WEEZER
記念すべき10枚目はセルフ・タイトル盤! ファンだったらこれが傑作だって勘付いているよね!?
さまざまなアーティストが〈セルフ・タイトルのアルバム〉を出すが、それは1回きりのことが多い。しかし、ウィーザーはキャリアの節目にこれまで3枚も『Weezer』というタイトルの作品を発表してきた。さて、4度目となる今回はバンドにとってどんな分岐点になるのだろうか。
その前に、新作に至るまでの動きを振り返っておこう。前作『Everything Will Be Alright In The End』(2014年)では、旧知のリック・オケイセックと久々に再会。また、初期メンバーのマット・シャープ率いるレンタルズの復活作『Lost In Alphaville』(2014年)に、ドラマーのパトリック・ウィルソンがサポート参加し、往年のファンを喜ばせるという出来事もあった。さらに、90年代のパワー・ポップを愛して止まないマクフライとバステッドの合体バンド=マクバステッドと、リヴァース・クオモ(ヴォーカル)の共演が実現したりも。つまり、ちょっとした原点回帰モードだったわけだ。
さて、ニュー・アルバム『Weezer』の話。今作はクラッシュに移籍して初のリリースだ。そして心機一転、フォール・アウト・ボーイやパニック!アット・ザ・ディスコ仕事で知られるジャック・シンクレアを、新たなパートナーに迎えている。彼は学生時代にワナビーザー(=ウィーザーになりたい)なるトリビュート・バンドを組んでいたほどのウィーザー好き。ジャックのフェイヴァリットだという初期2作を想起させるナード感覚が新作にたっぷり盛り込まれているのは、それゆえだろう。その結果、バンドは近作で確認できたヘヴィーなサウンドを抑え気味にし、憂いのあるグッド・メロディーを蒼く爽やかに聴かせ、リスナーの胸を締め付けるようなあの感覚を完全に取り戻している。若い世代から背中を押され、初心に戻ってパワーアップした……とでも表現すべき一枚で、こういう音を待っていたリスナーは多いはずだ。ここからウィーザーの何度目かの黄金期が始まる予感。