ヤニックとフィラデルフィア、2年ぶりの日本公演には五嶋龍も!
かつて「ビッグ5」と呼ばれたアメリカ合衆国の5大名門オーケストラの1つ、フィラデルフィア管弦楽団が2014年に行ったアジア・ツアーの成功には二重の意味があった。
1つは2011年4月に申請した連邦破産法第11条(チャプター・イレヴン=日本の民事再生法に相当)に基づく財政再建を終えてから初めての大きな日本公演だったこと。もう1つは2012年の第8代音楽監督就任当時37歳だったヤニック・ネゼ=セガンとのコンビのお披露目に当たったこと。マーラーの《交響曲第1番》(巨人)をメインに据えた東京・サントリーホールの公演が熱狂とともに終わった直後に楽屋を訪ね、旧知のヤニック(欧米の音楽関係者はみな、親しみをこめてネゼ=セガンをファーストネームで呼ぶ)に「これで基盤はできた。次はツアーの定期化だね」と声をかけたら「絶対にそうしたい。実はすでに、計画が進んでいる」と、息をハアハアさせながら打ち明けてくれた。
計画は2年後の今年、実現した。しかもニューヨーク&東京ベースの人気ヴァイオリニストでテレビ朝日系列の長寿番組『題名のない音楽会』の司会者、五嶋龍が得意の近現代作品で協奏曲のソロを務める豪華版だ。メインの交響曲はブラームスの第2番とブルックナーの第4番《ロマンティック》、さらにリムスキー=コルサコフの交響組曲《シェエラザード》と王道路線。五嶋はプロコフィエフの協奏曲第1番だけでなく、武満徹が早世した旧ソ連の映画監督の「アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」と副題を添えて書いた《ノスタルジア》にも挑む。世界のオーケストラシーンでは武満を含めた全曲が名曲中の名曲として頻繁に演奏されるが、クラシック音楽の面白さは演奏者の世代が変わるたびに新たな輝きを獲得しながら100年、200年と生き永らえてきた点にある。
ヤニックはイタリアの大指揮者、カルロ・マリア・ジュリー二の指導を直接受けた最後の世代に属し、10代前半から地元モントリオールで合唱指揮のキャリアを始めているので、年齢の割には表現の「引き出し」が多い。レパートリーもオペラ、コンサートの両分野に大きく広がっている。メトロポリタン歌劇場の「ライヴ・ビューイング」へ頻繁に登場するほか、音楽監督を兼ねるロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団とも来日を重ねてきた。あらゆる時代の様式感に通暁した解釈はオーソドックスで無理がなく、名人集団の力量を十二分に引き出すバトン・テクニックにも不足はないから、フィラデルフィアがヤニックに未来を託したのは当然の決断。契約は2022年まで延長された。
LIVE INFORMATION
フィラデルフィア管弦楽団 2016年日本公演
○6月2日(木)19:00開演/18:00開場
会場:大阪・フェスティバルホール
○6月3日(金)19:00開演/18:30開場
会場:東京・サントリーホール
○6月4日(土)19:00開演/18:15開場
会場:神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール
○6月5日(日)14:00開演/13:30開場
会場:東京・サントリーホール
出演:フィラデルフィア管弦楽団、ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)、五嶋龍(ヴァイオリン)
http://www.kajimotomusic.com/jp/artists/k=232/