54年続いた故朝比奈隆大阪フィルの演奏活動の最高の記念碑的名演となったのが1975年10月12日、ザンクト・フローリアン修道院で行われたこの演奏会である。同修道院はブルックナーが12歳から寄宿生活し、オルガニストを務め、その棺が安置されている「聖地」。残響時間7秒のホールの中で、朝比奈の巨大な構築物を想わせる雄大なブルックナー演奏がいっそう伸びやかに鳴り響く。美しく内省的な音楽はゆったりと息づき心に沁み込んで来るようだ。第1楽章の終わりでは早くも慣例を破った拍手が沸き起こっている。今回のCD化で音質が一層向上し、今までカットされていたこの拍手も収められたのは嬉しい。

朝比奈隆、大阪フィルによるベートーヴェン〈交響曲第9番〉