連載

クロダセイイチ×しずくだうみ、菅谷諭杏、Helsinki Lambda Club、くるり……Mikiki編集部員が今週オススメの邦楽曲

【Mikikiの歌謡日!】第87回

クロダセイイチ×しずくだうみ、菅谷諭杏、Helsinki Lambda Club、くるり……Mikiki編集部員が今週オススメの邦楽曲

Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は第87回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyプレイリスト

 


【天野龍太郎】

今週はお休みです

 

【鈴木英之介】

クロダセイイチ×しずくだうみ “夢の淵/罪の淵”

滴る水音の先に姿を現すのは、浮遊感を湛えたエレクトリック・ピアノの音。そしてそのエレピの音をバックに、ゆったりとしたテンポで美しいメロディーを押し広げていく、しずくだうみの歌声。彼女が声を通して紡ぐのは、ネガティヴとポジティヴの間を揺蕩うような、中間色的な詞世界。それは、やはりネガティヴ(陰性)とポジティヴ(陽性)の間で不安な毎日を送る、コロナ禍以降の私たちのモードと同期するように感じられる。2ヴァース目以降はバンド・サウンドに移行することで、幽玄な歌世界にドラマティックさが加わるので、その変化も楽しんでいただきたい。

 

oysm “MACHI”

全国・全世界の人々を〈oyasumi=おやすみ〉に導くため結成されたというバンド、oysm。そのコンセプト通り、この曲では夜の静寂を感じさせるようなリラクシングで美しいインストゥルメンタルが展開されている。ポスト・ロックとジャジー・ヒップホップの中間を行くような演奏に身を委ねていると、なるほどたしかに身も心も解けてくる。サックスとエレクトリック・ギターが交互に主旋律をとるという構成も、異なる声質を持つヴォーカリスト同士がデュエットしているかのようで新鮮だ。

 

有馬和樹 “SILENCE”

おとぎ話のフロントマンによるファースト・ソロ・アルバム『SILENCE 2021』(2021年夏に発売予定)に先駆けて急遽リリースされた、デモ・ヴァージョンの『SILENCE 2020』。その背景には「孤立と鬱に支配された2020年内に楽曲の雰囲気を伝えたい」という本人の強い意向があったようだ。そしてその『SILENCE 2020』の冒頭を飾るのが、この曲である。荒々しいアコースティック・ギターのストロークに乗せ、ぼそぼそと歌う有馬。電子的な装飾は何一つないにもかかわらず、そこにはなぜかそこはかとないサイケデリアが漂っている。

 

【小峯崇嗣】

菅谷諭杏 “Petrichor”

東京を拠点活動するマルチ・プレイヤー、菅谷諭杏の最新シングルをご紹介。透明感のある音色のシンセサイザーに、オートチューンがかけられた淡く切ない歌声で鮮やかなポップ・メロディーを歌い上げる一曲です。次世代J-Popアーティストとして注目されること間違いなしの才能です。彼にはTOWER DOORSからメール・インタビュー〈6つの質問〉に答えてもらっていますので、こちらもぜひ併せて読んでみてください。 

 

斎藤アリーナ “Night Owl”

シンガー・ソングライター、斎藤アリーナの“Night Owl”。浮遊感のあるダークでミニマルなサウンドと、気品あふれる妖艶な歌声によって紡がれる心洗われる一曲。歌詞や曲調によって声色を変えていく彼女の才能に惚れ惚れしてしまいます。〈愛の依存から抜け出そうと、もがく姿を描いた〉とのことで、歌詞にも注目してじっくり聴いてみてください。

 

RYUBEATS “堕天使”

ビートメイキング、作曲をメインに活動するRYUBEATSの最新曲“堕天使”をご紹介。オートチューンを使用した甘美な歌声と、星がはじけるような煌びやかなポップ・サウンドが混ざり合った極上の一曲。80年代のシンセ・ポップに現代的なアプローチをして昇華させた抜群のセンスに注目です。

 

【田中亮太】

Helsinki Lambda Club “Happy Blue Monday”

いよいよ明日! 11月25日(水)リリースのセカンド・アルバム『Eleven plus two / Twelve plus one』からリード・ソングのMVが到着。配信スタート時にも紹介しましたが、ダンス・ビートとアシッド・ベースが大活躍するヘルシンキ流エレクトロ・ポップな1曲になっています。そんな〈セカンド・サマー・オブ・ラヴ〉なサウンドを反映してか、この映像はなかなかのギマリ感。みんなのスマイルがちょっと怖い……。演奏中の手元をクローズアップしているのは、やはり“Perfect Kiss”オマージュでしょうか。バンドの多様な音楽性が色鮮やかに開花したアルバムについては、近日中にインタビューを公開予定。とあるバンドのフロントマンとの対談です!

 

カワサキケイ “瓶の花”

シャムキャッツ主宰のレーベル、TETRAがシンガー・ソングライター、カワサキケイさんのアルバム『ゆらめき』をカセットでリリース。先行販売されていたPOP UP SHOPは終了してしまいましたが、TETRAのONLINE SHOPやその他レコード店でも順次取り扱いされるそうです。冬の朝の張りつめた空気に、かすかな温度を与えてくれるようなアシッド・フォーク。高めのときは優しく刺すようで、低めのときは静かに脅かすようで、という表情を変えるヴォーカルが素敵。

 

Yung Kiss “Plastic Lover”

もう中年な筆者にとって、このMVの「気狂いピエロ」オマージュがイケているのかどうなのかはわからないのですが、彼ら率いるプロジェクト、2021surviveの〈ポスト2020年の世界で祭りをする〉というヴィジョンのゆくすえは見届けたい。そこに自分はいなくていいのかもしれない、とも思うけれど。

 

【酒井優考】

くるり “大阪万博”

先週“益荒男さん”のことを〈変な曲〉と書きましたが、申し訳ありません、さらに変な曲です。こちらはフリージャズのごときインスト曲で(でもクラシックの要素もある気がする)、2018年作『ソングライン』収録曲“Tokyo OP”(正式呼称“東京オリンピック”)と対をなすような、1970年の〈大阪万博〉に着想を得たという楽曲(現に受注生産されるこの曲の12インチシングルのカップリングは“Tokyo OP”のニュー・ミックス)。〈2020年の東京がそうなら、1970年の大阪はこうだ!〉とでも言いたげな、エネルギーに満ちていて、カオスで、激動の楽曲です。たしかに今2020年は別の意味でカオスですが、もっとエネルギーとか情熱とか〈オラオラオラァ!〉って感じが足りないのかもしれないと思います。少なくとも自分は元気をもらいました。

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