BOYCOTT RHYTHM MACHINE WORLDWIDE VERSUS
2016/12/17(土) 会場:NYスタインウェイ工場 出演:スガダイロー、ジェイソン・モラン

 

日本人音楽家が世界の各大陸に挑むシリーズ〈BOYCOTT RHYTHM MACHINE WORLDWIDE VERSUS〉第一弾がNYスタインウェイ工場で開催!

 大雪のニューヨーク、2016年12月17日。クイーンズにある創業150年以上の歴史をもつNYスタインウェイのピアノ工場、ピアノの側板を精巧に削りあげる木屑舞うこのフロアで今まさに行われようとしているのは、スガダイローとジェイソン・モランの日米ピアニスト対決だ。

 二組の音楽家が、何も決め事なく自由に即興的に音楽を奏であう『BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS』。2006年に始まったこの取り組みに、これまで日本を代表する音楽家が出演してきた。ドキュメンタリーDVDのリリースと三度の公演を経て、足掛け10年に渡る国内での活動に区切りをつけ『BOYCOTT RHYTHM MACHINE WORLDWIDE VERSUS』と題して、日本人音楽家が世界の各大陸に挑んでいくシリーズプロジェクトに生まれ変わる。その第一回が、ジャズを生んだ国アメリカで、ピアノを産み落とすこの場所で、始まろうとしている。

 この公演の一週間前に「日米ジャズ史/それぞれのマイルストーンとその交差」と題して行われた大谷能生原雅明によるトークレクチャーでは、アメリカに本気で乗り込んだジャズミュージシャンとして山下洋輔菊地雅章の名前が挙げられ、その二人のどちらとも異なる「VERSUS」という手法で本場に挑むこの試みと、プレイスタイルの近しいスガとジェイソンが未来に奏でる音楽に、心からの期待が寄せられた。

 降りしきる雪の止んだ夜7時、開演。先攻、スガダイロー。スガの指に触れた鍵盤が猛然と時間と空間を更新し未来を切り拓いていく。刃のように研ぎ澄まされたインプロヴィゼーション。後攻、ジェイソン・モラン。スガとは対照的にこれまでの音楽の多様な歴史を往来し、大地を踏みしめ根を張るかのごとき重みと厚み。なんと驚くほど異なるアプローチの互いのソロに続き、ついに二人が交わるVERSUSが始まった。

 まずはスガが仕掛ける。そのフレーズに対して大きく間合いを取りながらジェイソンが徐々にひたひたと近づいてくる。攻守が目まぐるしく入れ替わりながら、常に緊張状態を保って奏でられる同じ型のスタインウェイ。綱を引きあい場を奪い合う張りつめた時間。一瞬たりとも気の抜けない30分が瞬く間に過ぎ去った。万雷の拍手。アンコールは一転して木のぬくもり溢れるフロアが溶けてしまうかのような極上のエンドロール。

 ジェイソンは、チャールス・ロイドと活動を共にする一方で、コモンと映画音楽を手掛けたり、今年ミネアポリスのアートセンターで初個展を開催、ジャズ批評の雑誌を自ら編集したりもしている。ジャズを起点にしながら活動領域を拡張し続けるアメリカ中、いや世界中から尊敬を集めるアーティストだ。スガは、バークリー音楽大学在籍当時に、ふとラジオから流れてきたジェイソンの旋律の中に、型にはめられたメソッドとしての「ジャズ」ではなく、もっともっと広い「ジャズ」という考え方を見つけたという。

 そんな二人が初めて出会った夜。それは、二人のための夜でもあるが、アメリカのジャズというあまりにも偉大な歴史の大海原にひとりの日本人ジャズピアニストが本気で飛び込んだ歴史的な夜でもあった。それぞれの土地で、自分しか奏でることのできない音楽を創造し鍛錬し研磨してきた二人の重なり合いは、紛れもなく誰も聴いたことのない新たな潮流を生み出した。

 そして、この物語には続きがある。ニューヨーク公演の音源がハイレゾ配信され、映像パッケージもリリース予定。さらには、春にこの二人による日本公演が4月11日東京・草月ホールと4月15日京都・ロームシアターノースホールで行われる。ニューヨークで奏でられ、10,000km以上離れたこの地で大きなうねりとなって目の前に現れるこの二人にしか成し得ない音楽を、絶対に聴き逃さないでほしい。

 


LIVE INFORMATION

スガダイローとJASON MORANと東京と京都
○4/11(火) 18:00 開場/19:00開演
会場:東京・草月ホール
出演:スガダイロー、ジェイソン・モラン(ゲスト:田中泯)

○4/15(土) 17:00 開場/18:00 開演
会場:京都・ロームシアター京都ノースホール
出演:スガダイロー、ジェイソン・モラン(ゲスト:鈴木ヒラク)
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