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すべての人が何かを感じる曲

 本作では客演勢との絡みも彼の新たな側面を引き出すポイントだ。VERBALとの初共演が実現した“VVVIP”や、「サビだけ聴いたらコンビニで流れてそうな、俺の曲じゃないみたいな感覚」と笑って話すAISHAとのもうひとつの共演曲“Love Song”もさることながら、昼間の太陽の優しい陽射しが差すようなJESSEとの“Good Day”は、アルバムの表情が増す一曲。いつになく肩の力が抜けた歌寄りのスタイルが、穏やかに本作の最後を飾る。

「フィーチャリング曲は〈1+1=3〉になるようなものができればなと思って作ってる。(“Good Day”では)JESSEには俺のメロディーラインに合わせて目の前でギターを弾いてもらってヴォーカルを録って、いままでなかった曲を作れました」。

 一方、同じ客演曲でも、『DGKA』に続きKOHHと再共演した“Moon Child”は、本人いわく「一曲は絶対に入れたかったゲットー・ソング」だという自身の過去を踏まえたナンバー。片親のもとで育った2人の生い立ちが滲むエモーショナルな内容は、仲間と共にここにいるという思いをストレートにしたためた“Right Here”と共に、変わらぬ彼を映している。

 「『DGKA』では超テキトーにいまのヴァイブスでKOHH君と曲を作ったんですけど、その時からこのアルバムではマジな俺らのルーツとか伝えたいことでゲットーに光が差すような曲を作ろうって話してました。“Right Here”は1年前でも2年前でも同じ曲を歌えたなと思うし、それがいちばんストレートな、変わりない僕の音楽かなっていう気持ち。メジャーで出すからってメジャーっぽい10曲だけが並んでても俺じゃないなと思うし、どっから出そうと俺のカラーがあるから」。

 さらに、“Moon Child”にふと〈核兵器/戦争/反対〉という一行を潜ませる視点は、BACHLOGIC制作の“Spiral”全体でいまの日本へと向かうことに。〈この国が何処に向かってるのか聞きたい〉と問いかける。

「時事ネタはいままであんまなかったけど、この歳になって歌えることも増えたと思うし、興味も昔よりあるんですよ、自分が住んでる国ってどんな国なんかなとか、どうなっていくのかなとか。ラッパーだから興味の出てきたことはラップしたくなるし、ラップってそれだけの力もあると思うから」。

 それらを含めさまざまな要素をかつてないバランスで盛り込んだとANARCHYが自負するこの『NEW YANKEE』。「いままでは自分がカッコイイって思ったら他は何も気にしなかったけど、今回はそうじゃない」とのひと言からも、彼の思いはあきらかだ。地元・京都のフッドスターからさらなる大きなステージへ——ANARCHYの話は続く。

「みんながどう感じてくれるかも気になったし、俺らみたいな団地育ちのゲットー・ボーイだけじゃなくて、すべての人が何か感じたり、思うような曲を作りたかった。それがホントのいい音楽かなと思うし、メジャーでやることってそういうことなのかなって。ずっとアングラでいいと思ってるラッパーはいないと思うし、武道館やドームでもっとデッカくやりたいはずじゃないですか。じゃあ、言い訳しいひんとそこをめざすだけですね、僕は」。

 

▼『NEW YANKEE』参加アーティストの関連作品を一部紹介

左から、HABANERO POSSEが参加した2013年のコンピ『PARK COMPILATION 01』(PARK)、AISHAの2012年作『I, Shout!!!』(ARIOLA JAPAN)、JESSEが属するThe BONEZの2014年作『Astronaut』(TENSAIBAKA)
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▼ANARCHYが参加した作品の一部

左から、DJ PMXの2012年作『THE ORIGINAL II』(BAY BLUES/HOOD SOUND/plusGROUND)、DJ RYOWの2012年作『LIFE GOES ON』、AK-69の2013年作『The Independent King』(共にMS)、BCDMGの2013年作『Ordinary Life』(VYBE)
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