INTERVIEW

鈴木優人『きよしこの夜/BCJのクリスマス』 バッハ・コレギウム・ジャパンのクリスマス・キャロルから選りすぐりを収録した決定盤

©Marco Borggreve

企画・構成・演出そして編曲を手がけるクリスマス・コンサートから選りすぐりのクリスマス・キャロルを収録した決定盤登場

 バッハの教会カンタータを全曲録音するなど、バロック音楽の世界的な第一人者として知られるバッハ・コレギウム・ジャパン(以下BCJ)。彼らがクリスマス・キャロルを歌ったアルバムが注目を集めている。

鈴木雅明,バッハ・コレギウム・ジャパン,鈴木優人 きよしこの夜/BCJのクリスマス BIS(2018)

 BCJは毎年12月23日に、ヘンデルの《メサイア》をサントリーホールで公演している。そのアンコールとして披露しているのが、クリスマス・キャロルだ。キャロルは賛美歌の一種。教会に集った人々が歌う、親しみやすい旋律が特徴だ。

 そのキャロルをコンサート・ピースとして編曲したのは、鍵盤奏者であり、今年BCJの首席指揮者に就任した鈴木優人だ。

 「毎年コンセプトを決め、キャロルを選ぶんです。たとえば、2011年は震災があった年だったので、追悼の意を込めて《ひさしくまちにし》を歌いました」

 そのアンコールが好評だったことから、2013年から昨年まで、毎年クリスマス・イヴにそのキャロルとオルガン曲によるクリスマス・オルガン・コンサートを開催。鈴木の企画・構成・演出による演奏会だ。

 「このコンサートを5年間行った後の録音なので、あまり演奏されないカンタータよりもずっと歌い込んでいるんです。しかも、これら全部アカペラなんですよね。我々はふだんはバロックですから必ず通奏低音が付くのですが、このキャロルを歌うことで、BCJは技術的にも鍛えられたともいえます」なかには、日本語で歌われる曲も。「様々な言語を交ぜたかったんです。このグローバル社会、一つの言語に執着するのは引っかかりを感じてしまう。僕はラテン語が好きなんです。現在使われてない言葉ならではの中性的な感じがいい。このアルバムには、ラテン語と日本語で歌われている曲もあるんです」

 鈴木が編曲したキャロルは、楽譜でも出版されている(ショット・ミュージック)。このアルバムと同じく、木版画家の沙羅の作品が表紙を飾る。

 「ハーモニーにはバロックの雰囲気をもたせつつ、ジャズっぼいところも。ヘンデルの後に演奏することが目的だったのであまり逸脱しないようにしましたが。カノン的な歌い方も多く、《いけるものすべて》では、1拍ズレだけではなく、半拍ズレのカノンもあるんです」

 アカペラで歌われるキャロルの合間に、フランスの作曲家ダカンによるオルガン曲を鈴木自身が演奏している。

 「この曲を入れたのは、やはりダカンという作曲家の作品を知って欲しいという思いもあります。ノリもよく、しっとりした曲もあり、バッハ作品よりもふさわしいのではないかと」

 これまでのBCJのディスクと同様、神戸松蔭女子学院大学のチャペルで録音された。

 「このチャペルには、ガルニエが日本で最初に作ったフランス・バロック・スタイルのオルガンがあるんです。このオルガンは、ダカンを弾くために作られたといってもいいほどで、4段鍵盤を使ってエコーなどの効果が理想的に奏でられる楽器なんです。この楽器にとって、適性なレパートリーによる初めての録音なのではないでしょうか」

 このオルガン作品とキャロルが、調性によって流れを作り出すようにアルバムは構成されている。

 「グレゴリオ聖歌《ことばは肉となった》を、アルバムと最初と最後に置いたのですが、この旋律がアルバムの真ん中にある《あめにはさかえ》に引用されているんですね。こういった構造はありますが、あまり意識せずに気軽に聴いて欲しい」

 音楽一家に生まれ、鍵盤奏者としてオルガンやチェンバロを弾き、BCJやモダン・オーケストラを振る指揮者でもあり、作曲や編曲のほかにも演出やプロデュースまで行う才人だ。

 「様々な職種に手を伸ばしてやろうという意識はまったくなくて(笑)。現場で必要なことをやっているだけなんです。昔のヨーロッパの作曲家は専門化されていなく、演奏家であったように。そういう発想で音楽をやってるだけですよ」

 バッハのチェンバロ協奏曲集のリリースも控えている(BIS)。このディスクでは、チェンバロ独奏に加え、オーボエ協奏曲ニ短調のチェンバロ版の編曲を行っているという。また、ヴィオラ奏者のアントワン・タメスティとの共演で、バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ全曲を録音、こちらはハルモニア・ムンディからリリースされる予定だ。

 


鈴木優人 (Masato Suzuki)
オランダ在住の指揮者、作曲家、ピアニスト、チェンバリスト、オルガニスト。バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)首席指揮者。2002年よりBCJのプレーヤーとして定期演奏会、カンタータ全曲録音(BIS)および海外ツアーに数多く参加。作曲家としても数々の委嘱を受けるほか調布国際音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー、舞台演出、企画プロデュースなど活躍は多方面に及ぶ。

 


LIVE INFORMATION

ソプラノとオルガンの天上の響き
森麻季(ソプラノ)&鈴木優人(オルガン、ピアノ)
2019/1/31(木)13:30開演 東京オペラシティ コンサートホール

バッハ・コレギウム・ジャパン定期演奏会「祈りのカンタータ」
2019/3/2(土)15:00開演 神戸松蔭女子学院大学 チャペル
2019/3/3(日)15:00開演 東京オペラシティ コンサートホール
【出演】鈴木優人(オルガン独奏)/鈴木雅明(指揮)/ハナ・ブラシコヴァ(S)/バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱&管弦楽)ほか

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