トータスやシュリンプ・ボートの面々を擁するシカゴ音響派/ポスト・ロックの代表的なバンド、シー・アンド・ケイクが6年ぶりにBillboard Liveへと登場。11月5日(月)にBillboard Live OSAKA、11月7日(水)にBillboard Live TOKYOに出演する。

ラウンジーでエキゾティックなポップ・サウンドで人気を博したカクテルズのアーチャー・プルウィット。多様な音楽性をキュートなアート・ロックに昇華したシュリンプ・ボートのサム・プレコップとエリック・クラリッジ。そして、ジャズやエレクトロニカを端正なアンサンブルに採り込み、〈ポスト・ロック〉を牽引する存在として名高いトータスのジョン・マッケンタイア。もともと80年代からシカゴで活動してきた彼ら4人によって、シー・アンド・ケイクは結成された。ほどなく初作『The Sea And Cake』を94年に発表。アフロ・カリビアン的なリズムを参照にしつつも肉体性は希薄という、低体温を貫いたソフト・ポップがUSインディー・リスナーを中心に支持を集めた。

『The Sea And Cake』収録曲“Flat Lay The Water”
 

その後は『Nassu』、『The Biz』(共に95年)と精力的に作品をリリース。そんな彼らにとって転機となったのは、音楽編集用のインターフェイス〈Pro Tools〉の発展と、それと並行して起こったポスト・ロックの流行だろう。なかでもジョン・マッケンタイア率いるトータスが98年にリリースした『TNT』は、ポップ音楽史においてPro Toolsを全面的に導入した初期の作品として、後続に大きな影響を与えた。録音物をすべて素材に代え、思うがままに編集できる。加えて既存のスタジオを使わなくても、自宅(のベッドルーム)で録音できるという環境の変化は、多くの音楽家たちに新たな可能性を切り拓いたのだ。話は脱線するが、小山田圭吾もそのひとりで、Corneliusの『FANTASMA』(97年)、さらに『POINT』(2001年)へといたる発展は、Pro Toolsの存在ぬきにはなしえなかったと言っても過言ではない。

閑話休題。ジム・オルーク、シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ……先のトータスも含めてシカゴ界隈の先鋭的な音楽家が〈シカゴ音響派〉として注目されるなか、シー・アンド・ケイクもスタジオワークのさらなる洗練へと向かった。97年作『The Fawn』、2000年作『Oui』、2003年作『One Bedroom』の3作は、細部まで計算されつくした音作りと、洒脱なアレンジを融合させた、〈ポスト・ロック時代のソフト・ロック〉とでも言いたい名品。時代の潮流も味方に、バンドは第一の黄金期を迎えた。

『Oui』収録曲“Midtown”
 

以降も、躍動感に溢れる『Everybody』(2007年)、軽やかで風通しの良い『Runner』(2012年)など、良質な作品をコンスタントにリリース。今年の5月には約6年ぶりとなるアルバム『Any Day』を発表し、同作でも色褪せることのないポップ・センスがいかんなく発揮されていた。

残念なことに最新作のタイミングで、エリック・クラリッジ手根管症候群により脱退したことが発表されたが、春には大規模なUS/EUツアーに出ているなどバンドのコンディションは上々。エリックの後釜を埋めるベーシストもトータスのダグラス・マッコームズという気心の知れた仲間ゆえ、絶妙なアンサンブルを見せてくれるはずだ。秋の夜長のBillboard Live、当代髄一の洒落たポップソングを味わうには、絶好のロケーションと言えよう。

 


LIVE INFORMATION
シー・アンド・ケイク
2018年11月5日(月)Billboard Live OSAKA
1stステージ:開場17:30/開演19:00
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
サービスエリア 7,000円/カジュアルエリア 6,000円
★詳細はこちら

2017年11月7日(水)Billboard Live TOKYO
1stステージ:開場17:30/開演19:00
2ndステージ:開場20:45/開演21:30
サービスエリア 7,000円/カジュアルエリア 6,000円
★詳細はこちら

■メンバー
サム・プレコップ(ヴォーカル/ギター)
アーチャー・プレウィット(ギター/ヴォーカル)
ダグラス・マッコームズ(ベース)
ジョン・マッケンタイア(ドラムス)