連載

【Helsinki Lambda Club橋本薫の『Eleven plus two / Twelve plus one』への道】第四歩 “眠ったふりして”

連続配信リード・シングル全曲解説

【Helsinki Lambda Club橋本薫の『Eleven plus two / Twelve plus one』への道】第四歩 “眠ったふりして”

2014年にデビューしたロック・バンド、Helsinki Lambda Club(以下、ヘルシンキ)。東京を拠点に活動する彼らは、甘酸っぱさの香るメロディー・センスと捻りの効いたバンド・サウンドを武器に、チャーミングなギター・ポップからガレージ・ロック、サイケデリックなダンス・ナンバーまでを世に送り出してきました。Mikikiにも、自身の音源をリリースした際のインタビューに加え、CHAIとの対談髭とHomecomingsとのスティーヴン・マルクマスについての座談会への参加などたびたび登場。音楽への真摯な姿勢と溢れんばかりの愛情が伝わる発言は、読者のみならず編集部員をもノックアウトしております。

そんなヘルシンキが11月25日(水)にセカンド・アルバム『Eleven plus two / Twelve plus one』をリリース。バンドが〈最高傑作〉と自負する同作からは9月以降、4曲がリード・ソングとして発表されています。この〈Helsinki Lambda Club橋本薫の『Eleven plus two / Twelve plus one』への道〉は、フロントマンの橋本薫がリード曲を解説、影響を受けた楽曲や録音のこだわりを明かす短期集中連載。最終回とる今回は、11月4日配信スタートの“眠ったふりして”について書いてくれました。ゆったりとしたテンポとソフトな演奏に、インディーR&Bやベッドルーム・ポップからの影響も伺えるこの曲。バンド屈指のメロウ・チューンは、どういうふうに生まれたのでしょうか? *Mikiki編集部

 


皆さんは眠ったふりをしたこと、されたことはあるだろうか? 電車で隣に座った人が寝落ちして恋人よろしく肩に頭をもたれてきた時、何となく気まずくて自分も寝たふりをしたり。はたまた本当の恋人と口論になり妥協点が見つからないまま世が更け、気まずいまま同じ布団に入るも、そこで口論を続ける気にも終わらせる気にもなれず寝入ったふりをしてやり過ごしたり。でもだいたい眠ったふりって相手にバレてるのよね。

連載第四弾は“眠ったふりして”。この曲も未来盤=ニュー・アルバムに収録される楽曲だが、この曲自体はおよそ8年ほど前の前身バンド時に作った曲で、今回大幅なリメイクを経て復活した運びだ。なぜ未来盤に含まれているかというと、このアルバムの〈未来〉というコンセプトは決して未来的なサウンドという意味ではなく(もちろんその意も含んではいるが)、いまから数年後、数十年後=未来のヘルシンキを僕が見てきて、そこでバンドがやっていた音楽を、この2020年に一足早く鳴らしてしまおうというものなのだ。そして、その未来への旅は僕に、これからバンドが歩んでいく起伏豊かで笑いあり涙ありのストーリーを夢想させた。そこの具体的な部分については後々明かされることにもなると思う。とりあえず言えることは、この曲は、未来のある時点においてヘルシンキが実際に鳴らしていた音である。

 

前回の記事で、〈新作はホワイトアルバムのようなアルバムだ〉と述べたが、この曲は熊谷(太起、ギター)のリアレンジによりヘルシンキの未来のサウンドへと変貌を遂げた。当初はもっとJ-Pop的なサウンドかつ凝った展開だったのだが、メン・アイ・トラスト(Men I Trust)やブラック・プール(Black Pool)を意識し、淡々とした中にエモーションが息づくといった雰囲気に変わった。元々の歌メロが歌謡的なエモさだっただけに、今回のアレンジの中での歌い方には大変苦労した記憶がある。おかげで歌の面でもヘルシンキの新境地に行けたなという思いもある。

それとここだけの話、今回のアレンジで加えられた部分として毎Aメロの最後の熊谷が歌うところがあるのだが、ここのメロディーは先日亡くなったアダム・シュレシンジャー率いるファインテインズ・オブ・ウェイン(Fountains Of Wayne)の“Hat And Feet”の歌い出しのメロディーをオマージュ、拝借した。愛を込めて。

ファインテインズ・オブ・ウェインの99年作『Utopia Parkway』収録曲“Hat And Feet”
 

曲の内容について。元々この曲は山崎ナオコーラ氏の小説及び映画の「人のセックスを笑うな」からインスピレーションを得て、心のすれ違いであったり嫉妬や妄執、人間関係の不安定さを描いた。先も述べたように8年前くらいに書いた歌詞なので〈ケータイを開いた〉という表現が出てくるが、歌というのは歴史やカルチャーの証人であるという観点から敢えてそのままにした。

どこまで説明してしまったら野暮になってしまうのか難しいが、〈君〉にとって靴下を履いて寝ることは無言の意思表示であり、〈僕〉にとってその言葉を使わない振る舞いは、優しさのように思えつつやはり残酷なものである、というのがこの曲の肝かな。そして最後に〈僕〉は〈君〉が履いている靴下を脱がそうとするのだが、その未来やいかに?って感じ。眠ったふりというのは見たくないものに蓋をするというか、結局のところ先延ばし、停滞でしかなくて、前に進むには行動するしかないのだね。たとえどんな未来が待ち受けていようとも。

ヘルシンキのなかでも特に文学的なアプローチを持つこの曲、ぜひ何度も聴いて自分なりに曲の世界を深めていただきたい。

 

『Eleven plus two / Twelve plus one』を読み解くプレイリスト、公開中!
連載に合わせて、更新していきます!

 


RELEASE INFORMATION

Helsinki Lambda Club 『Eleven plus two / Twelve plus one』 Hamsterdam/UKプロジェクト(2020)

リリース日:2020年11月25日(水)
品番:HAMZ-008
価格:CD 3,000円(税抜)/ダウンロード 2,400円 ※単曲250円
仕様:初回仕様あり(10inchジャケット仕様) ※初回仕様が無くなり次第通常盤に切り替わります。
JAN:4514306017298
レーベル:Hamsterdam Records / UK.PROJECT

〈収録曲〉
1. ミツビシ・マキアート
2. Debora
3. それってオーガズム?
4. Good News Is Bad News
5. パーフェクトムーン
6. Shrimp Salad Sandwich
7. Mind The Gap
8. 午時葵
9. IKEA
10. Sabai
11. 眠ったふりして
12. Happy Blue Monday
13. you are my gravity

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