タワーレコードCLASSICでは、これまで数多くのオリジナル企画盤を発売してきました。その数は1000点を超えます。発売に込めた制作者の想いや商品の意義など、このブログでは普段の店頭販売時には出ていない情報も交えて、わかりやすく魅力を紹介して行きたいと思います。基本的に新譜が中心ですが、これまで制作してきた多くの盤のなかから、再度ご紹介したいものや思い入れの強いアイテムも紹介していきたいと考えています。
まず最初は最新の新譜から。
1月20日発売のSACDハイブリッド盤〈Definition Series〉最新作の第3弾です。
――ちなみに〈Definition(ディフィニション)〉とは、解像度や鮮明さを表す単語。一般的には〈ハイディフィニション〉の略称で、主にテレビ画面などにおける表示が、高精細・高解像度であることにも用いられますが、音源におきましても、ハイレゾ化が進んだ現代の音楽環境から求められる要望に応えるべく、タワーレコードがこれまで発売してまいりましたオリジナル企画盤の延長として、新たに定義した新シリーズです。
昨今〈ハイレゾ〉という語句が一般的になってきました。ハイレゾとはそもそも何なのか? 日本オーディオ協会のページには、わかりやすい解説が掲載されています。
従来までのCDを超える、より容量が大きいデータ(定義あり)のソフト、もしくはそれらを再生できる機器のことを指しますが、もちろんSACDフォーマットも〈ハイレゾ〉と規定されています。タワーレコードCLASSICではこれまで多くのCDを発売しており、高音質に対する需要の高まりがあることも踏まえ、比較的ハード所有率が高いSACD路線も積極的に発売することにしました。その第1弾が、2015年5月に発売した〈Definition Series〉第1弾のクリュイタンス&ベルリン・フィルの3作です。
最新作は、第1弾で好評をいただいた同じくクリュイタンスの、主にフィルハーモニア管弦楽団との名盤2作を取り上げました。これまで発売してきた旧EMI原盤のアイテムと同様に、今回の2作も演奏が素晴らしいにもかかわらず、名盤としての知名度が現在では低い状況です。復刻状態がこれまであまり良くなかったこともあってか、CD時代では再発売の頻度も低く、ここ最近では埋もれてしまっている音源でした。今回はクリュイタンスの多くの音源の中でも、特別なアルバムと言えるこの2点を、SACDハイブリッド盤で復刻することにいたしました。これまでSACD化されていない重要な音源です。ようやく名盤に相応しい音で蘇りました。
ところで指揮のクリュイタンスことをもう少し。
1905年にベルギーで生まれ、幼少時にはベルギーで音楽教育を受けるものの、多言語国家ということもありドイツ語も身につけたクリュイタンスは、フランス文化とドイツ文化両方をルーツに持つ指揮者として活躍することになります。フランス系の指揮者として初めて、1955年にはバイロイト音楽祭に登場、翌年にはウィーン・フィルのアメリカ公演にも同行しました。クリュイタンスはベートーヴェンを含むドイツ系の音楽を得意としており、客演で訪れたドイツ語圏のオーケストラやパリでも、さかんにドイツ音楽を演奏しています。フランスでは1947年にパリ音楽院管弦楽団の首席指揮者に就任、その後黄金時代を築くことになります。日本には1964年に同管弦楽団と来日し、当時の日本聴衆に多大な影響を与えました。今回発売する『幻想交響曲』での圧倒的な名演は、今でも語り草となっています(ライヴ音源発売済)。
クリュイタンスはなぜか日本で人気が高い指揮者で、海外だと最近は忘れられた感が強いと思われます。それはCLASSIC市場において顕著で、CD時代においては再発が海外盤では少なく、日本でのみ流通している音源も多くあるほどでした。特に、天下のベルリン・フィルとの『ベートーヴェン:交響曲全集』は、名高い名盤でありながらこれまで再発機会の少ない音源として、残念な状況であったことは確かです。
クリュイタンスは1967年に亡くなっているので、それはある意味、致し方ないのかも知れません。ステレオ音源が限られていることもあり、残された音源を再発するかライヴ音源を発掘するしかない状況です。そんななかで映像がいつくか残されています。これはラヴェルの映像ですが、動いているクリュイタンスの姿は貴重です。
最後にこのシリーズの技術面での制作コンセプトをお伝えします。
音源に関しましては、レーベル本国より取り寄せた96kHz/24bitのWAVデータを基本にSACD層用としてDSDに変換した後、マスタリングを行い、それとは別にCD層用としてもPCMでマスタリングがされており、SACD層、CD層、それぞれ独立したマスタリングです。PCMで編集した後にDSDにも変換を行う、もしくはDSDで編集した後にPCMにも変換を行うといった1回のマスタリング作業で兼ねるのではなく、SACD、CD、それぞれの特徴や音質を重視した上で、個別にマスタリングがされています。また、過去に発売されたCDを極力比較するという検証も行なった上で、音楽を最大限に生かすべく、最小限のマスタリングを心がけました。そのためSACD層ではその豊かな情報量と音場を、CD層では力強くかっちりとした音で、それぞれ楽しむことができると思います。マスタリング・エンジニアは、様々な優秀録音を手掛けてきた杉本一家氏です。
正規音源でも埋もれたままの音源はまだまだ多いです。高音質を求める需要にも応えるべく、今後も最新の技術を使って、過去の名盤を蘇らせたいと思います!
これからも、リリース情報を不定期でお届けいたします!