視野を広げながら例年以上の活躍を見せた2016年――その経験と各々の意識の高まりはチャレンジに満ちた傑作『FRAGILE』に結実した。これが最新型にして現在進行形のfox capture planだ!

 

バンドとして自信がついてきた

 コンテンポラリー・ジャズとポスト・ロックとの融合を掲げ、道なき道を疾走してきたfox capture planの5年間。2016年は、デビュー後では初めて単独作品リリースのない年になったが、彼らを追ってきたリスナーはみな知っている。それを補って余りあるほどライヴやコラボレーションが充実し、とても収穫の多い一年であったということを。

 「ビルボードライブ東京に3回も出させてもらったり、〈東京JAZZ〉や〈フジロック〉にも出られたり、海外にも4回行きましたし、たくさんの人の前で演奏する機会が多かった一年だなと思いますね。その間に楽曲制作もいっぱいやったし、駆け抜けました」(カワイヒデヒロ、ベース)。

 「コラボレーションということでは、Keishi Tanakaとがっつり一枚作りましたし、ディズニーのカヴァー・アルバムで大森靖子さんと共演したのも、意外な組み合わせと言われましたけど、なかなか好評で。jizueやbohemianvoodooとはスプリットCDも出して、結果的に〈コラボ・イヤー〉になったと思いますね。刺激を受けた部分は大いにありますし、いままで守りすぎていた自分たちのカラーを、いい意味で塗り替えられた年だったかなと思います」(岸本亮、ピアノ)。

fox capture plan FRAGILE Playwright(2017)

 そして新年、1年2か月ぶりに届いた5枚目のフル・アルバム『FRAGILE』は、前作『BUTTERFLY』(2015年)で作り上げたfcpサウンドの一つの完成形をベースに、昨年に受けた刺激を加えて練り上げた、一聴してアグレッシヴな作品だ。キーワードは〈エレクトロニック・サウンドの導入〉。これまで封印してきたシンセサイザーの使用を解禁し、1曲目の“FRAGILE #1”から強烈な電子音のフレーズが響き渡る。fcpに一体何が起こったのか?

 「もともとエレクトロニックの要素は、最初から僕たちのベーシックにあったと思うんですね。3人もニュー・ジャズやポスト・ロックを通ってきていて、ピアノ・トリオの形態でそれを人力で再現していたんですよ。ウッドベースにエフェクターを繋いだり、ドラムのスネアにディレイをかけてダブステップっぽい音を強調したり。それを『BUTTERFLY』以降の方向性として、今回はシンセサイザーの音を前面に出す曲を作ってみようと思ったら、最初からしっくりきたんですよね」(岸本)。

 「fcp史上もっともロック・バンドっぽいというか、いい意味でジャズ要素が一番薄いアルバムになったのかな?と。生音にエフェクトをかけて音を楽しむようなことは以前もやってたんですけど、今回は最初から電子音を使うという設定で始めてるので。それは怖いもの知らずでいろいろ試せるぐらい、バンドとしての自信がついてきたからじゃないかと思います」(井上司、ドラムス)。

 

可能性は無限

 例えば、リード曲“エイジアン・ダンサー”で聴けるキャッチーなラテン・ハウスのビートと、そこに絡まるピアノ、ストリングス、シンセのエモーショナルな響き。NHKの番組「超人たちのパラリンピック」のメイン・テーマをセルフ・カヴァーした“the Gift”の、爆走するダンス・ロック・ビートを加速させる煌びやかな電子音。さらに“bouncing walk”では、軽やかに弾むリズムに柔らかくうねるシンセの音色を載せ、〈シティー・ポップ〉というテーマで新しい音像にも積極的にトライしている。

 「cero、Suchmosとか、シティー・ポップ系の流れからジャズ寄りのアプローチをする人たちは増えてますけど、逆に僕らみたいなバンドがそちらに寄せていくことって、あまりなかったと思うんです。fox capture planのフィルターを通したシティー・ポップが、“bouncing walk”かもしれない」(岸本)。

 「聴き慣れないかもしれないですけど、僕ら的には斬新なものが作れたと思っているので、これが浸透していくと嬉しいなと思います」(カワイ)。

 斬新といえば、メイン・ソングライターの2人と並んで前作から単独で作曲を担うようになった井上による“Prospect Park”も、アルバムの中で特にフレッシュな存在感を主張する。前半はヒップホップ・マナーのクールなループが心地良く、後半ではめまぐるしくコード・チェンジを繰り返す、そんなプログレッシヴな聴き応えはこれまでのfcpにはなかったものだ。

 「もともとヒップホップのトラックメイカーの作る音がすごく好きなので。いままでは細かいことをいっぱいやったし、手数の多いドラマーなんですけど、この“Prospect Park”に関してはシンプルなことを繰り返すだけで全然いいというか。変な言い方ですけど、ドラムは一番どうでもいい(笑)。たぶんドラマーとしてのエゴと、曲を作る頭は別なんですね」(井上)。

 新しさばかりではない。過去から受け継がれたfcpらしさもしっかりと受け継がれている。恒例のロック・カヴァーとなったアークティック・モンキーズの“Brianstorm”や、“the Gift”“Aerial”などのアッパーな疾走系チューンには、ロック・リスナーにターゲットを定めた前々作『WALL』(2014年)からの流れがはっきりと聴き取れるし、“エイジアン・ダンサー”“Possibility”などでのエモさ満点のストリングス・アンサンブルは、前作『BUTTERFLY』の正しい発展形になっている。

 「もともとあったロックの要素に、プラスアルファで電子音を入れたかったということですね。EDMに対抗しうるようなものが、電子音を使うことによって生まれるんじゃないか?という思いもあるので。結果的に、無機質な音色を使っているぶん、曲中での感情の起伏は大きくなったような気がするんですよ。いい具合にどんどんエモくなってる気がします。無機質なものに感情を載せるのは、かつてYMOがやっていたことだと思うし、最近だと高橋幸宏さんのMETAFIVEとか、そういうものに刺激を受けてる部分はあると思います」(岸本)。

 3月からは久々の単独ツアーもスタート。ジャズとロックの間で生まれる未知の刺激的なサウンドを求め、3人の果敢な疾走はまだまだ続く。

 「バンドとして新しいフェイズに突入した感じがあるし、『FRAGILE』は第2章の幕開けに相応しいアルバムだと思うので。新たにやりたいことも生まれてるし、可能性は無限だと思ってます」(岸本)。

 

fox capture planの作品を紹介。

 

fox capture planの2015年作を紹介。

 

“Brianstorm”を収録したアークティック・モンキーズの2007年作『Favourite Worst Nightmare』(Domino)

 

実り多かったfcpの2016年

 本文にもあるように、2012年にミニ・アルバム『FLEXIBLE』でデビューして以来、2016年はfox capture planにとって初めて単独リリース作品のなかった年ということになる。とはいえ、毎年のアルバムがなかった代わりにバンドとしては遠心力のある動きを見せ、メンバー個々の活躍も多岐に渡って目覚ましかったのは言うまでもない。なお、JABBERLOOPも活発な岸本亮はPOLYPLUSでも活動しているし、井上司はnhhmbaseの進化型となるマモル&ザ・クリティカルヒッツで動きはじめたことも付記しておこう。 *轟ひろみ

fox capture plan,bohemianvoodoo color & monochrome 2 Playwright(2016)

いまやレーベルの二枚看板に成長したfcpとbohemianvoodooが、2013年に出していたスプリット盤の第2弾。前作と同じく両バンドが2曲ずつを持ち寄った格好で、fcpは繊細なフレーズを伴って疾走する“Acceleration”とドラムンベース味もあるドラマティックな“Turning Point”を提供!

 

jizue,fox capture plan Match Up bud music(2016)

イヴェントでの競演も多く、スプリットの7インチを出したこともある京都の人気インスト・バンドと4曲ずつを分け合った限定サンプラー。fcpは貴重なライヴ音源のほか、タワレコ新宿店限定で出されたCD-Rの処女作『Sampleboard』から2曲を提供しているのが嬉しいポイントだろう。

 

fox capture plan,Keishi Tanaka 透明色のクルージング Playwright(2016)

元riddim saunterのシンガー・ソングライターをフロントに迎えた、爽快なコラボ・シングル。彼の別曲のfcpによるリミックスも収録。〈Keishi Tanaka feat. fox capture plan〉名義の同名シングルではまた異なるエクスクルーシヴなカップリング群が楽しめるので併せてチェックを。

 

Keishi Tanaka What's A Trunk? Niw!(2016)

上掲コラボの流れもありつつ、ライヴ/ツアー・メンバーも務めた岸本は、fcpで共同アレンジした“透明色のクルージング”も含めて都合7曲の演奏に参加している。主役の備えた都市型ソウル~AORのフィーリングが『FRAGILE』に与えた影響の大きさは説明を要さないだろう。

 

VARIOUS ARTISTS ROCK IN DISNEY~Season of the Beat Walt Disney(2016)

〈ロック・フェス〉感をテーマにしたディズニー・カヴァー集にて、大森靖子との初コラボが実現! 前年の『PIANO MAN PLAYS DISNEY』にもfcpは単独で参加していたが、ここでの“Alice In Wonderland”では激しいピアノを印象的に響かせながら、大森の奔放な歌声に対峙している。

 

arlie Ray Re: covered SCM(2016)

岸本とカワイがプロデュースを手掛け、fcp作品でも知られるエンジニアの上原翔を起用した、女性シンガーの意欲的なアニソン・カヴァー集。“残酷な天使のテーゼ”と“銀河鉄道999”ではバンドごとバックアップしてもいるので、fcpのファンなら聴き逃し厳禁な一作となっている。


 

fcp周辺のインスト・アクトも盛り上がってきた2016~17年

 〈ジャズ〉というワードに対する世間の関心やイメージがどのように変わっていこうとも、そもそも受け手をいわゆるジャズ・リスナーに限定せず、別のフィールドへも意欲的に立ち向かってきたfox capture planには、吹く追い風の種類もさまざまだ。スタイルは違えども彼らと共振するインスト・アクトが層を厚くしているのもその一つで、岸本が在籍するクラブ・ジャズ・バンドのJABBERLOOPはもちろん、Playwrightのレーベル仲間となるPRIMITIVE ART ORCHESTRAやbohemianvoodoo、さらには別掲のスプリット盤を出したjizueのような顔ぶれの諸作がfcpと並列で楽しめるのは言わずもがな。

PRIMITIVE ART ORCHESTRAの2015年作『qualia』収録曲“qualia”
 

 さらにはジャム・バンド流れからベースレス編成でポップな境地に至ったThree Primary Colors、〈ポスト・ジャズ・ピアノ・ミュージック〉を標榜して独自のグルーヴを究めるSchroeder-Headzあたりも、出発点は違うものの『FRAGILE』と交差するようなチャレンジングなアルバムを届けてくれている。なかでも、ちょうど新作『Echo Night』を届けてくれたADAM atのダンサブルなピアノ・ロックがfcpに通じる部分は大きい。

ADAM atの2017年作『Echo Night』収録曲“Echo Night”

 

 

Playwright, Playback
2012年の始動以来、fox capture planと並走しながら彩りを豊かにしてきたPlaywright。ここでは2016年の成果を改めて紹介しておこう!

freecube アムリタ Playwright(2016)

2005年に結成され、サンバやボサノヴァを下地にした清涼な歌世界を届けてきたエミコ(ヴォーカル)とc.j.(ギター)のコンビ。タワレコ限定シングル“beautiful days”に続くこのファースト・アルバムは、情緒豊かな日本語詞のポップスとして往年のbirdやorange pekoeを想起させる良品に! “Tristeza”のカヴァーなど、大半の演奏にはbohemianvoodooから木村イオリ(ピアノ)も助力。

 

VARIOUS ARTISTS 須永辰緒の夜ジャズ・外伝2 All The Young Dudes ~全ての若き野郎ども~ Playwright(2016)

レコード番長こと須永辰緒の名物シリーズ〈夜ジャズ〉の、日本産アクトの楽曲をコンパイルする〈外伝〉。その久々の第2弾がPlaywrightから登場したのはレーベルの勢いを窺わせる出来事だった。TRI4THや石若駿、BEMBEらの快演に浜田マロンやT字路sの歌モノも交え、fcpの“Don't Look Back In Anger”でシメる演出がいい感じだ。

 

WAIWAI STEEL BAND LAMP Playwright(2016)

伊澤陽一を中心に50人超が集まったスティールパン楽団の2年ぶりのアルバムは、新曲集のCDとライヴDVDから成る2枚組。幾重にも響き合う幻想的なパンの音色が荘厳な表題曲や、曲名通りのメロウな“Twilight”、ポップで軽やかな“Roulette”など、カリブ音楽の消化吸収から先へ進んだ独自の音響世界が壮大に広がる。それら全曲も披露された2015年10月の単独ライヴの模様はDVDにて。

 

Immigrant's Bossa Band Like This, Like That. Playwright(2016)

Luigiことカワイヒデヒロも在籍する和製ブラジリアン・ジャズ・バンドの、活動10周年を迎えた節目でのアルバム。前作『NEWDAY』(2013年)と比べてもクロスオーヴァーな自由度を増し、ヒップホップ・テイストに傾いた演奏のタイトさが煌めいている。フルイド“Voce(E'O Meu Amor)”にSuzi Kimの“Try Me”というカヴァーのチョイスも、往年のクラブっぽさを意識したジャストな雰囲気。

 

TRI4TH Defying Playwright(2016)

前年の移籍作『AWAKENING』の成果を受け、タワレコ限定ベスト盤『MEANING』でも話題を広げたダンス・ジャズ・クインテット。すべてオリジナル曲で固めた今作は、爆音ハード・バップからシネジャズ風、痛快なファンクまで、あえて曲ごとにアレンジの妙と差違をデファインするかのような作りで、活動10周年を迎えたバンドに相応しい持ち札の多さを見せつけた。

 

MASSAN×BASHIRY 阿吽-あうん- Playwright(2016)

ソウルフルな歌声を備えたラッパーとbohemianvoodooのギタリストが互いの呼吸を合わせた2枚目のタッグ作。椎名林檎のカヴァーもコンビの美意識に昇華する歌唱の求心力と快い伴奏の化学反応は、独特の疾走感とブルージーな哀愁も手伝ってグッとくる瞬間を演出しまくり! カタログの幅を広くしているPlaywrightのなかでも、とりわけ幅広いリスナーを惹き付けそうなキャッチーさがある。

 

fox capture plan,bohemianvoodoo color & monochrome LP Playwright(2016)

両バンドによるEP『color & monochrome』(2013年)をアナログ化したもの……というだけではなく、この後に登場したシリーズ第2弾の音源も先行で収録した、スプリット企画のスプリット盤といった2×2×2の8曲入りLP。bohemianvoodooにとって久々の新録曲でもあった“Golden Forest”はCD版とヴァージョンが異なるという芸の細かさが心憎い(?)。数量限定盤につき、お早めに。