世界の音楽家と共に雑多なエネルギーを放つ劇伴集!

 劇中のあらゆるシーンに合わせて音楽を作る性質上、サントラにさまざまな曲調の楽曲が収録されることは珍しくないが、それにしてもここで紹介するTVアニメ「血界戦線 & BEYOND」のサントラには実に多彩な音が詰め込まれている。内藤泰弘によるアクション漫画「血界戦線」を原作とするこのアニメは、異世界と交差することで人類と異形の者が共存する街と化したNYを舞台に、同地の均衡を保つために活動する特殊能力者たちの波乱に満ちた日常を描く、1話完結形式のオムニバス・ストーリーを展開してきた。

岩崎太整 『血界戦線 & BEYOND』 TOHO animation(2017)

 劇伴を手掛ける岩崎太整は映画「モテキ」など実写作品の仕事で知られる音楽家で、2015年に制作された「血界戦線」の第1期シリーズで初めてアニメ作品に関与。同作のスコアではビッグバンド・ジャズの要素を前面に打ち出し、さらにYuki Kanesaka(monolog)やBIGYUKIといったヒップホップ~ジャズ畑の人材を起用して歌モノを含むスタイリッシュな楽曲も多数制作。アニメ・ファン以外の層からも注目を集めた。

 そして今回、彼はNY、ボストン、パリ、モロッコほか世界のさまざまな都市に渡って各地のミュージシャンとレコーディングを敢行。その結果、異形の街と化したNYのサウンドトラックに相応しい、多国籍感に溢れるものとなった。先述のYuki Kanesaka(monolog)が参画するボストンのヒップホップ・ユニット=ハイブリッド・ソーツや、スチャダラパーのBoseによるラップ曲があれば、ビラルが絹のような歌声を聴かせるネオ・ソウル調のナンバーがあったり、あるいは黒田卓也バンドによるジャム・セッションや、NYのバンダ・マグダによるブラジリアン・ジャズなんかも登場する。

 韓国のOH MY GIRLによる3か国語(英語/日本語/韓国語)を混ぜた讃美歌も清らかなハーモニーが絶品だし、日本人シンガーのSariが歌うジャズ・ヴォーカル曲も音から悲哀が零れ落ちるような逸曲だ(この曲は原作に登場する〈異界のエラ・フィッツジェラルドが歌う曲〉を元にしている)。同じアニメのサントラで例えるならば、菅野よう子の「カウボーイビバップ」あたりに通じるシャープなカッコ良さを持ちつつ、より雑多でエネルギッシュな魅力を湛えた本作。ひとまず、ここで挙げたアーティスト名に1組でもピンときた人は聴いてみてほしい。 *北野

関連盤を紹介。

 

©竹内友・講談社/小笠原ダンススタジオ

社交ダンス界が舞台のスポ根&青春群像劇「ボールルームへようこそ」のキャラソン&劇伴集!

 竹内友による社交ダンスをテーマとした漫画「ボールルームへようこそ」。今年7月にTVアニメ化され、12月までの2クールに渡って放送された同作の関連2作品が到着した。

VARIOUS ARTISTS 『TVアニメ『ボールルームへようこそ』キャラクターソング集』 トイズファクトリー(2017)

 (初回登場時は)中学3年生の主人公、富士田多々良(CV:土屋神葉)と同い年のライヴァルである兵藤清春(CV:岡本信彦)、多々良の最初のパートナーである花岡雫(CV:佐倉綾音)、一時的にカップルを組む1学年下の赤城真子(CV:諸星すみれ)がジャケに登場する『TVアニメ『ボールルームへようこそ』キャラクターソング集』には、Q-MHzの作詞/作曲による各々の個性に沿った4曲とそのインスト版を収録。晴れやかなワルツ調の“Imaginary dancing”に乗せて競技ダンスへの強い思いを吐露する多々良に、タンゴ風味を隠し味にした滝善光(9mm Parabellum Bullet)のギターが暴れる熱血ロック“Shouted Step”では歌によってエネルギッシュなステップを踏む兵藤。そんな男子組に対し、女子の2人は清潔感溢れる往年のアイドル・ソングの如き“Dance with my…”、ガーリーな微炭酸ポップ“Flower’s monologue”でダンスを相手にときめきにも似た胸の高鳴りを伝える。

 

林ゆうき 『ボールルームへようこそ』 トイズファクトリー(2017)

 また、林ゆうきが担当した『TVアニメ『ボールルームへようこそ』オリジナルサウンドトラック』のほうは、オーケストラルな意匠のナンバーからスロウ・ファンクやジャズ調のバンド・サウンドなどボーダレスな音で場面に叙情性を与えるトラック群と(“ホールの勝利者”なんて劇伴だけで泣きそう)、オリジナル&スタンダードを交えた劇中の競技曲を2枚組にパッケージ。キャラソン集とサントラ共に、試練を乗り越えて人間的にも競技者としても成長するスポ根もの、青春ものの側面も持つ物語自体の美点が浮かび上がる内容になっている。 *土田

 

©けものフレンズプロジェクト

「けものフレンズ」好きであればあるほどニヤける2作品!

 独特のユルさと巧妙な仕掛けを施した内容で人気を博し、2017年を代表するアニメ作品となった「けものフレンズ」。そのキャスト勢によるユニット、どうぶつビスケッツ × PPP(ペパプ)が歌うオープニング主題歌“ようこそジャパリパークへ”もヒットし、彼女たちがアニメの枠を超えてさまざまな歌番組に出演したのも記憶に新しい。そんななかで早くも届けられたのが、どうぶつビスケッツ × PPPの2枚目のシングル“フレ!フレ!ベストフレンズ”と、キャラソン集の第2弾『Japari Cafe2』だ。

どうぶつビスケッツ × PPP 『フレ!フレ!ベストフレンズ』 ビクター(2017)

 まず“フレ!フレ!ベストフレンズ”は、前作に続き大石昌良が提供したピースフルな友達ソング。メンバーみんなでワイワイと掛け合いながら、手を取り合って冒険に出航する無邪気な振る舞いと歌声は、本編の内容と同様に疲れた心を癒すピュアな優しさに溢れている。じんが書き下ろしたファニー&サニーなどうぶつビスケッツ曲“ファンファン!メロディ♪”、PPPが歌うライヴ映えしそうな“ファーストペンギン”もたーのしー!

 

けものフレンズ 『Japari Cafe2』 ビクター(2017)

 一方の『Japari Cafe2』は、かばん(CV:内田彩)とサーバル(CV:尾崎由香)の主役コンビによる眩しい陽だまりロック“なかよしマーチ”でスタート。あわてんぼうのフェネック(CV:本宮佳奈)とのんびり屋のアライグマ(CV:小野早稀)のデコボコがカチッとハマッた激萌えなテクノ・ポップ“マイペースちぇいさー”、コツメカワウソ(CV:近藤玲奈)の無垢な陽気さをsasakure.UKがメルヘンチックに調理した“たーのしーたーのしーたーのしー!”など、より各キャラの特徴に寄り添った作風になっており、「けものフレンズ」好きであればあるほどニヤニヤが止まらなくなることだろう。ボーナス・トラックとして、40mPの人気ボカロ曲として知られるマーチング・ポップ“ドレミファロンド”をどうぶつビスケッツ+かばん × PPPが歌唱するナイス選曲のカヴァーも収録。大人も子どもも楽しめる2作品になってるのだ! *北野

 

2017年にリリースされた「けものフレンズ」のドラマ&キャラソン集『Japari Cafe』(ビクター)

 

今月の素敵音楽 from2Dao and more!

TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND 『魔法陣グルグル』 ランティス(2017)

今年3度目のアニメ化が実現したギャグ・ファンタジー作品のサントラ。往年のRPG風の作品世界にマッチしたピコピコ感のある楽曲はもとより、金管、木管、ストリングスの音もアナログ・シンセで構築したというこだわりと追求欲は感嘆に値するもの。本人たちが歌唱した笑撃の挿入歌“伝・説SILVER LOVE”や1クール目のエンディング曲“Round&Round&Round”の浮遊感マシマシなリミックスも収録! *北野

 

Saint Aqours Snow 『Awaken the power』 ランティス(2017)

「ラブライブ! サンシャイン!!」第9話で興奮を生んだAqoursとライヴァル・ユニットのSaint Snowによるコラボ曲が音源化。11人のパワー漲るキラキラ・ロックの表題曲はもちろん、Saint Snow単独のカップリング曲もゴシックなラウド路線でゾクゾクするカッコ良さ! 元さくら学院の佐藤日向と元BOYSTYLEの田野アサミが演じてるのもポイント高いです。 *北野

 

大原ゆい子 『煌めく浜辺』 TOHO animation(2017)

ゆったりと昂揚する鈴木慶一プロデュースの表題曲は、擬人化された宝石たちが活躍する「宝石の国」の主題歌らしく、透明度の高いファンタジックな一曲。本人が作詞/作曲した〈アーティスト盤〉の他4曲も含め、アップからスロウまで丁寧に言葉を紡ぐ柔和な歌声は、どこか安堵感を覚えるもの。穏やかにスウィングする“イエスかノーか半分か”の少し気怠げな歌唱も良い。 *土田

 

YURiKA 『鏡面の波』 TOHO animation(2017)

「宝石の国」のオープニング曲“鏡面の波”はハイスイノナサの照井順政によるプロデュースで、徳澤青弦のチェロをアクセントにした変則的なアンサンブルも凄いが、そのなかを自在に泳ぐ繊細ながらも凜とした歌唱が印象的だ。やはり照井製の疾走ロック“Dive into the colors”に加え、2形態のうち〈アーティスト盤〉には柔軟な歌声を堪能できる5曲を収録。 *土田

 

Mia REGINA 『YES or NOstalgic!!!』 ランティス(2017)

ディアステージ発の3人組アニソン・ユニットによる新作ミニ・アルバムは、Arte RefactとMONACAのクリエイターが分け合う形で楽曲を提供。このところ顕著だった激情ロック系は抑え目に、多彩な曲調で3声の魅力を打ち出している。特にアバンチュール気分のファンキー・ロック“Ms.Rからの新着メール”がアクロバティックなコード展開も込みで最高! *北野

 

ラップ巧者がリリックを提供! 男性声優 × MCバトルなコンテンツから濃厚なシングル×2!

シンジュク・ディビジョン 麻天狼 『麻天狼 -音韻臨床-』 EVIL LINE(2017)

シブヤ・ディビジョン Fling Posse 『Fling Posse -F.P.S.M-』 EVIL LINE(2017)

 男性声優演じるキャラたちがエリア別のチーム対抗でラップ対決する二次元コンテンツ〈ヒプノシスマイク〉。すでに三浦康嗣(□□□)やサイプレス上野らの楽曲提供した作品が話題となっているが、新たな2枚のシングルも熱い! まずシンジュク麻天狼の『麻天狼 -音韻臨床-』では、ヴェテランの速水奨が魅惑のバリトンで熱く淡々とGADORO作詞のラップを聴かせ、木島隆一は藤森慎吾(オリエンタルラジオ)が書いたチャラいリリックでホスト・キャラを快演。一方、シブヤFling Posseの『Fling Posse -F.P.S.M-』では白井悠介がCHI-MEYらによる煌びやかなトラックをポップに乗りこなし、斉藤壮馬がAlaska Jamの森心言による虚言だらけのラップで聴き手を煙に巻く。各々のラップの板の付き方に〈声のプロってスゲエ!〉と感心する2作品だ。 *北野

 

質の高いオルタナティヴ・ロックで視聴者を魅了した片恋作品の楽曲群がアルバム・サイズに!

in NO hurry to shout;,SILENT BLACK KITTY 『ALICE -SONGS OF THE ANONYMOUS NOISE-』 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント(2017)

 今年4月より放送されたバンド活動とすれ違いの恋心が交錯する高校生たちの片恋ストーリー「覆面系ノイズ」。その劇中バンドであるin NO hurry to shout;とSILENT BLACK KITTYの楽曲をまとめた『ALICE ~SONGS OF THE ANONYMOUS NOISE~』がとにかくスゴい! 主にNARASAKIが手掛けている変則チューニングを駆使した主題歌&挿入歌の破壊力は言わずもがな、ニノ(CV:早見沙織)の力の抜けた歌声と軽快なリズムがヴァセリンズを思わせる“ユースフルデイズ”、聴き手をデイドリーム・ネイションへと誘う“ドリーマー”といった新曲も既発曲に劣らずオルタナ・ロックの美学を感じさせる名品ばかり。さらに初回盤付属の特典CDにはNARASAKIやWATCHMAN(元MELT-BANANA!)らの激情迸る演奏に早見と深桜役の高垣彩陽が渾身の歌をぶつけた凄まじい熱量のライヴ音源を収録。これがハスカー・ドゥ『Land Speed Record』級の衝撃なのでマジで聴いて! *北野

 

人気バンドの面々が楽曲提供! 男性声優 × V系プロジェクトから対照的な色のシングル × 2!

DRINK ME 『The New World』 EXIT TUNES(2017)

 〈男性声優 × ヴィジュアル系〉というコンセプトの元、ポップなカラーを持つDRINK MEとダークなテイストのMEDICODEという2バンドが競い合う二次元プロジェクト〈FlyME project〉。初シングルの楽曲制作に摩天楼オペラの彩雨を迎えた前者、Aiji(LM.C)と咲人(NIGHTMARE)が担った後者が、新作を同時にリリースした。まず、A9のヒロトが2曲を書き下ろしたDRINK MEは爽快なドラマティック・チューン“The New World”と挑発的なヘヴィー・ロック“EAT EAT EAT”で嵐太朗(CVは山下大輝)が男前な歌唱を披露。

 

MEDICODE 『GABBY』 EXIT TUNES(2017)

 一方のMEDICODEは佳衣(DIAURA)が手掛けた電子音交じりの“GABBY”とストリングス風のシンセを引き連れた“ROSA”といったメタル・マナーの2曲に翳(CVは別掲のラップ・プロジェクトにも参加の斉藤壮馬)が狂おしいエモーションを注入。V系好きはぜひお試しを! どちらも高品質ぶりに驚きますよ。 *土田