この夏は居間にいながら宇宙までワープとワープ!

 設立から間もない90年代初頭に思っていたこと――エイフェックスとかがいるワープって、エレクトロニックなミュージックというかフレッシュな音楽を出すレーベルだよね。そして2016年、エイフェックスとかがいるワープって……(以下同文)。これがワープの軸であり、魅力なのである。この25年以上の間にクラブ・ミュージックの地図は大きく書き変わり、レーベルに集う顔ぶれだって変化した。にもかかわらず、そのロゴを見た時のワクワク感は変わらない。これは奇跡であると同時に、必然でもあるのだ。

 

APHEX TWIN
新たなプロダクトはシーケンサーの取り扱いガイド!?

 あえて言い切ってしまおう、エイフェックス・ツインを構成する原理は〈カマセ〉と〈こだわり〉、この2つである。〈カマセ〉についてはリチャードD・ジェイムズの顔をアイコン化した一連の悪趣味ジャケをはじめ、13年ぶりのアルバム『Syro』(2014年)リリース時のパブリシティーの打ち方、SoundCloudでの未発表曲の出し方など、キャリアを通じて枚挙に暇がない。そして後者については、ソファーに寝っ転がってのライヴ・パフォーマンス、膝立ち状態での初期のDJ、自作のシンセによるトラック作りなど、クォリティーはもちろんのこと、その音を生み出す環境や状況に対しても〈こだわり〉を貫いてきた。

APHEX TWIN Cheetah EP Warp/BEAT(2016)

 さて、間もなくお目見えする『Cheetah EP』について。シンセサイザー/シーケンサーの取り扱い説明書を模した広告、エイフェックスらしからぬキュートなジャケット……と、〈カマセ〉もバッチリだし、90年代に製造されるもプログラミングの困難さ(画像検索したら想像つきます)で珍品扱いされてきたデジタル・シンセ、チーターMS800を使って制作したという、私のような素人からしたらまったく理解できない〈こだわり〉も健在。というか、タイトルに掲げるほど、このシンセで作ったこと自体が重要なEPなのだ。そんな〈カマセ〉と〈こだわり〉に溢れた本作は、チーターならではの響き(……かは判別つかないが)、ハンドリングの難しさといった縛りが奏功し、とりわけ90年代前半のファンが大喜びしそうなエイフェックス節が全開の仕上がりに。個人的にはリチャードがいかにも好きそうなアシッド・ハウス“Cirklon3”が最高すぎた!