAWA(2015)

 本作は二人一役の構成で、60年代当時のブライアン(=ポール・ダノ)が「(頭の中に)別の誰かが住んでいる」と創作の恍惚と不安を語れば、のちの現夫人と運命的出逢いをする80年代の彼(=ジョン・キューザック)は「寂しい、恐い、怯えてる…」と心を開く。どの台詞も歴代の映像群を舐めつくし、関連書を読み倒してきた通の鑑賞者には行間まで想いが染みてくるのではないか。が、既発のDVD『ブライアン・ウィルソン ソングライター』、あるいは村上春樹の翻訳本『ペット・サウンズ』にしても従来の関連作品はどれも実録系。そこで得てきたBB5神話やブライアンの繊細な印象などが、今回の映画(フィクション)化で壊される事はないのか…そんな杞憂から今夏の劇場公開時は好評を聞きつつも遂に見逃したという旧世代も少なからずいるだろう。正直、その典型的な狭量者の一人がじぶんであり、天才の実像を畏怖して2005年のソロ公演時も断念して…的な“駄目な僕”系の評者が本稿執筆が縁で鑑賞した顛末が、来春の『ペット・サウンズ』祝50周年公演のチケットを購入という英断だ。脚本はディランの人生を六人一役で描いた映画『アイム・ノット・ゼア』と同人物ゆえ二人一役も慣れれば違和感はない。俳優陣が好演するスタジオ録音場面でいちいち頬を湿らすなんて初めての経験だ。脇役の一人として無駄のない完璧なキャスティングに呻り、Don't Worry Babyな大推薦作!

 


LIVE INFORMATION
『ペット・サウンズ』50周年アニバーサリー・ジャパン・ツアー
BRIAN WILSON 50th Anniversary of “PET SOUNDS” JAPAN TOUR

○2016年4月12日(火)13日(水)19:00開演 
会場:東京国際フォーラム ホールA(東京)
○2016年4月15日(金)19:00開演 
会場:オリックス劇場(大阪)
http://kyodotokyo.com/bw16

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