続いて、プライマル・スクリームのツアー・サポート。
彼らの音楽は自分も二十代前後の頃にとてもよく聴いていたので、サポートのオファーをもらった時はとても嬉しかったのを覚えています。確か2004年に〈MAGIC ROCK OUT〉で観たのが初めてで、同じステージに立てるというのは本当に感慨深いこと。

このツアーには日本から写真家の鳥居洋介氏が同行してくれました。彼には前回の〈フジロック〉の頃からお世話になっていて、日本公演の際はよく撮ってもらっているのですが、今回の滞在で〈太陽を呼ぶ〉という知られざる特殊能力が明らかに。

天晴ハリー
 

とりわけスコットランドに行くと、曇りもしくは雨という天気しかこれまでに経験したことがないのですが、初日のアバディーン、そしてグラスゴーと、スコットランド2日共に気持ちの良い晴天でした。写真家として、ある意味すごく重要な才能ですよね、さすが。

アバディーン

会場のビーチ・ボールルームは海のすぐ横
 

プライマル・スクリームの何人かのメンバーには、セカンドとサード・アルバムのレコーディングしたリンチモブ・スタジオやスーサイドの前座として出演したバービカン・センターなど何回か会う機会はあったものの、メンバー全員とちゃんと話したのは今回が初。

緞帳の隙間から
 

グラスゴー

ライヴ前に、以前から行ってみたかった死者の都、ネクロポリスへ。
鳥居氏のご加護もあり、とても気持ちの良い天気。まるでRPGの世界に潜り込んでしまったような雰囲気で、グラスゴーは何回も来ているのにしばらく知らなかったことが悔やまれました。個人的にもまた足を運びたい場所。

お疲れさまです
 

そしてライヴですが、彼らは地元の英雄であるわけで、ライヴは言わずもがなの盛況具合。終演後にTaigenとYukiがDJすることになっている会場へ。

翌日はデイオフということもあり、みんな全力で楽しんだ夜でした。おかげで後半の記憶はほぼなし。後日、自分の醜態を細かくメンバーに報告されそれでも半信半疑という体たらく。いや、イメージとしてはとても楽しかったんですが、ね。気をつけて下さい、バックファストという飲み物には。

そしてロンドン。

ここはパラディウムというシアターで全席指定、それまでとは雰囲気の違う会場に戸惑いながらも楽しみました。

BO NI NG EN
 

プライマル・スクリームのライヴはというと、この日だけの特別な趣向でコーラス隊を加えてさらにスケールの大きな音像になっていました。会場によって曲を変化させられる柔軟性を、彼らほどのレヴェルでも持てているという事実。その稀有なこと、型にはまらない強靭さ。学ぶことが多いです。

プライマル・スクリームの2016年のライヴ映像
 

この日の打ち上げで素敵だなと思ったのは、ボビーのお父さんが来ていたこと。ご高齢にも関わらず、いなせにスーツをまとうという出で立ちに感服でした。他にもホラーズファリスリースクラッシュポール・シムノン氏も遊びに来ていて、賑やかな夜でした。

キコとギレスピー親子と共に by 鳥居洋介
 

最後はマンチェスター。
2月にサヴェージズとのツアーでも演奏したアルバート・ホール。元教会という造りが何より魅力的で、自然な残響も良い具合に古けた壁も素敵です。プライマルのライヴはフィナーレということもあってか、曲によって少しBPMも上がっているのでは?と思えるほど激情してる感じとかもあり、個人的には一番好きでした。やはり『Screamadelica』『XTRMNTR』の曲をそんなテンションで演奏されると上がってしまいますよね。お客さんもバルコニーから落ちるのではないかという興奮具合。

床が崩れ落ちないか、心配
 

そして打ち上げ。

ドラマーのダリンと話していると、ここでは記せないほど卑猥な日本語と英語の造語でジョークを飛ばし、大爆笑している変態紳士が。元ベーシストであり現ストーン・ローゼスマニ氏その人であります。その謎の純粋なエナジーに(内容は淫らですが)思わず、皆で大爆笑。一気に今までの辛さ、疲れが吹き飛んでいったようで、彼はそれを狙ってあえて……などと思ってみたり。いや、ないかなw

マーティン、シモーネ、ハナ(ゲスト・ヴォーカル)と共に
 

4公演という、ツアーにしては少ない公演数ではありましたが、とても内容の詰まった時間を過ごすことができて胸一杯です。次に会う時までもっと大きくならねば。

Photo by 鳥居洋介
 

未だその残香に酔いつつも、我々は今週スウェーデンのウメオという地でハードコア・バンド、リフューズドのキュレーションによるフェスティヴァルを控えています。アイスランドとほぼ同緯度なので、4月だというのに最低気温はマイナスにもなるようで。温かい身支度をしなくては。

まだまだ未開の地を開拓し、多くの国で演奏し続けていきたいのです。我々には恐らくそれしかできないので。ちょうど、ピナ・バウシュが遺したこの言葉が頭に浮かびます。

dance, dance, otherwise we are lost
踊り続けなさい 自分を見失わないように

それではごきげんよう。

手力

 

PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。〈フジロック〉やオーストラリアの〈Big Day Out〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、2014年に最新作『III』をドロップ。さ らに、37分に及ぶ大曲となる盟友サヴェージズとの共作シングル“Words To The Blind”(Stolen/Pop Noir)を発表している。そしてこの夏は〈フジロック〉への出演が決定! それに先駆けて6月1日には新曲+最新ライヴ音源を収めたミニ・アルバム『Kizetsu no Uta / Live in Paris』をリリースする。そのほか最新情報はこちらへ!

 

BO NINGENの2015年のKEXPでのパフォーマンス映像