ジョン・コルトレーンのカルテットのようなトラディショナルなサウンドを目指して
デヴィッド・ボウイ『★』への参加で一躍注目を集め、ブラッド・メルドーとのデュオ=メリアナでも快作をリリースするなど、新世代ジャズ・ドラマーとして注目を集めているマーク・ジュリアナ。エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーからの影響を公言し、ビート・ミュージックというプロジェクトでは相対性理論の最新作にも影響を与えた彼だが、最新作はアコースティック・ジャズに挑むプロジェクトのセカンド・アルバム『Jersey』。ジェイソン・リグビー(ts)、ファビアン・アルマザン(p)、クリス・モリッシー(b)を迎え、60年代のハード・バップや新主流派をテクノ以降の感覚でアップデートしたような演奏を聴かせる。妻であるグレッチェン・パーラトのライヴのため来日した彼に話を聞いた。
「このカルテットではトラディショナルなサウンドを表現したかった。その意味で、サックス、ベース、ピアノ、ドラムという編成がしっくりきたんだ。ジョン・コルトレーンのカルテットが好きだったというのもあるしね。新作ではピアノがシャイ・マエストロからファビアン・アルマザンに代わっているけど、ここ2年くらいはツアーでもファビアンが演奏していたから、この4人には4人なりのインターアクションがある。新作で変えようと思ったところ? ファーストは2、3回リハーサルして録音っていう感じだったんだけど、今回はバンドの成長ぶりを記録しようという気持ちが強かったので、収録曲は録音の前にツアーで何度も演奏して、その成果を形にした」
昨今、ジャズ・ドラマーが脇役の領域を超えてバンドの推進力となっている例を数多く見かける。クリス・デイヴを筆頭に、エリック・ハーランド、マーカス・ギルモア、ケンドリック・スコットなどが活躍しているが、彼らの台頭の原因をマークはどう見ているのだろう。
「いちばん重要なのはよいミュージシャンというのはすべからく音楽のために演奏する、ということだね。今名前が挙がったドラマーは何よりもまず第一にミュージシャンとして素晴らしい。それがたまたまドラマーだった、ということだと思う。あとは、彼らの置かれた音楽的環境が、能力を発揮させるように機能したという幸福な状況があったと思う。それは今に限ったことではなく、例えば、ジョン・コルトレーンとエルヴィン・ジョーンズが出会った時も、トニー・ウィリアムスがマイルスのクインテットに参加したことも、音楽的に豊かな表現をするのに適したことだった。その意味ではクリス・デイヴやエリック・ハーランドもそういう場所にいるんだと思うよ」