Photo by Alasdair McLellan

UKインディー・シーンの流れをガラリと変えたThe xxの功績

 今年1月にリリースしたアルバム『I See You』が全英チャート1位/全米2位を記録し、US最大級のフェス〈コーチェラ〉においてはトリ前を務めてレディオヘッドにバトンを渡し、日本ではBEAMSとのコラボ・アイテムを即ソールドアウトさせるなど、何かと話題の絶えないロンドンのトリオ、The xx。UKを代表するバンドとして世界を股にかける彼らが、いかに時代の潮流とフィットしながら進化を遂げてきたのか? その軌跡を振り返ってみよう。

 The xxがデビューを飾った2009年はグリズリー・ベアやヴァンパイア・ウィークエンドらNYインディー勢が猛威を振るう一方で、UKロック・シーンはオアシスの解散を見届けるように氷河期へ突入。と同時に、クラブ界隈ではブリアルの名盤『Untrue』(2007年)あたりを境にダブステップが新たなステージに上がり、いわゆる〈ポスト・ダブステップ〉な動きが少しずつ見えはじめた時期だ。グループの頭脳であるジェイミーxx(キーボード/プログラミング)もまた、10代の頃からダブステップにハマっていたそうで、ファースト・アルバム『xx』にはまぎれもなく当時のロンドンの冷めた空気が吹き込まれている。いま振り返ると、ロック・フォーマットでダブステップを採り入れた最初期の作品のひとつが『xx』だったように思うのだが、どうだろうか。

 そんな時代の転換点に届けられ、マーキュリー・プライズも受賞している同作の衝撃はとにかく大きかった。極限まで装飾を削ぎ落としたサウンド、とりわけ抑制の効いたビートは〈引き算の美学〉と表現するに相応しい。アルバムを聴くたびに周りの景色がガラッと変わるのを感じ、ゾクゾクしたものである。

 もちろん彼らの魅力は先鋭性だけではない。普遍的な愛を求めるリリックと、昼と夜が溶け合っていくように親密な絡みを見せる男女ツイン・ヴォーカルも、リスナーを虜にする大切な要素。余談だが、フロントに立つロミー・マドリー・クロフト(ヴォーカル/ギター)とオリヴァー・シム(ヴォーカル/ベース)は、デビュー後すぐに同性愛者である旨をカミングアウトし、以来、2人はセクシャル・マイノリティーの代弁者としてある種のカリスマ的な見られ方をしていることも追記しておこう。

 続く2012年の2作目『Coexist』では、UKガラージやアンビエントR&B風のトラックと、前作以上にメランコリックな歌詞とが絶妙に融合。ディスクロージャーやジェシー・ウェアが初めてシングル・ヒットを飛ばした年に、3人は持ち前の嗅覚の鋭さでもって〈2枚目のジンクス〉を見事に打ち砕いたのである。この頃からロンドン・グラマーやドーター(共に女1男2のトリオ編成!)を筆頭に、The xxに直接的な影響を受けたアーティストの活躍が目立ちはじめ、音楽メディアには〈ポストThe xx〉の文言が躍るようになっていった。

 『Coexist』のツアーに区切りがついた2014年、バンドはしばらく充電期間に入る。そして翌年にジェイミーは外部仕事の傍らでファースト・ソロ・アルバム『In Colour』を発表。色彩豊かなジャケット通り、従来のモノクロからカラーの世界にパッと視界が広がるようなサウンドスケープを展開し、そのモードは本隊の最新作『I See You』にも引き継がれていく。わかりやすいサンプリングを避けてきたThe xxが、リード・トラック“On Hold”でホール&オーツ“Can’t Go For That (No Can Do)”をそのまま引用したことからも窺えるように、彼らは同作でいわゆる〈ポップス〉に接近してみせたのだ。

 インディー・シーンで確固たる地位を築いたThe xxが、自分たちの音楽をより多くの人に届けようと狙ったのか、それとも単にそういう気分だったのか――『I See You』での大胆なイメチェンの理由はわかりかねるが、これまでよりも格段に開けた現在のThe xxサウンドが大ハコ映えすることは確か。2018年2月に予定されている過去最大規模の単独ジャパン・ツアーも期待できそうだ。

 


LIVE INFORMATION
大阪:2018年2月9日(金) ZEPP OSAKA BAYSIDE
開場18:00 開演19:00
前売:¥9,000(1Fスタンディング/2F指定席、D別)
TEL:06-6535-5569 (SMASH WEST) 

東京:2018年2月11日(日)幕張メッセ イベントホール
開場17:00 開演18:00
前売:¥9,000(アリーナスタンディング/スタンド指定席)
TEL:03-3444-6751(SMASH) 
TEL:☎03-5720-9999(HOT STUFF)

●チケット
大阪:ぴあ(P:347-656)、e+(pre order:11/9-12)、ローソン(L:53777)、iFlyer
東京:ぴあ(P:346-934)、e+(pre order:11/9-12)、ローソン(L:75099)、iFlyer

企画/制作:SMASH/HOT STUFF
協力:BEATINK
総合問合せ:SMASH03-3444-6751 smash-jpn.com

 

★来日記念盤『Remixes』が2018年1月19日(金)にリリース!

THE XX 『Remixes』 Young Turks/BEAT(2018)

 

関連盤を紹介。

 

XXをカヴァー/サンプリングした曲が聴ける作品。