teto小池がHeksinki Lambda Clubに透けて見た3曲
――では、お待ちかねの選曲コーナーです。まずは、小池さんがヘルシンキの音楽を聴いて思い浮かんだバンド/橋本さんに紹介したいと思った楽曲から聴いていきましょう。
小池「俺はね、今回ヘルシンキがスプリットに収録した3曲に呼応するように選びました。まず1曲目の“King Of The White Chip”はこれ」
橋本「正解ですね(笑)」
小池「“King Of The White Chip”が、ちょっとダウナーでサーフ・ポップかつニューウェイヴな雰囲気の曲だったから、まあドラムスだろうなと」
橋本「ご名答」
小池「“King Of The White Chip”の最後の歌詞〈一緒に歩いてきたわ/一向に思い出せないわ〉というラインがすごく好きで。いつもの薫センスでありつつ、曲の雰囲気とも合わさっていて、最後にオチがつくのがロックっぽいなと」
橋本「ドラムスは僕も大好きで、“King Of The White Chip”は実際に意識していましたね」
――“King Of The White Chip”もドラムスのこの曲も、〈実際に海には行ってないサーフ感〉というので共通しているように思いますね。
小池「あー、そうですね! 家で考えている感じ」
――“King Of The White Chip”は、ヘルシンキが受けてきた海外インディーからのインスピレーションが凝縮された曲だと思いました。〈私たち〉と〈かまいたい〉で踏む韻はちょっとヴァンパイア・ウィークエンドっぽいし。
橋本「あー、そうですね。この曲は特に意味より、言葉のハマり方やリズムを意識しました。これを作ったことで、次にやれることがいろいろと拡がってきた感じがありますね」
――では、小池さんチョイスの2曲目にいきましょう。
橋本「あー、いかにもルックアウト※なポップ・パンク」
※グリーン・デイらを輩出したことで知られるUSカリフォルニアの名門パンク・レーベル。2012年に閉鎖
小池「ヘルシンキの“Boys Will Be Boys”を聴いて、思い浮かんだのがこのバンドとピーチ・ケリー・ポップだったんですよ。でも、“Boys Will Be Boys”の吹っ切れた状態で前に向かっていく感じが、“Get Off My Back”というタイトル※にも重なるし、今回はこっちを選びました」
※ほっといてくれ!という意味
橋本「確かにね。“Boys Will Be Boys”は90年代雑魚パンクへの僕の愛情が詰まっている曲だと思う」
――そして、小池さんがヘルシンキの3曲目“宵山ミラーボール”から思い浮かんだ曲はこちら。
小池 「“宵山ミラーボール”は、サビがすげえチープじゃん? 聴いていて、アニメの主題歌とかに使われていてもおかしくないなと思ったんだよね。80年代に放送されたアニメの古臭い感じと被っている気がした」
橋本「実は、この曲はヘルシンキ結成以前からあった曲なんですよ。僕が大学生のときに作った曲で、その頃ちょうど森見登美彦原作のアニメ『四畳半神話大系』とかを観ていた。だからアニメっぽいと言われたら、まさにそうなんだよね。すごいな」
小池「“宵山ミラーボール”自体はここまでチープじゃないんですけどね。でも、サビで合唱する感じとかが昔のアニメっぽいなって」
Helsinki Lambda Club橋本がこれからのtetoに期待する3曲
――では、続いて橋本さんの選曲にいきましょう。
橋本「僕はこれからのtetoに期待している要素が入った曲を選びました。まずはこれ」
橋本「90年代から活動しているスカ・パンク・バンドですが、スカってのは一度置いといて、勢いやサビでまくし立てるところとかがtetoに近いなと思うし、メロがしっかりしているところも通じていると思うんです。でも、この曲はtetoよりも軽やかじゃないですか? こういう軽いtetoも聴いてみたいなと思って選びました」
小池「オペレーション・アイヴィーをはじめとした、90年代前後のパンクってスカの流れが強いイメージがあるよね? このバンドはがっつり聴きこんでいたわけではなかかったけど、バンド・サウンドの疾走感と駆け足なヴォーカルは非常に好みですね」
――では、橋本さんの2曲目。この選曲はちょっと意外に思いました
小池「へー、意外ですね」
橋本「これは曲が云々というよりは、伝えたいことの熱量が結構近いのかなと思って。僕はこの曲がめちゃくちゃ好きなんですけど」
小池「良い曲だよね」
橋本「ダウナーと言ったらダウナーな曲なんだけど、そのなかでも自分のなかで1つ答えを見つけたというか、そういう吹っ切れ感みたいなものを感じる。轟音のなかに痛みや切なさがありつつ、気持ちがちょっとフワっとしていくような前向きさもあって、そういうtetoも聴いてみたいなと思った。いまのtetoはストレートにぶつけていく感じだと思うけど、それだけじゃなく浮遊感みたいなものも出してくれたら、僕はすごく嬉しいと思う。感動しちゃうな(笑)」
一同「ハハハ(笑)」
橋本「いまとは違うヴェクトルの熱量を観てみたいという気持ちを込めて、この曲を選びました」
――このスプリットに収録された“新しい風”の最後に出てくる弾き語りっぽい箇所はちょっとその雰囲気がありますよね。
小池「あー、あそこに入っているのは、実は“朝焼け”というシークレット・トラックなんですよ」
――そうだったんですね! 切れ目なくはじまるから気付かなかったです。
橋本「tetoはJ-Popの枠にも行けると思うんだよね」
小池「イヤだよー。世の中の人に共感されたくないし、世の中では俺らみたいな音楽じゃなくて、もっと軽やかな曲が聴かれていてほしい(笑)」
――ハハハ(笑)。いよいよ最後は橋本さんの3曲目。
橋本「これはサビのシャウト感がもうtetoだなって。ここここ(動画では50秒頃)」
小池「ハハハ(笑)。この感じを伝えたかった?」
橋本「メロディーも抜群なんだけど、綺麗に歌ったら普通に綺麗な曲になりそうなところで、この歌い方なのが痺れるなーと。そこでtetoに近い気がした。美メロのなかで突発的にシャウトに行くというのもやってみてほしい」
小池「優しくて透き通っているメロディーを歌っていくなかで感情のメーターを振り切った結果、シャウトになるのは理想ですね」
――マフスは90年代オルタナのガールズ・アイコンにあたる1組だと思うんですけど、ホールでもスリーター・キニーでもなくマフスを選ぶあたりが橋本さんらしさだなと。
橋本「あー、そうですねー(笑)。コートニー・ラヴも好きですけど、僕が近いのはマフスですね」
――ポップ・スターでもなくインディーのカリスマでもないという絶妙なラインがヘルシンキっぽい(笑)。さて、7月15日(土)にはスプリットを記念したリリース・パーティーの大阪編が開催されます。特にヘルシンキのお客さんのなかにはこの日がteto初体験という人も多いかもしれないですし、衝撃的な出会いになるんじゃないでしょうか。
橋本「最初はギョッとするかもね」
――今作のリリパ東京編として開催された高円寺UFO CLUBでのツーマンでも、お客さんから〈こんなバンドだと思ってなかった〉みたいなどよめきが起きるのを感じましたよ。
橋本「予定外の衝撃がありますよね。自分が最初にライヴを観たときもそうでしたし」
――最後に、このスプリットを経て、今後どういう活動をしていきたいか、それぞれ目標みたいなものはありますか?
小池「うーん、いまのところはないんですよね。いろんな人に聴いてもらいたいというのはもちろんあるんですけど、さっきも言ったように俺らみたいな音楽がメインストリームに行っちゃうとすれば〈日本、大丈夫か〉と思うし(笑)。ライヴの一瞬一瞬の美しさみたいなものも見逃してほしくないんですけど、いまはそれをちゃんと形にしたいですね」
――橋本さんは?
橋本「デビューして3年くらいの間には、いままでの成功例に寄っていこうとしちゃっていた時期もあったと思うんですけど、そういうところからはもう吹っ切れていますね。今回のスプリットも、やりたいことをやっただけなのに反応も良かったし。僕らの活動スタンスは悪く言えば中途半端で、いろいろなところに行けるんだけれど、〈結局なんなのか〉というのはわかりにくい。そこにはジレンマもあるんですけど、それをやり続けていきたい。僕らにはクールな面もありつつダサイ面もある――そういう立ち位置の人が結果を出せてもいいんじゃないかなと思い続けながら、これからも活動していきたいです」
Live Information
〈Hamsterdam Records 設立記念ライブ “Get Hamstoned…”追加公演〉
2017年7月15日(土)大阪・心斎橋PANGEA
出演:Helsinki Lambda Club、teto
開場/開演:17:45 /18:00
料金:前売り2,500円 (1D別)
e+
ローソンチケット(Lコード:55295)
チケットぴあ(Pコード:333-318)
湯仲間温泉直売所
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