世界の音楽家と共に雑多なエネルギーを放つ劇伴集!
劇中のあらゆるシーンに合わせて音楽を作る性質上、サントラにさまざまな曲調の楽曲が収録されることは珍しくないが、それにしてもここで紹介するTVアニメ「血界戦線 & BEYOND」のサントラには実に多彩な音が詰め込まれている。内藤泰弘によるアクション漫画「血界戦線」を原作とするこのアニメは、異世界と交差することで人類と異形の者が共存する街と化したNYを舞台に、同地の均衡を保つために活動する特殊能力者たちの波乱に満ちた日常を描く、1話完結形式のオムニバス・ストーリーを展開してきた。
劇伴を手掛ける岩崎太整は映画「モテキ」など実写作品の仕事で知られる音楽家で、2015年に制作された「血界戦線」の第1期シリーズで初めてアニメ作品に関与。同作のスコアではビッグバンド・ジャズの要素を前面に打ち出し、さらにYuki Kanesaka(monolog)やBIGYUKIといったヒップホップ~ジャズ畑の人材を起用して歌モノを含むスタイリッシュな楽曲も多数制作。アニメ・ファン以外の層からも注目を集めた。
そして今回、彼はNY、ボストン、パリ、モロッコほか世界のさまざまな都市に渡って各地のミュージシャンとレコーディングを敢行。その結果、異形の街と化したNYのサウンドトラックに相応しい、多国籍感に溢れるものとなった。先述のYuki Kanesaka(monolog)が参画するボストンのヒップホップ・ユニット=ハイブリッド・ソーツや、スチャダラパーのBoseによるラップ曲があれば、ビラルが絹のような歌声を聴かせるネオ・ソウル調のナンバーがあったり、あるいは黒田卓也バンドによるジャム・セッションや、NYのバンダ・マグダによるブラジリアン・ジャズなんかも登場する。
韓国のOH MY GIRLによる3か国語(英語/日本語/韓国語)を混ぜた讃美歌も清らかなハーモニーが絶品だし、日本人シンガーのSariが歌うジャズ・ヴォーカル曲も音から悲哀が零れ落ちるような逸曲だ(この曲は原作に登場する〈異界のエラ・フィッツジェラルドが歌う曲〉を元にしている)。同じアニメのサントラで例えるならば、菅野よう子の「カウボーイビバップ」あたりに通じるシャープなカッコ良さを持ちつつ、より雑多でエネルギッシュな魅力を湛えた本作。ひとまず、ここで挙げたアーティスト名に1組でもピンときた人は聴いてみてほしい。 *北野
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