PhotoBy Hiroyuki Seo

「m_unitこそ、私の最も演奏したい音楽を創造できるホーム・グラウンド」

 2月に、オランダのメトロポール・オーケストラ・ビッグバンドを指揮して、昨年生誕100年を迎えたセロニアス・モンク(p)をラージ・アンサンブルに昇華した『ザ・モンク:ライヴ・アット・ビムハウス』をリリースした挾間美帆。今年は、春先からアメリカ、日本だけでなくヨーロッパでの活動も充実させている挾間だが、「私のホーム・グラウンドで、最も演奏したい音楽を創造できるグループ」と語る結成6年を迎えたm_unitのニュー・アルバムを8月末に録音、先ごろ『ダンサー・イン・ノーホエア』が、リリースされた。

挾間美帆 ダンサー・イン・ノーホエア Verve/ユニバーサル(2018)

 前作『タイム・リヴァー』発表以降、m_unitはニューヨークでのライヴ活動が活発化、挾間の音楽観を深く理解するメンバーが新たに起用され、彼らと観客を前にプレイして熟成させてきたオリジナルが、アルバムの多くを占めている。ホーン・セクションには、挾間のデビュー作『ジャーニー・トゥー・ジャーニー』でゲストとしてフィーチャーされたスティーヴ・ウィルソン(as,ss,fl)が起用された。ここ数年のm_unitのギグのハイ・ノートを鳴らすジョナサン・パウエル(tp)と、挾間の長年の盟友、庵原良司(ts,ss,fl)とともに、アンサンブルとインプロヴィゼーションのコアを担っている。ストリングス・セクションもライヴのレギュラー・メンバーで固められ、ソロとハーモニーで、さらなるしなやかさをもたらした。

 挾間は、毎作アレンジから起用を想定した2人のスペシャル・ゲストと、趣向を凝らしたカヴァーを1曲セレクトしている。マリア・シュナイダー(arr)のギター・アレンジにインスパイアされた《Somnanbulant》ではアフリカのベナン出身のギタリスト、リオネール・ルエケが参加。あえてエスニック色を排した鳴きのギターで、m_unitのオルガニック・サウンドのカウンター・ポイントとして強い存在感を放った。タイトル曲では、ニーボディのグルーヴ・エンジン、ネイト・ウッド(ds)が、m_unitを別世界へと加速させた。また作編曲を進める過程でどうしても必要となったサウンドに、ヴォイスのカヴィータ・シャーと、ジェイソン・リグビー(ts,cl)を起用、新たな色彩を加える。挾間が尊敬するアメリカを代表する作曲家ジョン・ウィリアムスの《Olympic Fanfare and Theme》は、見事な換骨奪胎で新たな魅力を輝かせた。

 来年2月6日にはブルーノート東京で、リリース記念ライヴが催かれる。2年ぶりの日本のステージで、進化を遂げた第二期m_unitがヴェールを脱ぎ、その全貌が明らかになる。

 


LIVE INFORMATION

挾間美帆 m_unit “ダンサー・イン・ノーホエア” リリース記念ライヴ
○2/6(水)17:30開場/18:30開演 20:20開場/21:00開演
【出演】挾間美帆(cond)土井徳浩(as)庵原良司(ts)竹村直哉(bs)田中充(tp)林育宏(fhr)金子飛鳥/沖増菜摘(vn)吉田篤貴(va)島津由美(vc)香取良彦(vib)佐藤浩一(p)サム・アニング(b)ジェイク・ゴールドバス(ds)
会場:ブルーノート東京
www.bluenote.co.jp/