2014年にデビューしたロック・バンド、Helsinki Lambda Club(以下、ヘルシンキ)。東京を拠点に活動する彼らは、甘酸っぱさの香るメロディー・センスと捻りの効いたバンド・サウンドを武器に、チャーミングなギター・ポップからガレージ・ロック、サイケデリックなダンス・ナンバーまでを世に送り出してきました。Mikikiにも、自身の音源をリリースした際のインタビューに加え、CHAIとの対談髭とHomecomingsとのスティーヴン・マルクマスについての座談会への参加などたびたび登場。音楽への真摯な姿勢と溢れんばかりの愛情が伝わる発言は、読者のみならず編集部員をもノックアウトしてきました。

そんなヘルシンキが11月25日(水)にセカンド・アルバム『Eleven plus two / Twelve plus one』をリリース。バンドみずから〈最高傑作〉と自負する同作からは9月以降、4曲がリード・ソングとして発表されるそうです。そこで、フロントマンの橋本薫がリード曲を解説、影響を受けた楽曲や録音のこだわりを明かす短期集中連載〈Helsinki Lambda Club橋本薫の『Eleven plus two / Twelve plus one』への道〉が、この度スタート。初回の今稿は、9月3日配信スタートの“ミツビシ・マキアート”について書きました。そもそも〈ミツビシ・マキアート〉って何? *Mikiki編集部

 


〈ミツビシ・マキアート〉って何?ってところが真っ先に思い浮かぶ疑問ではなかろうか。というわけでセルフライナーノーツ第1回はこの素っ頓狂な名前の解説から始めることとする。

まず初めに、〈ミツビシ・マキアート〉なんてものは存在しない。この名前は、僕の大好きなヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)の4枚目のアルバムである『Father Of The Bride』(2019年)が発売される直前まで仮タイトルとされていたものである。我々のマキアートちゃんの仮タイトルは“5m(メートル)”というものだったが(誰にも明かしてなかったけど)、曲を肉付けするにあたって男女がヴァンパイア・ウィークエンドのライブに行くという設定になり、2番Aの歌詞ではヴァンパイアの歴代の曲名をオマージュした遊びが入っていることから、かの日の目を見ることがなくなったエキセントリックなタイトルを拝借するに至ったのである。楽曲の雰囲気もかなり押せ押せなので奇抜なタイトルにしたいという意向もあったし。

楽曲の中身としては、過去から現在までのヘルシンキというコンセプトのもと、肩肘張らずにシンプルで爆発力のあるものにしたいと思い制作した。今後はあまりヘルシンキではリファレンスにすることは少なくなりそうだなという思いから、フィドラー(Fidlar)やウェーヴス(Wavves)などのガレージ・パンクの要素を惜しみ無く素直に表現した。カラッとした中にも漂うナードっぽさはウィーザー(Weezer)の“Surf Wax America”を参照に。

かくして、好きな女の子がバンドに目を輝かせているのを目の当たりにして悔しくも〈俺もやってやるぜー〉と燃える青春の煌めきのような仕上がりとなったわけです。僕も今でも下心を燃やしながら弾けないギターを弾いて遠くのあの子に回りくどいアピールをしているので、この曲の男の子にはひときわシンパシーを感じているのです(自分で書いた曲だけど)。

 

『Eleven plus two / Twelve plus one』を読み解くプレイリスト、公開中!
連載に合わせて、更新していきます!

 


RELEASE INFORMATION

Helsinki Lambda Club 『Eleven plus two / Twelve plus one』 Hamsterdam/UKプロジェクト(2020)

リリース日:2020年11月25日(水)
品番:HAMZ-008
価格:CD 3,000円(税抜)/ダウンロード 2,400円 ※単曲250円
仕様:初回仕様あり(10inchジャケット仕様) ※初回仕様が無くなり次第通常盤に切り替わります。
JAN:4514306017298
レーベル:Hamsterdam Records / UK.PROJECT

〈収録曲〉
01 ミツビシ・マキアート
02 Debora
03 それってオーガズム?
04 Good News Is Bad News
05 パーフェクトムーン
06 Shrimp Salad Sandwich
07 Mind The Gap
08 午時葵
09 IKEA
10 Sabai
11 眠ったふりして
12 Happy Blue Monday
13 you are my gravity