ぶっといドラムス&ギターがリードする冒頭曲を聴き、ポリスの再結成ツアーを思い出した。それもあって、〈やっぱりコレだよ!〉とか〈13年ぶりのロック回帰!〉と言いたくなる気持ちもわかる。が、スティングはそんな枠に収まる男じゃない。ロックはもちろん、ジャズやクラシック音楽、トラッドほか、さまざまなスタイルに挑戦して成功を収め、〈もうやることはないんじゃないの!?〉とも思える彼が、みずからの音楽的な欲望に忠実になったこの新作は、集大成と呼ぶに相応しい奥深い一枚だ。ボトムの低い溌剌としたギター・ロックをはじめ、弾き語りによる内省的な曲や難民問題にフォーカスしたもの、プリンスの訃報を受けて書いたというナンバーなど内容は多彩で、しかもこの人ならではの美メロが軸にあり、バンド的なアンサンブルと生々しい鳴り音が特徴的だ。だからこそ楽器を肩にかけた姿をジャケにし、スタジオのある交差点を表題にしたのだろう。流石はスティング、贅肉なんて一切なし。