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コラム

一柳慧の作風の変遷を都市の変化と重ね合わせたエクストリームな企画〈Toshi伝説〉

©Koh Okabe

Toshi伝説 一柳慧の源流から現在、そして未来に放つエクストリームな愛

 一柳慧は伝説だ。若くしてニューヨークへ渡り、ジョン・ケージを日本に紹介し、自らもコンセプチュアルな音楽を発表した前衛の旗手。かつて田舎の高校生だったわたしは、彼の名前を目にするだけでトキメキを覚えたものである。

 80年代に上京して以来、彼の姿はコンサートホールで何度もお見かけした。独得のオーラを放っていたから、すぐわかるのだ。ただ、そのときに発表された彼の新作には、戸惑いも感じた。アメリカの実験音楽の影響から離れ、交響曲や協奏曲といった伝統的なフォーマットの作品だったからだ。邦楽器へのアプローチや、音響空間への探求、そしてオペラ作品など、彼は次々に領域を広げていく。

 60年代の前衛華やかなりし時代を実体験できなかった自分にとって、一柳はどこか伝説的な存在であり続けた。そこに郷愁が伴うのも、自分が都会生まれの人間ではなく、田舎者だったから。なにせ、都市は次々に変化していくのが常なのだし。

 そう、都市=慧なのだ。一柳慧の作風も変遷を重ねていく。一つだけ変わらないのは、〈都市=慧〉がもつ自由な空気。一柳作品は、どの時代のものであれ、その時代の雰囲気を如実に反映しているものの、そこに縛られてはいない自由さがある。特定の主義や技法に囚われない、軽やかさがある。凝り固まらぬ姿勢に、前衛精神がじっとり宿る。

 氏の神奈川芸術文化財団の芸術総監督に就任20年を記念し、一柳ワールドを一望する企画が行われる。そのタイトルこそ、〈Toshi伝説〉。なかなか攻めた、そしてストンと腑に落ちるダブル・ミーニングだ。

 神奈川県民ホールでは、一柳の3つの管弦楽作品を東フィルが演奏する。室内オーケストラのための“ビトゥイーン・スペース・アンド・タイム”、ヴァイオリン協奏曲“循環する風景”では成田達輝がソロを担当するのも楽しみだ。そして、最後は〈3.11〉を主題にした交響曲第8番“リヴェレーション2011”。冒頭には、この日の指揮者でもある鈴木優人による新作のファンファーレも披露される。

 神奈川県立音楽堂で行われるのは、3部構成のマラソン演奏会だ。第1部は、一柳の原点を形作ったという音楽がテーマ。フランクのヴァイオリン・ソナタや自身がピアノを弾く“クロイツェル・ソナタ”などのほか、武満徹の“一柳慧のためのブルーオーロラ”が演奏される。

 第2部は〈日本独特の間・時間感覚〉をテーマに、三味線奏者の本條秀慈郎を中心とした邦楽器のアンサンブルが、一柳や高橋悠治の作品を取り上げる。第3部では、一柳の〈ピアノ音楽〉第1~第7全曲を河合拓始が弾く。ニューヨーク時代に書かれた図形楽譜と指示書による作品が、即興演奏のエキスパートによって新たな伝説として蘇ること間違いない。

 


LIVE INFORMATION

Toshi伝説

共鳴空間(レゾナントスペース)
【日時】2021年2月13日(土)15:00開演
【場所】神奈川県民ホール 大ホール
【出演】鈴木優人(指揮)/成田達輝(ヴァイオリン)/東京フィルハーモニー交響楽団
【プログラム】鈴木優人:新作 ファンファーレ(委嘱作品・初演)/一柳慧:ビトゥイーン・スペース・アン ド・タイム/一柳慧:ヴァイオリン協奏曲“循環する風景”/一柳慧:交響曲第8番“リヴェレーション 2011” オーケストラのための

https://www.kanagawa-arts.or.jp/legend/event213/

 

エクストリーム LOVE
【日時】2021年3月20日(土・祝)
【場所】神奈川県立音楽堂
【内容】3つのキーワードに導かれた3つのコンサート。各約1時間・入替制・全席自由

≪Classical 13:00≫
出演:成田達輝(ヴァイオリン)/ブルーオーロラ サクソフォン・カルテット[平野公崇・田中拓也・加藤里志・本堂誠]/萩原麻未(ピアノ)/一柳慧(ピアノ)
プログラム:一柳慧:フレンズ (ヴァイオリン独奏)/武満徹:一柳慧のためのブルーオーロラ/フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調/ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」より第1楽章(上演時間:約1時間強・曲順不同)

≪Traditional 14:45≫
出演:J-TRAD ensemble-MAHOROBA:本條秀慈郎・本條秀英二(三味線)川村葵山(尺八)木村麻耶(二十五絃箏)吉澤延隆(十七絃)堅田喜三郎(鳴物)]<監修>本條秀太郎
プログラム:高橋悠治:「花筺」より 水(三味線独奏)/スメタナ(中村匤寿編曲):モルダウ(三味線、尺八、箏、鳴物)/ノルドグレン:日本の伝統楽器のための四重奏曲より第5楽章(三味線、尺八、箏)/一柳慧:密度(三味線、尺八、箏)/本條秀太郎:俚奏楽 花の風雅(三味線、尺八、箏、鳴物)/森円花:委嘱新作(三味線、尺八、十七絃箏、鳴物)/ジョン・ケージ:ある風景の中で(二十五絃箏)ほか

≪Experimental 16:30≫
出演:河合拓始(ピアノ)
プログラム:一柳慧:ピアノ音楽 第1~第7 全曲連続演奏(上演時間:約1時間から2時間の間 *楽曲の指示にもとづく即興演奏のため、終演時間は当日まで未定)

◆Intermission Contents
・Let's Play with Toshi[エレクトロニクス卓球台]制作協力:有馬純寿
・Let's Talk[クロストーク]出演:一柳慧・片山杜秀・有馬純寿
・パネル展示

https://www.kanagawa-arts.or.jp/legend/event320/

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