BBCの〈Sound Of~〉とブリット・アワードの批評家賞を両方制した人といえば、過去にアデルとエリー・ゴールディングとサム・スミスがいるが、4人目にあたるこのシンガー・ソングライターは遥かに実験志向が強い。シングル・ヒットがないという事実が如実に物語る通りで、本デビュー・アルバムではほぼ全パートの演奏からミックスまでみずからこなしたマルチな才覚においても、3人とは一線を画す。端的には、よりポップでルーツィーなジェイムズ・ブレイクといった感じか? ラフなエッジを残したソウルフルな歌声と内省に則って人間関係を描く詞を軸に、生音と電子音を織り交ぜ、ゴスペルやトラッド・フォークからグリッチーなエレクトロニカやオルタナティヴR&Bまでを網羅。何しろ引き出しが多いために均衡を取るのは難しくて、発展途上ではあるものの、楽曲のクォリティーは高く、プロダクション・スキルも歌唱力もポテンシャルは確か。ハイプは無視してオープンな気持ちで聴くべき一枚だ。
〈Sound Of 2016〉と英アワード批評家賞獲得した注目SSW、ジャック・ガラットの初作はポップでルーツィーなジェイムズ・ブレイクといった趣の一枚
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