ブレインフィーダーに流れ込んで世界に広がるロウでオルタナティヴなハウスの新潮流!

 一昨年のEP『You'll Understand』を筆頭にロブスター・テルミンやR&S傘下マジック・ワイアーに残した諸作の持つ魔力でアンダーグラウンドの支持を得てきた、ロス・フロム・フレンズことフェリックス・クラリー・ウェザーオール。何かと話題の南ロンドン出身というバイアスがかかったせいで魅力的に映るわけでもなく、ヒップホップ風のサンプリング使い、ヴェイパーウェイヴに通じるどこか懐かしいメロディーや浮遊感、そして肉感的に迫るビートが一体となった注目に値するサウンドはあまりにもユニークで、かのフライング・ロータスも虜にした。

 「2、3年前に僕の音楽が好きだとツイートしてくれたんだ。とんでもない褒め言葉だよ! エレクトロ・ミュージックを作っている多くの人たちにとって、彼はまさしくアイドルなんだからね」。

 この個性を育んだのは、90年代にサウンドシステムを積んだバスに乗り、ヨーロッパ各地でパーティーを行ってきた父親と、そこに同行していた母親に他ならない。

 「僕は父がかけていた音楽を聴きながら育ったんだ。80年代のダンス・ミュージック(ハイエナジー、イタロ・ハウスなど)がメインだったけど、父親が長旅用に作った〈ギャングスタ〉のCDがいつも車の中にあって、いつもそれを流してくれってお願いしていた。成長と共に流行っていた最新のダンス・ミュージック——ブレイクス、2000年代のエレクトロ、ダブステップも聴いてきたよ」。

ROSS FROM FRIENDS Family Portrait Brainfeeder/BEAT(2018)

 両親の自由な気風も受け継いだフェリックスは、その後、インディー・ロックとニュー・レイヴを好み、グリッチやトリップホップも掘り起こしたり、ジェイムズ・ブレイクやマウント・キンビー的なサウンドにもチャレンジしていたそう。こうして興味の赴くままに吸収した成果を形にしたのが「始めから終わりまで個人的なテーマに取り組んだ作品」というブレインフィーダーでのファースト・アルバム『Family Portrait』である。

 「ライティングにすごく集中した。18か月もの間、毎日20時間かけて、このアルバムで自分が何をしたいと思っているのか導き出そうとしていた」という苦闘の末に完成した本作は、ダンスフロアで躍動する強度がある一方で、ベッドルーム的な箱庭感やインディー・ロックのヴァイブ、ヒップホップ的なプロダクションなどさまざまな要素の集合体だ。オルタナティヴではあるけれど、まぎれもないハウス・アルバムとなっており、狂騒に包まれた〈SONICMANIA〉の会場がいまから目に浮かぶ。