今日は、個人的にとても好きなんですけど日本での知名度があまり高くなさそうな(失礼!)リード楽器奏者、マチュー・ドナリエをご紹介したいと思います。マチューはフランス人で、彼の演奏を最初に聴いたのはベーシスト、ステファン・ケレッキがリーダーのサックス・トリオ作『Focus Danse』でした。端正で知的なテナー/ソプラノ・サックスなど、3人の見事な演奏に一気に耳を惹き付けられ、当時働いていた店の企画では半期のベスト・アルバムに挙げた作品です。
余談ながら、このトリオはのちに名手トニー・マラビー(テナー・サックス)やボヤン・Z(鍵盤)らを加えて同じジグザグ・テリトリーズ(どちらかというとクラシックで有名なレーベルですね)やアウトノートから何枚もアルバムをリリースしているのですが、個人的に一番好きなのが前述の『Focus Danse』。まあ、単にサックス・トリオという編成が好きだから、ということなのかもしれないですけど、少人数ならではのリラックスしながらも緊密な感じがとても良いんです。
マチューの話に戻って……。彼は嬉しいことにSoundCloudでたくさんの音源をアップしてくれているので、そのなかからいくつか紹介させていただこうかと。まずはサックス、ギター、ドラムによるマチュー・ドナリエ・トリオ。リストにまとめられているのは11曲55分超。太っ腹! 現代ジャズ・ファンに広くアピールするサウンドなのではと思うのですが、どうでしょうか。
お次に女性ヴォーカリスト、ポウリーン・ルノー(と読むのでしょうか?)とのデュオ作からの4曲。こちらも6曲13分超がSoundCloudのリストにまとめられています(聴きやすい&紹介しやすくてありがたいです)。マチューは全曲でクラリネットを演奏。どの曲も素晴らしいのですが、まずオススメなのは“Hampaté Bâ”。スラップ・タンギングなどを駆使した優しく柔らかい破裂音(?)が滅茶苦茶にカッコいいです。
最後に、ポルトガルのクリーン・フィードから今年リリースした最新アルバム『The Visible Ones』を。ピアニストのアルバート・ヴァン・ フェーネンダールとのデュオ作品で、レーベルからもわかるようにフリージャズ色が強いですが、本当に美しいサウンドだと思います。音に深みが増し、ますます凄い奏者になってますね。
どうだったでしょうか。リーダー作、どれもかなり良くないですか? マチューは前述のケレッキ・バンド以外にもダニエル・ユメール(ドラム)らさまざまな作品にもサイドメンとして参加しているので、興味が沸いたらそちらもぜひ! 現在Mikikiに掲載されているなかではこんな作品にも参加しています。