このバンドの何たるかを攻撃的な毒に忍ばせた、メジャー・デビュー20周年イヤーの開幕を告げる新シングル。ここでの4人は、近頃ないほどの不敵な表情を浮かべていて……

 これほどまでに不敵な表情を浮かべるPlastic Treeも久しぶりではないか。メジャー・デビュー20周年〈樹念〉イヤーの開幕を告げるニュー・シングル“念力”は、ノイジーなギター・リフとヘヴィーなグルーヴで聴き手を強引に惹き寄せつつ、さらにはサイケなコーラスで煙に巻くという恐ろしく攻撃的な一曲となった。

Plastic Tree 念力 CJビクター(2017)

 「曲を作るとき、〈20周年〉というのは多少意識していて。20年前の自分たちがやってそうな曲にしたいなっていう、発想はまずそこからでしたね。歌詞にも出てきますけど、ギラギラしていてダークな感じというか、バンドを始めた頃はそういう雰囲気の曲が多かったような気がしてて。それこそデビューする前の曲ですけど、“サイコガーデン”とか。だから、ちょうど20周年っていうタイミングだし、いまそういうアプローチで曲を作ってみたらどういうものが出来るのかな?っていう興味もあって」(長谷川正、ベース)。

 「ライヴで演るのも楽しそうだし、こういう毒っ気のある曲で20周年をスタートするのもいいなあって。今回はそういう企画だったので、歌詞はバンドそのものの説明書みたいなものを書きたいなと思って。曲を作ることだったり、変な写真を撮って、変な表現をしてみることだったり、自分らはそういうことを好きでやってるんですけど、そういう作品を発信していくことを説明的に書こうっていうのはありましたね」(有村竜太朗、ヴォーカル)。

 「シングルのカップリングって、表題曲とは違う側面を見せるパターンもあると思うんですけど、今回は統一性があったほうがいいと思って」(有村)収められたというもうひとつの新曲“creep”は、作詞を佐藤ケンケン(ドラムス)が、作曲をナカヤマアキラ(ギター)が担当。こちらはアッパーなギター・ロックのなかに切ないエモーションを滲ませたナンバーとなっており、本作の書き下ろし曲は、いずれも前のめりなバンドの姿勢が伝わるものに。さらに、通常盤には98年作『Puppet Show』から“サーカス”のライヴ・ヴァージョンも収録。ゆらゆらと漂うスロウがやがて劇的な場面転換を迎えるこの曲は、セットリストの要所に置かれることの多い長尺ナンバー(今回は9分超)だが……。

 「『Puppet Show』に収録されてる“サーカス”は、あの当時ならではの音源というか。プロデューサーの西脇(辰弥)さんと、〈せっかく音源にするんだったらライヴでやってないようなものもいいんじゃない?〉ってことで、けっこう詰め込んだアレンジになってるんですけど、そもそもの形は今回のようなもので、実際、自分たちがライヴで演奏する際にはいつもこの形で演ってたんですよ。すごく隙間が多い作りで、ライヴDVDにはこのヴァージョンも入ってるんですけど、正式に音源化されたものはないな、ってふと思ったのと、あとね、デビュー前にバンドで3曲入りのデモを作ったんですけど、そこに入ってたのが“割れた窓”と、“本当の嘘”と、この“サーカス”で。だから当時のバンドのイメージっていうか、世界観を体現してる曲だったのかなっていう。いわゆる名刺代わりになっていた曲というか」(長谷川)。

 「僕にとっての“サーカス”は……あまり音楽的な曲とは捉えてないんですよね。ちょっと宗教がかったっていうか(笑)、バンドの教典のような意味合いの曲だったりするので。看板曲というよりは精神性を表現してるような、立ち返る場所のような曲。だから、ライヴのときも音楽に乗って何かするとかそういう感覚じゃないというか……なんか、特別な気持ちになるんですよね」(有村)。

 「原風景的というかね。なので、この“サーカス”も、もともと自分たちの描こうとしていたものを改めて形にしてみたようなところはありますね」(長谷川)。

 過去と現在を繋ぐ楽曲を通じ、バンドが見ていた原風景を提示することでスタートするPlastic Treeの2017年。そうしたアプローチは、ここから1年の活動にも引き継がれていく。

 「2017年は、自分たちの足跡を振り返るような時期になるのかな。世の中に自分たちのことをもっと知ってもらうきっかけを与えてもらった出来事から20年。ここでいま一度、当時のような意識に立ち返るのもいいのかな、と思ってます」(長谷川)。