©Dieter Nagl

軽やかなリズム、華やかな色彩、しなやかな歌! 初登場のネゼ=セガンが、伝統の舞台に新時代をもたらした!

 〈音楽の都〉ウィーンの元旦の恒例行事〈ウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサート〉に、新時代が到来した。今春の生中継はSNSなどで大きな反響を呼んだが、話題と賞賛を一身に集めたのは、初登場のカナダ出身ヤニック・ネゼ=セガンの、若鮎のように瑞々しいタクトであった。

YANNICK NEZET-SEGUIN, VIENNA PHILHARMONIC ORCHESTRA 『ニューイヤー・コンサート2026』 Sony Classical(2026)

 過去にこの舞台を担ってきたカラヤンをはじめとする巨匠たちの、大柄で陰翳の深い表現に代わり、ネゼ=セガンの音楽はいかにも小気味よく、リズムは軽やかで、新鮮な色彩が美しく、音そのものが微笑んでいるかのようだ。大舞台への初登場にもかかわらず、テレビ越しに映る指揮姿は終始にこやかで、楽員や聴衆との和気藹々とした空気が伝わってくる。

 ネゼ=セガンの指揮は出だしから快調だ。1曲目シュトラウス2世“インディゴと40人の盗賊”序曲から、たちまちリズムの弾力、音色の愉悦、ハーモニーの味わい、旋律の豊かな歌に陶然としてしまう。主部での気分一新も絶品で、生き生きとしたポルカ、ダイナミックなクライマックスと、万華鏡のような曲想変化に魅せられる。楽員たちがシャウトして熱狂的に盛り上げるランナー“マラプー・ギャロップ”ではブラボーが飛び交い、スッペ“美しきガラテア”序曲ではファンファーレの後、弱音で弦楽器群が交わすハーモニーに酔わされる。描写曲ではロンビ “コペンハーゲン蒸気機関車ギャロップ”が、汽笛の吹奏、ゆっくりした加速、快調な最高速運転、停車のリタルダンドまで実に面白く、楽しい。アンコールの定番曲“美しく青きドナウ”では、スケール雄大な夜明けの描写に始まり、続くワルツでのウィーン特有のリズムも堂に入り、ウィーン・フィルも新鮮な美音と豊かな表情で応えている。エピローグが巨匠たちのような晩秋の風情ではなく、未来志向の明るさに満ちているのも彼ならではだ。客席から指揮した“ラデツキー行進曲”での聴衆と一体となった楽しさは、「音楽はみんなのもの」との彼の主張を、演出を含めて体現したものと言えるだろう。