彼女たちの失恋レストランに涙は似合わない!
インタヴューでは歌詞の細かい言及を避けていますが、男女の別れを客観的に見つめたのが前作『The Bones Of What You Believe』だとしたら、新作『Every Open Eye』はそれを前向きに乗り越えようという決意が感じられる一枚。
そこで思い出したのがクリスティーナ・ペリーの『Head Or Heart』でした。昼ドラも真っ青なドロドロ系の恋模様を綴った処女作『Lovestrong』から気分一新、エド・シーランとの“Be My Forever”などで〈相手を恨むのではなく、自分を愛そう〉と歌い、彼女は人としても表現者としても一皮剥けることに。
そうした〈私〉を鼓舞する失恋アルバム/曲には名品が多い印象で、威勢の良いパワー・ポップに乗せて〈もう絶対にヨリは戻さない〉と某俳優との関係を絶った“We Are Never Ever Getting Back Together”を含むテイラー・スウィフトの『Red』、表題も明快なカーリー・レイ・ジェプセンのEDMポップ“Tonight I'm Getting Over You”あたりが好例でしょうか。
ほかにも、メソメソするよりも自分のプライドを守ろうとするビヨンセ“Broken-Hearted Girl”や片平里菜“女の子は泣かない”、とりあえず相手をクズ扱いして気持ちスッキリなリリー・アレン“Smile”にピンク“Blow Me(One Last Kiss)”、早々に次の男探しを始めるマドンナ“Living For Love”やアデル“Someone Like You”……と羅列してみたら女性アーティストばかり。
では、男性陣はどうかというと、遊びのつもりがドツボにハマッてひとり相手を思い続けるサム・スミス『In The Lonely Hour』、ロビン・シックによる元妻への懺悔盤『Paula』を筆頭に、未練がましいものが目立ちます。いつまでも過去を引きずる男たちに対し、不幸は好機とばかりに幸せをもぎ取ろうと前進する女たちの、何と逞しいことか!