連載

【Helsinki Lambda Club橋本薫の『Eleven plus two / Twelve plus one』への道】第二歩 “IKEA”

連続配信リード・シングル全曲解説

【Helsinki Lambda Club橋本薫の『Eleven plus two / Twelve plus one』への道】第二歩 “IKEA”

2014年にデビューしたロック・バンド、Helsinki Lambda Club(以下、ヘルシンキ)。東京を拠点に活動する彼らは、甘酸っぱさの香るメロディー・センスと捻りの効いたバンド・サウンドを武器に、チャーミングなギター・ポップからガレージ・ロック、サイケデリックなダンス・ナンバーまでを世に送り出してきました。Mikikiにも、自身の音源をリリースした際のインタビューに加え、CHAIとの対談髭とHomecomingsとのスティーヴン・マルクマスについての座談会への参加などたびたび登場。音楽への真摯な姿勢と溢れんばかりの愛情が伝わる発言は、読者のみならず編集部員をもノックアウトしております。

そんなヘルシンキが11月25日(水)にセカンド・アルバム『Eleven plus two / Twelve plus one』をリリース。バンドが〈最高傑作〉と自負する同作からは9月以降、4曲がリード・ソングとして発表されるそうです。この〈Helsinki Lambda Club橋本薫の『Eleven plus two / Twelve plus one』への道〉は、フロントマンの橋本薫がリード曲を解説、影響を受けた楽曲や録音のこだわりを明かす短期集中連載。今回は9月23日配信スタートの“IKEA”について書きました。やっぱりペイヴメントのあれは意識したのかな? *Mikiki編集部

 


〈IKEA〉という名前が曲名に含まれている曲は数こそ多くはないけれどおしなべて名曲。ペイヴメント(Pavement)の“Date With Ikea”なんてもう最高。ただよくよく考えるとこれってIKEAでデートってことじゃないよね? IKEAとデートだよね? そして歌詞を読んでみてもあのIKEAのことでは全然なさそうだし。誰かこの謎を解いて!

※編集部注:90年代には安価ながら壊れやすいと言われることの多かったIKEAの家具をメタファーとして、消費社会への皮肉や人間関係の脆さを歌った楽曲だと解釈されることも
 

最初から話が脱線してしまったが、楽曲解説第2弾は“IKEA”について。未来盤に含まれる1曲としてその未来性を存分に発揮しているはず。皆こんな曲を作ってくるとは思わなかったでしょう。

この曲のそもそもの始まりは、サビの〈極彩色の甘過ぎるケーキを食べて甘過ぎるねって言いたいね)というフレーズから。恋人同士でIKEAできゃっきゃとデートして、フードコートで真っ青な甘ったるいケーキを分け合って食べて「うわっ! 甘っ!」とか言って笑い合うのである。自分たちが1番甘ったるいとも知らずに。もう二人にとってはIKEA=楽しい、ケーキ=甘い、なのである。それ以外の思考はない。

そんな甘ったるいメロディーとリリックと対比して、インスト・パートのAメロやその後のカオスな展開が存在する。世界に表層というものがあれば、もちろん深層というものもある。そして功罪というものも真っ二つに分けられるものではない。安価な大量生産の裏にはそのシワ寄せが来ている人々がいて、自分自身のための生活や行動がいつしか〈映える〉ための生活に目的が変わってしまって、簡単に手に入るそれなりの刺激をそれなりに楽しんではちょっと虚しくなって、でも二人で食べたケーキは何故かよく覚えていて……。

そんな矛盾や断片的な意識を表現するために、サビ後のカオス部分はセッション形式で主に作り上げた。ディアンジェロ(D'Angelo)やプレイリストにも入れているオリヴィエ・セント・ルイス(Olivier St. Rouisの)ようなモタりと緊張感の塩梅が凄まじいビート感を出したかったのだが、見事にドラムのよっさん(吉岡紘希)がその夢を叶えてくれた。ラップも初めてだったが、前なのか後ろなのか不安定なノリが個人的には気に入っている。メンバーの素養と実験精神の賜物な一曲。IKEAを批判しているわけではないので(ほん〜〜の少しはあるかもしれないけれど笑)、是非IKEAやファストフード店などでも流していただきたいものです。

 

『Eleven plus two / Twelve plus one』を読み解くプレイリスト、公開中!
連載に合わせて、更新していきます!

 


RELEASE INFORMATION

Helsinki Lambda Club 『Eleven plus two / Twelve plus one』 Hamsterdam/UKプロジェクト(2020)

リリース日:2020年11月25日(水)
品番:HAMZ-008
価格:CD 3,000円(税抜)/ダウンロード 2,400円 ※単曲250円
仕様:初回仕様あり(10inchジャケット仕様) ※初回仕様が無くなり次第通常盤に切り替わります。
JAN:4514306017298
レーベル:Hamsterdam Records / UK.PROJECT

〈収録曲〉
1. ミツビシ・マキアート
2. Debora
3. それってオーガズム?
4. Good News Is Bad News
5. パーフェクトムーン
6. Shrimp Salad Sandwich
7. Mind The Gap
8. 午時葵
9. IKEA
10. Sabai
11. 眠ったふりして
12. Happy Blue Monday
13. you are my gravity

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