Go Fuckin' Crazy!
ウォーミングアップは万全! もう一度バンドマンとしての道を選んだジョー・ジョナスが、いよいよ本格的に世界をDNCEさせるよ! イイ子を演じるのに疲れたなら、ここでパーッと弾ければいいじゃん!
思えば、ジョナス・ブラザーズが正式に解散する前の2011年にソロ・デビューしたものの、いまひとつパッとせず、以来すっかり弟のニックに先を越されていた。でも要は、仲間と密にコラボしながら音楽を作るほうが、ミュージシャン/ソングライターとしても、ヴォーカリストとしても、うまく機能する人なのだろう。そう、世界的に大ヒットしたファースト・シングル“Cake By The Ocean”から1年、このたび満を持して初作『DNCE』を送り出すのは、ジョー・ジョナスが率いるDNCEだ。もっと早くアルバムが出てもおかしくはなかったが、時間をかけて曲を書き、精力的にツアーを行なったことが奏功したよう。いずれも経験豊富なメンバー——シアラらのツアー・メンバーであるジンジュ(ギター)、セミ・プレシャス・ウェポンズのコール・ホイットル(ベース)、そしてジョナス・ブラザーズのサポート・メンバーだったジャック・ロウレス(ドラムス)——は共同体としての独自のキャラを確立したうえで、あのシングルで打ち出した80年代テイストのファンク・ポップ路線をコンテンポラリーな音で提示。笑っちゃうほどキャッチーな楽曲のクォリティーは総じて高いし、ダンス・ミュージックだけどEDMには転ばず、プリンスを筆頭にシックやマイケル・ジャクソンからインスピレーションを求め、オーソドックスなバンド・サウンドをプロダクションでアップデートするという手法を選んだ。
つまり、なんでもあり!が大前提の時代にあえてスタイルを限定した彼らは、マットマン&ロビン、イリヤ、サー・ノーラン、オスカー・ゴレスといった新進プロデューサーを多数起用することで、アルバムに変化と抑揚を与えている。マニフェストも兼ねたバンド名を冠するオープニング曲で〈踊るべし〉と狙いを定め、初っ端から抵抗し難いグルーヴを紡ぐ4人。“Body Moves”や“Doctor You”ではディスコに、“Naked”ではハウスに、“Zoom”ではロックに、“Blown”では古風なリズム&ブルースに寄り、“Be Mean”はデュラン・デュラン風、“Unsweet”はMJ風……といった具合で、多彩なネタを盛り込む。そして、エレクトロニックに音を組み立てたこれらの曲に対し、“Good Day”や“Almost”、あるいは王道バラード“Truthfully”で、シンプル&オーガニックにバンドの素の姿を見せつけることも忘れない。
全編の曲作りに関わったジョーは、歌い手としても強い存在感を改めて印象付けているし、いまのUSに足りない、マルーン5的なメインストリーム・バンドの座を受け継ぐ可能性だってありそうだ。徹底してフィール・グッドな逃避志向といい、男女&人種ミックスのメンバー構成といい、間口は思い切り広いのだから。まあ、いまの混乱しきった世界に、こういうパーティー・サウンドがまったくもって場違いなのか、それとも切に求められているのか、判断しにくいところではあるけれど、良くも悪くも両方に当てはまるのだろう。