注目すべきあのレーベルから、またしても気になるサウンドが響いてきたよ!
ブランド単位でいえば、いま日本のジャズ界隈においてもっとも勢いのある一群がPlaywrightであることは言うまでもないだろう。bounce本誌でも何度となくその動きを取り上げてきたように、fox capture plan、bohemianvoodoo、Tres-men……と、2012年のスタートからジャズ・オリエンテッドなバンドを数多く輩出し、その界隈に止まらない多様なリスナーからの手厚い信頼と支持を取り付けてきた気鋭のレーベルである。
昨年にはImmigrant's Bossa Band、今年に入ってからはWAIWAI STEEL BANDも仲間入りし、さらに層を厚くしたそのPlaywrightが、この9月に新たな2タイトルを投入してきた。ひとつは名うてのプレイヤーたちによる新進ピアノ・トリオ、PRIMITIVE ART ORCHESTRA(以下PAO)のファースト・アルバム『HELIX』、そしてもうひとつは初のレーベル・コンピ『Family』だ。前者に関しては〈Part.2〉のインタヴューをご覧いただくとして、タワレコ限定リリースとなった後者は、所属アーティストたちが各々のルーツを表現した新録のカヴァー集という意味でも興味深いものだろう。また、国内外のクラブ・ジャズ・シーンで評価の高いTRI4THがレーベル外から参加していることに今後を期待するという人も多いはずだ。この後にはbohemianvoodooの新作も控えているとのことで……ますます多くの視線を集めそうなこのファミリーに注目するのは、いまからでも遅くない!
fox capture plan
もはや説明不要? 岸本亮(ピアノ)、カワイヒデヒロ(ベース)、井上司(ドラムス)によるピアノ・トリオ・バンドで、先日のサード・アルバム『WALL』もまだ記憶に新しいfox capture plan。タワレコ限定ミニ・アルバム『FLEXIBLE』でのデビュー以来、フレキシブルな感性と矢継ぎ早なリリースでPlaywrightファミリーそのものの勢いも牽引してきた彼ららしく、今回の『Family』ではマッコイ・タイナー“Passion Dance”でオープニングを威勢良く飾り立てている。ダイナミックなピアノの躍る疾走感バリバリの一点突破アレンジはいまの彼らが孕む熱気を集約したような素晴らしい仕上がり!
Immigrant's Bossa Band
リーダーのNOBU(パーカッション/スクラッチ他)を中心に、Shoco(ヴォーカル)、Sugames Japon(キーボード)、Luigiことカワイヒデヒロ(ベース)、大橋いさお(ギター)、山際秀人(ドラムス)が集まった和製ブラジリアン・ジャズ・バンド。コンスタントに作品を重ね、昨年Playwright入りしてからは通算6作目『NEWDAY』をリリースしている。『Family』では、村上春樹の小説でもお馴染み、ベニー・ゴルソン作の“Five Spot After Dark”をジャジー・ヒップホップ風の味付けでクールに披露していてカッコイイ。NOBUとSugamesによる新バンド=Do One Thing.の動きも気になるところだ。
TRI4TH
PAOにも名を連ねる伊藤隆郎(ドラムス)をはじめ、織田祐亮(トランペット)、藤田淳之介(サックス)、関谷友貴(ベース)、竹内大輔(ピアノ)から成る実力派クインテット。2006年に結成されて須永辰緒主催の〈夜ジャズ〉などで脚光を浴び、2012年より現編成となり、昨年の最新アルバム『FIVE COLOR ELEMENTS』に至るまで多方面で活躍中だ。このたびの『Family』では、唯一Playwrightの外から“A Night In Tunisia”にて参加(……ということは?)。
bohemianvoodoo
Bashiry(ギター)、Nassy(ベース)、井上孝利(ドラムス)、そして別掲にPAOとして登場している木村イオリ(ピアノ/キーボード)という4人組。PAOも“Waltz For Debby”で参加した『Family』では、ダイナミックにギア・チェンジしながらホレス・シルヴァー作の“Nica's Dream”を8分超えの尺でじっくり聴かせる(ヴィブラフォン奏者の山本玲子とTres-Menの松岡も好アシスト!)。リリースという意味ではややご無沙汰……と思っていたら、2012年の人気作『SCENES』に続く待望のサード・アルバム『Aromatic』がいよいよ11月に届けられるとのこと!
Tres-men
quasimodeの松岡“Matzz”高廣(ドラムス)、櫻井喜次郎(DJ)、BLU-SWINGの中村祐介(キーボード/プログラミング)によるスリーメン・ユニット。他のレーベルメイトとはまた異なるDJ目線を根幹に据え、ジャズやラテン、ブラジル音楽をクラブ・フレンドリーな形で聴かせてきた彼らだけに、今回の『Family』でも日野皓正の“Samba De-La Cruz”という納得のチョイス。ハリー・ウィテカーを招いて作られた日本のフュージョン・クラシックをさらにフロアライクに展開! 年頭にリリースしたセカンド・アルバム『Let's Get Going!』にも通じるグルーヴィーな出来映えには興奮するしかない!
WAIWAI STEEL BAND
スティールパン・プレイヤーの伊澤陽一が中心となって2008年に始動、大人数のパン奏者にドラマー(Immigrant's Bossa Bandの山際秀人)やパーカッショニストも加えたフレキシブルな編成でライヴ活動を展開している大所帯バンドだ。今回の『Family』ではパン奏者19名にパーカッションという陣容でデューク・エリントン“Caravan”をカヴァー。原曲のアフロ・キューバンなノリをジワジワくる熱帯ムードで包み込んでいる。そういえばファースト・アルバム『TIME FOR PAN』でスティーヴィー・ワンダー“Sir Duke”を取り上げていた……なんてことも思い出されたり。
Playwright Players
『Family』を締め括るのは、各バンドからの選抜メンバーによるスペシャル・コラボ“Theme From Lupin The Third”だ。アレンジ/プロデュースも担当したカワイヒデヒロを中心に、PAOの伊藤隆郎、Tre-menの中村佑介、bohemianvoodooのBashiryらが集って、小栗以上に旬な怪盗ぶりをイキに見せつけてくれる。