QUEENS OF POP
[ 緊急ワイド ]ポップの淑女たち
メインストリームの女王たちが動きはじめた。さまざまな状況の変化を超えて獲得した表現は、宝石よりも輝いている……
★Pt.1 FERGIE『Double Dutchess』
★Pt.2 KELLY CLARKSON『Meaning Of Life』
★Pt.4 MILEY CYRUS『Younger Now』
P!NK
女帝の堂々たる帰還……トラウマは美しい
グラミー3冠、全世界トータル・アルバム・セールス6000万枚、トータル・シングル・セールス1.3億枚……数字はこのように雄弁だけど、それだけじゃない彼女の魅力を世界はもう知っているはずだ。大胆不敵なポップ・クイーン、ピンクがおよそ5年ぶりにして通算7作目のオリジナル・アルバム『Beautiful Trauma』をリリースした。
5年ぶりとはいえ、もちろん2014年にはダラス・グリーンと組んだデュオ=ユー+ミーとしての初のアルバム『Rose Ave.』(全米4位を記録)もあったわけだし、昨年にはディズニー映画「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」の主題歌“Just Like Fire”が全米TOP10ヒットを記録したのは記憶に新しいだろう。まさに待望久しいと同時に、またしても世がピンクを受け入れる準備は万端といったところなのだ。
そもそもピンクは90年代末~2000年代初頭のヤング・ポップ・シンガー全盛期にややパンキッシュな異端児という立ち位置でデビューしてきている。だからこそなのか、いまとなっては同時代を生き抜いてきたブリトニーやアギレラよりも後進の世代にあたるケイティ・ペリーやマイリー・サイラスといった存在と親和性が感じられるように思うのだ。後付けっぽい言い方をすれば、ポップスターの中にもリアルさを見い出したいというテン年代以降のスター像を、ピンクはあらかじめ先取りしていたと言ってもいいのかもしれない。実際のところ長く人気を誇っている彼女が初めて全米アルバム・チャートで首位を獲得したのはまさに前作『The Truth About Love』が初めてだった。チャートは時の運でもあるが、彼女の曲でも剥き出しの感情や同性への優しさをベースにした楽曲が人気なのもよくわかるし、それが一過性でないことも明らかだ。ある時期からのピンクは、年齢を重ねたことによって姉御肌も板に付いてきたからだろうか、歌の世界と本人のキャラクターがピッタリ一致するようになったと思うし、そんな状況は現在も続いている。
そして何より重要なのは、いつもながらに力の入った作品のクォリティーだろう。リード・シングル“What About Us”は、UKの大御所ヒットメイカーであるスティーヴ・マックがプロデュースを担当し、エド・シーランらに楽曲提供しているジョニー・マックデイド(スノウ・パトロールのメンバー)が共作したエモーショナルな一撃。他にも間違いない制作陣がズラリと並んでいて、問答無用のマックス・マーティン&シェルバック、グレッグ・カースティンのようなこの10年の黄金チームに加え、ファンのジャック・アントノフ、マットマン&ロビン、ジュリア・マイケルズらの腕利きが名を連ねている。ファンからはネイト・ルイスが前作『The Truth About Love』においても格段の成功を収めていたが、同じく前作に登場していたエミネムが今回も馳せ参じ、次なるリード曲の“Revenge”にマイクを吹き込んでいることも大きなトピックに違いない。
とはいえ、そこに偏るわけでないのもピンクだ。私たちはそれだけじゃない彼女の魅力をもう知っている。
ピンクのアルバムを紹介。